韓国エンタメに世界中が注目!K-POP、ドラマ、映画、バラエティまで…古家正亨が振り返る2021年と2022年
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K-POPはフィジカルメディアが好調!驚異的な増加へ
まずはK-POPです。GAONチャートが先日発表した2021年の年間販売枚数上位400位の内、アルバムの(CDやレコードなど)フィジカルメディアの販売枚数は合わせて5708万9160枚を記録して、前の年に比べると36.9%増加となったようです。注目すべき統計は、この上位400位の販売枚数の推移で、2018年に初めて2000万枚を超えて、19年に2500万枚、20年に4000万枚、21年に5700万枚と、驚異的な増加を続けているということ。なお、この数字は去年の1~11月の数字のため、12月までを含めた最終的な年間売り上げ枚数は約6000万枚になると予想され、2020年の年間売上枚数(約4200万枚)に比べ42.9%増と、大幅な伸びを見せそうです。この数字から推測できるのは、売上金額で世界の音楽市場ランキングに大きな変動が起こるのではないかということ。このように韓国の驚異的な成長は数字でも明らかなんですが、一方で懸念も少なくないんです。
コロナ禍で海外公演がほとんどできない中でのBTSの年末に開催されたアメリカLA公演は(コロナ禍での開催の是非はともかく)、改めて彼らの人気を世界に大きく知らしめ、更なる人気獲得へと繋がった1年となりました。そして、そんなBTSが所属するHYBE LABELSの力が改めて示された1年だったともいえるでしょう。
またSMエンターテインメントも好調でした。NCTをはじめ派生ユニットの活躍やaespa といった新人グループの活躍。またベクヒョン、カイ、D.Oといったソロアーティストたちのアルバムの売れ行きも良く、SM所属アーティストの昨年のアルバム販売枚数は約1762万枚に達し、前の年より約2倍も増えたということです。つまり2社を合わせると約3300万枚となって、ガオンチャートの上位400位内の過半数を超えることになり、K-POP業界全体が潤っているわけではなく、ヒットに偏りがあるということでもあるのです。
さらに、韓国関税庁が16日に公表した貿易統計内の2021年CD輸出額は前の年と比べて62.1%増加の2億2083万6000ドル、日本円で約253億円となり過去最高を記録。この数字は、この5年間で約5倍の規模になったことを示しています。つまり、驚異的なCDの売り上げの伸びは、その多くを輸出に頼っているということでもあります。さらにその数字を国・地域別にみると、日本が7804万9000ドルで最も多く全体の3分の1を占め、前年比で151.4%増の伸びを記録した2位の中国(約4247万ドル)を大きく上回っています。
ただ、フィジカルメディアの伸びが顕著な一方で、配信・ストリーミング市場は縮小。昨年の配信・ストリーミング利用量上位400位までの合計は、前の年よりも10.3%の大幅な減少を記録していて、コロナ禍以前の2019年と比べると、その数字は23.8%もの減少とGAONチャートは伝えています。
K-POPのCDはここ数年、SNSの影響もありCDそのものが音楽メディアという域を超えて、(もちろん、購入特典の影響も大きいと思いますが)1つのグッズ、アート化し、それを持つ事への満足感によって、その売れ行きが伸びていることは間違いないわけで、世界的に配信・ストリーミング市場が拡大している中、その分野で先駆的存在である韓国の市場縮小は、もちろんエンターテインメントの多様化といった影響はあるものの、特定のアーティストの固定ファンを除く一般層にアプローチできる音楽コンテンツが不足している可能性も否定できないでしょう。
大手配信プラットフォームに韓国ドラマが続々!
