「王になった男」イ・ビョンホンの3つの敵とは?“ひげ、衣装、監督”

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ワールドスターになった朝鮮の王、イ・ビョンホンのお出ましだ。急な熱愛の公開は偶然なのか、必然なのか、映画の公開時期と重なった。色々な面で話題作になった映画「王になった男」(監督:チュ・チャンミン、制作:リアライズピクチャーズ、CJエンターテインメント制作)。

「彼女より、映画に集中して欲しい」というイ・ビョンホンの度重なる頼み。彼は同僚俳優と映画スタッフに申し訳ない気持ちを隠せなかった。とにかく、今回の映画はイ・ビョンホンのフィルモグラフィーにおいて新たな挑戦だったのは確実だ。熱愛で埋もれるにはもったいない作品だ。

「王になった男」でイ・ビョンホンは暴君光海と、道化師のハソンを演じた。一人二役も、時代劇もデビュー以来、初めてとなる挑戦。しかも、珍しくコミカルな演技まで。新しいイ・ビョンホンの詰め合わせだ。


「僕よりひどいチュ・チャンミン監督、ワンシーンを20回撮影」

私たちはなぜ!!イ・ビョンホンが時代劇に似合う俳優だということを21年間知らなかっただろうか?最初からエンディングロールが上がるまで引き込まれる感じだ。

袞龍袍(王の服)を着たイ・ビョンホン。これまで彼が見せてくれたカリスマをすべて集めて一気に爆発したようだ。「なぜ今になって見せてくれたのか」という声に「もともとジャンルに対する偏見はなかったが、なぜかそうなった」と理解を求めた。

「シナリオを選ぶ際、“まだ時代劇をやったことがないから”ということで選んだわけではない。どんな作品であれ、まずはストーリーを見るようにしている。そのような部分で、時代劇というジャンルの魅力よりは、繊細に作られたストーリー構成のため、『王になった男』を選んだ」

作品へのこだわりが人並みはずれているというイ・ビョンホンは、ファクション(歴史的な事実をベースに作家の想像力を加えた物語)ジャンルである「王になった男」に対する好奇心が強かった。特に、実在人物である光海君の姿を自分を通して見直すことが出来るというところが魅力的だったそうだ。

「歴史では光海君が暴君として記録されているが、実は大同法(様々な貢物を米に統一させた法)や民を愛するヒューマニズムもあった。光海も良い人だった。そのような面をハソンをとおして見せたかった。ハソンは暴君光海とは反対に人間的な光海の姿を持っている。この二人を合わせたのが本当の光海君の姿ではないだろうか?」

イ・ビョンホンが時代劇でもっとも難しかったのはなんだろうか。彼は「ひげと服」と話しながら、頭を振った。「ひげをつけたが、くすぐったくてすべて剥がしたかった。しかも服も重かった。かなり苦労した撮影だった」経歴21年のイ・ビョンホンも苦労させたのは、王の風貌だった。服のほかにもうひとつあった。

「アクションシーンや体を使うシーンがなかったのに、体力的に大変だった。その理由はチュ・チャンミン監督。俳優とアドリブが多い撮影で、同じシーンを何回も撮影した。普段から欲張りな僕が何回も撮影することで有名な人だが、チュ監督は僕より上の人だった。『オッケー、いいよ。でも、もう一度』を叫ぶとき、本当に力が抜ける。あるシーンは20回まで撮ったことがある」


「観客が忘れていること…僕はもともとコミカルなハソン」

極端なキャラクターについてかなり悩んだというイ・ビョンホン。彼は光海を演じるより、ハソンを演じるときが難しかったそうだ。歴史的な記録が残っている光海は分かりやすかった。しかし、ハソンは最初から最後までイ・ビョンホンが作り上げた仮想の人物。

「かなり悩んだ。僕が演技をするより、観客が光海とハソンをどう見るかについて研究した。シーンごとに、カットごとにチュ監督と色々な話をして、出来上がったキャラクターだ。だからといって、計算して演じたわけではない。キャラクターの行動を計算する瞬間、きりがなくなる」

光海のカリスマ性あふれる姿はまさにイ・ビョンホンだった。どこか抜けているようで、笑いの多いハソンの姿は見慣れないものだった。二つのキャラクターの温度差がかなりある。どう克服したのだろうか?

「僕は気を感じた。光海を演じるときは光海の気運を、ハソンを演じるときはハソンの気運をもらった。自然に身体がついていった。特に一人二役に対する難しさはなかった。あの人が自分の身に下りてくると、僕はただ流れるがままに身を任せればよかった」

コミカルな演技を披露したイ・ビョンホン。ずっしりとした演技で積み上げてきたイメージを一気に壊した。目で見る前までは信じられないと思うが、コメディまでこなす彼を確認したら、感嘆せざるを得ないだろう。「壊れても大丈夫か?」という質問に彼は大きく笑ってから「知らなかったのか?僕はもともとハソンだった」と返した。

「デビュー初期も面白い役を演じていた。かなり昔のことで観客が忘れただけだ。僕のスタッフに聞いてみてくれ。僕は光海だったことが一度もなかった。彼らにとって僕は意地悪なハソンだ。皆僕に騙されていた。ハハ」


「水刺床(スラサン:王の食膳)も3回食べると…口から出てしまう」

意外と(?)面白いところが多いイ・ビョンホン。インタビューの間、終始ユーモラスな発言で場内で爆笑が起きた。まさに、ハソンだった。いくつもの姿を持っているイ・ビョンホンに撮影のエピソードを聞いた。彼は迷わず、“咳の音と水刺床”を取り上げた。

「便殿(王がふだん起居した宮殿)で臣下と神経戦を繰り広げるシーンだった。台詞がある俳優の以外はエキストラが出演した。僕より年が上の方たちだった。僕は座っていて、あの方たちは立っている状況。とても気まずくて、申し訳なかったのにNGもたくさん出してしまった。やはり年を召している方たちなので、咳を我慢できなかったみたいだ。1人が“ごほん”とすると、まるで輪唱のようにあちらこちらで“ごほんごほん”と音が出た。後でスタッフが『咳を我慢してください』と泣きっ面になった」

当時の状況が面白いのに笑えなかったとしながらイ・ビョンホンは「僕だけ面白かった状況」とコメントした。続いて彼は水刺床に対するエピソードも明かしてくれた。水刺床は映画で水刺床を担当する宮女サウォル(シム・ウンギョン)とコミュニケーションがとれるようになる重要な措置。そのために水刺床を専門的に研究してきた職人から諮問を受けるなど、心血を注いだ小物だった。

映画でもっとも楽しみにしていた部分だと明かしたイ・ビョンホンは「王様が食べていた食膳は本当に違った」と自慢した。もちろん最初だけよかった。

「水刺床の撮影がある日、楽しみで食事をしなかった。びっくりするほど豪華な料理にびっくりして、初めては本当に美味しく食べた。しかし、連続で3回食べることになるとまったく食べられなかった。お腹がいっぱいだった。もともと食べ物の広告を撮影するときも最後まで食べていた。出したりはしなかったのに…」

映画でハソンがお汁粉を美味しく食べるシーンがある。そのため、お汁粉が食べたくなったと伝えてると、イ・ビョンホンは「僕は食べ物を美味しそうに食べる」と嬉しそうに話していた。

「昔から僕が何か食べているのを見て、本当に美味しそうに食べると褒められていた。正直、お汁粉はあまり好きじゃない。小豆が入った食べ物は嫌いで、あんパンも食べないが、幸い映画ではそう見えなかった。お汁粉の広告が入ったらどうしよう?ハハ」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : キム・ヨンドク