Vol.1 ― 「密会」パク・ヒョクグォン“不遇な俗物”カン・ジュンヒョンを語る

10asia |

本当にカン・ジュンヒョンに会ってみたかった。

JTBC月火ドラマ「密会」の世界で、カン・ジュンヒョンという男は近くにいたら一発殴りたくなるぐらい憎たらしい存在だ。そして、周りを見回してみると、私たちが生きているこの世界にもカン・ジュンヒョンような存在は非常に多い。野望は大きいが努力はしない、いや、無駄な対象に努力を注ぐ人々のことだ。

しかしながら、このカン・ジュンヒョンという男のバタバタする姿がいつからか哀れに見え始めた。自分自身を客観的に見る能力はないのに野望だけ多くて周りの人を急かすこの男の妻(キム・ヒエ)と教え子(ユ・アイン)が愛を始めたからではない。

自分の妻と教え子が格別な関係になる瞬間を目撃しても、本能的な怒りを抑えて自身の安危を計算する彼の俗物根性のせいで、カン・ジュンヒョンは罠にかかった妻オ・ヘウォンよりも不幸に見せた。

本能より欲望が勝つこの男を前に座らせて、「あなたはどうしてそんな風に生きているのですか?」と質問して彼の本音を聞いてみたかった。それはたぶん彼のような俗物が多いこの世界にうんざりしているからかもしれない。

―多くの俳優をインタビューしてきたが、今回ほど俳優じゃなくてキャラクターに会ってみたかったのは初めてです。俳優パク・ヒョクグォンを通じてカン・ジュンヒョンについてもっと調べたいと思います。まず、カン・ジュンヒョンはどんな人物だと思いますか?

パク・ヒョクグォン:わがままな男です。ハハ。

―ストーリーの以前の話があったはずですが。

パク・ヒョクグォン:シノプシス(ドラマや舞台など作品のあらすじ)をもらった時、人物紹介にジュンヒョンの父親は音楽学校の学長を務めていたが、現在のハン・ソンスク(シム・ヘジン)理事長を中心に勢力が分かれる時に粛清された家の息子だと書いていました。また、ジュンヒョンもコンクールに参加したら3位ぐらいは獲得する実力を持っているので、もし父親が健在していたらそのコネによってある程度の地位にあったはずの人物とも書いていました。

―劇中、はっきりは描かれていないが、ソ・ヨンウ(キム・ヘウン)、チョ・インソ(パク・ジョンフン)、カン・ジュンヒョン、オ・ヘウォンの関係にも昔何かがあったように見えます。

パク・ヒョクグォン:そうです。ジュンヒョンは父親が没落した後、逃避するように留学に行って、そこでたぶんヨンウの多くの男の1人だったと思います。そして、ヨンウと一緒に留学に行ったのがヘウォンで、外国でヨンウの面倒を見るという条件でヨンウの父親がヘウォンの留学費を全額支援してくれたんでしょう。その当時はたぶんヘウォンとジュンヒョンの間には何の感情もなかったと思います。ジュンヒョンにとって必要な存在はヘウォンよりもヨンウだったはずですから。

―第2話だったと思いますが、ヨンウがジュンヒョンに「へウォンと結婚する時に彼女との結婚はただの形式だと話したじゃない」と話すシーンが出ます。その台詞から2人の関係を何となく推し量ることができました。

パク・ヒョクグォン:その会話を交わした時、たぶんジュンヒョンはヨンウに「俺の気持ちはまだ君にある」のような話もしたでしょう。そこで確かなのは、ジュンヒョンとヘウォンの感情は少なくともヘウォンとソンジェの感情とは全く違うということです。

―最初から愛で結ばれたカップルではなかったんですね。

パク・ヒョクグォン:でも、それはヘウォンも同じだと思います。ジュンヒョンがヘウォンと喧嘩する時に「君もブランド品が好きで、豊かな暮らしを享受したくて選んだんじゃないか」と話すシーンが出ますから。ヘウォンとジュンヒョンはお互いがお互いのことより何をもっと欲しがっているのかよく知っていたはずです。ただ、ヘウォンはソンジェに出会ってその過程を振り返ってみるきっかけを迎えるようになったが、ジュンヒョンはたぶんそんな懺悔の時間が最後までないような気がします。まだ、このドラマがどう終わるかは分からないですが。

―それでも一応、ヘウォンの夫じゃないですか。ヘウォンとソンジェの美しいシーンを見ると、どんな気持ちになりますか?

