「僕の妻のすべて」ならぬ“イ・ソンギュンのすべて”

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イ・ソンギュンの生活探求Ver.1.0…「火車」に続き「僕の妻のすべて」“僕ってカッコ悪い?”

俳優が従来のイメージを破ったとき、観客は大きな喜びを感じる。イ・ソンギュンのことだ。スイートな男の代名詞イ・ソンギュンが、今度はみっともない人間になった。「映画ではカッコ悪かったですね」と言おうとしたら、彼のマネージャーに「名前が似ていますね」と先手を打たれた。名前だけではなく、容姿も似ていたらどんなによかっただろうか。

イ・ソンギュン、彼はいわゆる完璧な俳優像ではない。チャン・ドンゴンやウォンビン系でもなく、ソ・ジソブ系でもない。しかし、彼らとは違う魅力を持っている。これはもしかすると、イ・ソンギュンという名前からくる人望なのかもしれない。

映画「火車」でキム・ミニの恋人を演じたイ・ソンギュンが、続いて「僕の妻のすべて」で帰ってきた。これまで多くのドラマと映画で彼のやさしさを味わってきたが、今度は彼の違う魅力を味わっても良さそうである。もちろん、カッコ悪い役柄は初めてではない。すでに、ホン・サンス監督の「オッキの映画」で全力でみっともない人間を演じたことがある。

「僕の妻のすべて」では、どこまでも自己中心的な旦那ドゥヒョン(イ・ソンギュン)を演じ、もう一度みっともない人間になった。実はドゥヒョンも、妻ジョンイン(イム・スジョン)に初めて出会った時はカッコいい男だった。現在、妻と息子二人がいるイ・ソンギュンと通じる部分でもある。映画を通してイ・ソンギュンを分かっていく時間!「僕の妻のすべて」ならぬ“イ・ソンギュンのすべて”と名付けても良いだろう。


イ・ソンギュンはカッコ悪くない?そして「僕の妻のすべて」の内部事情

どんな役柄を演じても、ある程度自身と似ている面があると言っていたイ・ソンギュンは、今回のドゥヒョンの役は「気楽なジャージを着ているような感じ」だと述べた。みっともない役ほど、何をやっても自由で楽だからだという。

カッコ悪いという評価についてどう思うかという問いに対して、彼は「状況に合わせて演技をしました。ドゥヒョンとしてやるべきことは、ジョンインとソンギ(リュ・スンリョン)がユニークで気が強いから、その二人の間で現実性を強調することでした。二人ともハイテンションなので、自分一人で暗くなってもいけないし、バランスを取りながら、ひたむきな演技が必要でした」と語った。

妻を誘惑してほしいと依頼したソンギとは思いきり大げさな演技が、ジョンインとは大げさにしながらも現実感のある演技が必要だった。陽気さにリアリティを与えるのがイ・ソンギュンに課せられたミッションだったわけだ。

映画「火車」が終わって間もなく「僕の妻のすべて」を撮影したイ・ソンギュンにとって、このミッションは前向きな挑戦であった。「前作が重かったので、次の作品は軽く愉快なものにしたかった」ためだ。そのときちょうど「僕の妻のすべて」の脚本が入って来た。ミン・ギュドン監督や女優イム・スジョンは、普段から一緒に仕事をしたいと思っていたので、3拍子揃ったということだ。

役柄の変化については肯定的だったが、一方で大変な事もあった。映画のクランクイン直前に、彼の母親が亡くなったのだ。イ・ソンギュンしばらく沈黙してからその話を続けた。

「精神的に大変でした。撮影を先延ばししようかと思いましたが、それよりは役柄に専念した方がいいと考えました」


イ・ソンギュンは嫉妬しない?この男の口説き方

「僕の妻のすべて」への見方は様々だった。ドゥヒョンを通じて、一度くらいは男の心理の変化や嫉妬について考えてみたのではないだろうか。人に愛情を求め、それが得られないと、傷つき嫉妬するのは当たり前のこと。イ・ソンギュンの嫉妬指数はどれくらいなのだろうか。「僕は執着するよりは『好きなようにしなさい』と放っておくほうです」と言う彼にさらに執拗に聞いてみた。嫉妬しない人間はいないはずだ。

「仲間外れにされていると思ったとき、嫉妬を感じるのでしょう。僕だって闘争心もあるし、嫉妬もします。男女関係や友だち関係でも感じます。でも、それは中学時代だったかな?(笑) 人に傷つけられたことは誰でも一度くらいはあるでしょう」

話が出たついでに、イ・ソンギュンなりの口説き方を聞いた。異性であれ、同性であれ、人の心を掴むイ・ソンギュンならではの口説き方。もしかして、無防備にさせられるあの笑顔だろうか?

「交友関係がそこまで広くはありません。そういえば結婚して連絡しなくなった友だちがたくさんいますね。結婚すると、友だちは諦めるようになります。結婚した人のみが分かる感情がありますよ。でも、友だちに、会えなくなって悪いなと言っていましたが、考えてみると“何で僕が悪いんだ?一番寂しいのは僕じゃないか”なんて思ったりします(笑)」

結婚して子供もいるイ・ソンギュンは“思考の違い”を主張する。未婚と既婚、子供がいるかどうかによって考え方が違ってくるということ。こんな話をする時は紛れもなく親の顔になる。結婚への心配を打ち明けると、彼は「結婚をしないほうがいいというわけではなく、犠牲となり諦めなければならないことがあるということ」だと語調を和らげた。


イ・ソンギュンが妻に愛される秘訣は?…無条件の努力と奉仕!

「僕の妻のすべて」は、互いの存在に慣れすぎて、その大切さを忘れている人に警告を鳴らす映画だ。このような映画だけに、彼の奥さんについて質問をした。イ・ソンギュン、チョン・ヘジンは夫婦仲がいいことで有名なカップルだ。イ・ソンギュンが二人の関係において重視する点は何か聞いた。

「結局、努力ではないでしょうか。夫婦関係であれ、友達関係あるいは兄弟関係であれ、慣れ親しんだ人を尊重しなくなり、おろそかになり、傷つけあうことになるじゃないですか。家族であるだけに、もっと良くしてあげなければいけないと思います。この映画もそれを物語っています。一番近くにいた人がいなくなった時、その空間が大きかったことに気づくようになります。互いにとって一番大きい存在である夫婦同士も、努力をしなければならないんじゃないでしょうか。子供は条件なしに愛するじゃないですか。プライドなど忘れて、宗教的な愛を注ごうと思えば、幸せになるのではないでしょうか。理由などなく愛するという、始めの頃の誓いを思い出せばどうでしょうか。僕はやってあげたのに、何で君はやってくれないの?と思うのは愛じゃないですね」

イ・ソンギュンは黙って頷いた。そして、イ・ソンギュンが妻に示す愛は、例えばどういうものか聞いた。最近、イ・ソンギュンが妻のために一番よくしてあげたことを聞くと、しばらく考えて、先週末一人で家の大掃除をしたと話す。

「壁を家族写真で飾って、庭も手入れしました。棚も工具箱を持ち歩きながら整理して……。これが意外と大変なんですよ。日曜日なのにひと苦労でした。やり甲斐がありました(笑)」

実はイ・ソンギュンは5月中旬から新ドラマ「ゴールデンタイム」の撮影のため、釜山(プサン)に行くという。全て釜山でのロケということなので、かなりの時間を妻と離れて過ごさなければならないとのこと。行く前に何かやっておきたい、と思って準備した妻のためのイベントだった。彼は魅力的な俳優である前に、自然体のままで魅力的な人間だった。

記者 : イ・ソンピル