そして、NetflixだけでなくDisney+では様々な議論を巻き起こした「スノードロップ」(설강화)が。Amazon Prime Videoでは「ある日~真実のベール」が、さらにApple TV+では名匠キム・ジウン監督が手掛ける「Dr.ブレイン」がそれぞれのオリジナルドラマとして(日本を含む)世界では配信され、話題の新作のほとんどが配信プラットフォームに乗り、韓国での放送とほぼ時同じくして日本に上陸を果たすことにもなりました。
さらに欧米の大作ドラマが一シーズンあたり20話以上で長い一方、韓国ドラマは平均16話で、最近の配信オリジナル作品に限っていえば、6話から10話とかなり短く、テレビではなく、移動中や外出先でも映像コンテンツを楽しむ今という時代に、この長くもない短くもない話数は、手軽に観られるドラマ作品として、視聴者のニーズに合っているということも、韓国ドラマの人気の後押しになっていると言えるでしょう。
こういった背景もあってか、2022年は韓国最大手の配信プラットフォームTVINGが攻勢をかけることが予想され、プラットフォームも日本や台湾へ本格進出を図ることも計画されています。ここ数年は、コンテンツを輸出することで、その地位を確実に高めてきた韓国ドラマ界ですが、これからは、コンテンツとプラットフォームの両輪で世界に打って出ようとしているわけです。
映画業界はコロナ禍で厳しい1年に
コロナ禍前の2019年には『パラサイト』をはじめ、5本の観客動員1千万人以上という国民ヒットが生まれ、ヒットの目安とされる100万人以上を動員した作品は50本に達しましたが、2021年は公開からわずか2週間で500万人の動員を記録した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が最高で、これを含めた百万人以上の観客動員映画はたった15本。しかも、この1位の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』をはじめ、上位ベスト10中、実に8本が外国映画(韓国映画は1位の『モガディシュ 脱出までの14日間』、2位『奈落のマイホーム』の2作品)という近年まれにみる韓低外高な状況となりました。
また、韓国でまずは公開されることが、日本で公開される条件になっている作品も多く、特に注目の大作は、韓国での公開のめどが立たなければ、日本で観ることもできない状況です。『パラサイト』をきっかけに韓国映画に興味を持った人も少なくなく、まずは幅広い客層にアプローチできる作品が上映され、いい形で韓国映画に対する熱い視線が、2022年は注がれることを期待したいです。
バラエティにも注目!「脱出おひとり島」が成功モデルに
もちろん、日本にも多くのバラエティ番組があり、面白いものも数多く、その面白さは、韓国のバラエティ番組にもかなり大きな影響を与えてきました。しかし、日韓共通していることは、そのバラエティ番組の発信源であった地上波テレビの勢いが徐々に衰退し、表現にも制約が増していく中、(今のところ)放送法に左右されない、より柔軟な対応ができる配信プラットフォームに、その主戦場は移りつつあるということです。
韓国の方が、いち早くその流れに乗りそうですが、日本でもその流れは着実にあり、今後は日韓共同制作のバラエティ番組が誕生することも、これまでのケースを考えると出てくるのではないでしょうか。そうなると、日韓それぞれの芸人やバラエティ・タレント達も、その活躍の場が増えていくかもしれませんね。
果たして2022年、どんな韓国エンタメが日本を賑わせてくれるでしょうか。僕自身も一ファンとして、そして一人の業界人としても、楽しみです。
古家正亨×Kstyleコラム Vol.17
古家正亨(ふるやまさゆき)
ラジオDJ・テレビVJ・MC
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年から韓国音楽を中心に、韓国の大衆文化をあらゆるメディアを通じて紹介。昨年までは年平均200回以上の韓流、K-POP関連のイベント等のMCとしても活躍している。
現在もラジオでは、NHK R1「古家正亨のPOP☆A」(土曜14:05~)、FM NORTH WAVE「Colors Of Korea」(土曜11:00~)、CROSS FM「これ韓~これであなたも韓国通~」(土曜18:30~)、テレビではMnet「MタメBANG!」(隔週日曜20:30~他)、テレビ愛知「古家正亨の韓流クラス」(隔週火曜 深夜0時30分~)、BSフジ「MUSIC LIST~OSTってなに~」(不定期)、配信では韓国文化院YouTubeチャンネル「Kエンタメ・ラボ~古家正亨の韓流研究所」といった番組を通じて日本から韓流、K–POP関連の情報を伝えている。
また3月に開校(?!)するKstyleとコラボレーションしたBS12(トゥエルビ)の韓流情報番組『古家正亨のKスタ学園』で学園長(MC)に就任。放送までインスタライブなど、様々なコンテンツで番組を盛り上げることになっている。
自身のYouTubeチャンネル「ふるやのへや」では妻でアーティストのMina Furuya(ホミン)と共に料理やカルチャーなどの情報を発信中。
Twitter:@furuyamasayuki0
記者 : Kstyle編集部