パク・ヒョクグォン:第9話と10話にそんなシーンが多く出ましたが、恋愛の序盤に生じる感情をよく表現していて、非常に美しいと思いました。もちろん、そんな感情は3ヶ月以上は続かないですけどね。ハハ。

―愛について懐疑的な方ですか?

パク・ヒョクグォン:懐疑的というより、感情というものは時間が経つにつれ、質量は同じでもその内容物が変わると思っています。普通、愛から徐々に絆や責任感に変わっていくじゃないですか?

―ほとんどの人はそうですが、たまに崇高で持続的な愛をする方もいるじゃないですか。

パク・ヒョクグォン:そうですね。僕の周りにはいません。本や映画では見たことがあるが、実際に見たことはないんです。そして、ときめく感情が変わらずずっと続く人を見たら、むしろ問題があると考えるでしょう。それは自然なことではないですから。懐疑的というより、その方がより自然だと思っているんです。もし人に初めて会った時に生じるときめきをずっと求めたら、人間の寿命は短くなると思います。

―ひょっとしたら今、恋愛中ですか?

パク・ヒョクグォン:いいえ。でも、「再び恋愛したい」と思いました。ヘウォンとソンジェを見たら、とても美しいじゃないですか。恋愛を始めた頃、何も言わずにお互いのことを見て笑ったり、心臓がときめいたり、一緒に映画を見ながら耳打ちをするなど、そのような感情を再び感じてみたいと思いました。

―昨日あのシーンを見て、チョン・ソンジュ脚本家は本当にすごい方だと思いました。チョン・ソンジュ脚本家は実際にどんな方ですか?

パク・ヒョクグォン:あまり会ったことがないんです。台本の読み合わせや打ち上げなどで主に会います。人は年を重ねるにつれ、個性溢れる感覚をどんどん失っていくと思います。怠けるようになりますから。でも、チョン・ソンジュ脚本家のようにそうじゃない方もいるようです。ちなみに、韓国人は特に早く老けてしまうような気がします。それはたぶん自分の分野で早く定着しなければならないと思って、そればかりに集中して生きるからでしょう。それで、感情や感覚よりも権威のようなものが頭の中を支配するようになるからだと思いました。

―キャラクターの細やかな表現を見ていると、実際に脚本家があんな恋をしたことがあるのかもしれないと思うようになります。

パク・ヒョクグォン:それに、中心人物以外の周りの小さなキャラクターにも妥当性を与えます。たぶんチョン・ソンジュ脚本家は台本を書きながら、それぞれの人物の立場になってみることが上手いと思います。卓越した才能です。

―脚本家だけでなく、俳優は体で他人を表現しなければならない職業なので、人に対する関心が高いと思いますが、日常でも人をよく観察する方ですか?

パク・ヒョクグォン:若い頃はわざと人をよく観察しました。あるキャラクターを演じることになったのに演技が上手くできないと、地下鉄の駅に行ってずっと座って人を見ました。見ていると、歩き方など色んなことが皆少しずつ違うんです。若い頃は本当にわざとそうしました。でも、今はもう職業病になったと言いましょうか。台本をもらったら、その人物の目標を探すことがもう身についてしまって、ニュースを見るだけでも「あの人おかしいな」と観察するようになります。

―それでは、カン・ジュンヒョンの目標は何ですか?

パク・ヒョクグォン:今の状況を変化させないことです。少なくともこの状況を維持して、その次に出たいという欲を持っているんです。このキャラクターを初めて紹介された時、「学長になって、その次は文化部長官になることまでも不可能ではないと考える人」という話も聞きました。実際にポーランドではピアニスト出身の長官がいるらしいから不可能ではないことですが、自身を客観的に見る能力がない奴なんです。周りの人を本当に疲れさせるタイプです。ハハ。

―そんな人は周りに本当に多いです。ハハ。

パク・ヒョクグォン:あえて探さなくても本当に多いです。

―カン・ジュンヒョンを理解することはできますか?

パク・ヒョクグォン:理解はできます。

―私の場合、適当に距離がある人にそうするのは理解できるが、自分の妻、もしくは夫、家族にまでそんなに頭を使うことが理解できなかったです。

パク・ヒョクグォン:むしろ逆かもしれません。もしこの人(隣にいたマネージャー)に何かある時は僕が代わりに問い詰めることができるが、実際に僕に何かが起こったらどうすればいいのか分からなくなりますから。だから、カン・ジュンヒョンが理解はできますが、彼を受け入れられるかどうかはまた別のことだと思います。

記者 : ペ・ソニョン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン