チョン・ユミがおすすめする「コーヒー一杯とよく似合う音楽」

10asia |

チャンスは誰にでも訪れる。だが、誰もがそのチャンスを運命に変えられるわけではない。チョン・ユミにSBS「千日の約束」の台本が回ってきたのは、女優人生を変えるチャンスであった。だが、脚本家キム・スヒョンの台本を前にしたチョン・ユミは「私にできるのかな」という不安が先立つとともに、“厳しいことで有名”なチョン・ウリョン監督やベテラン俳優の前で「作品に傷を残したらどうしよう」という緊張で一杯だった。だが、その不安と心配があったからこそ、ヒャンギ(香りを意味する)の愛し方をすべては理解することができないながらも、黙々と台本と向き合って努力した結果、ヒャンギ役をこなすことができた。「作品に傷を残してはいけない」という考えが人一倍強かったため、彼女は自分に回ってきたチャンスをしっかり掴むことができたのだ。いつのまにかデビュー7年目を迎え、様々な作品で経験を積み重ねてきた女優チョン・ユミが香りを放った瞬間であった。

だが、人生の転機と言える決定的瞬間は、つぼみを硬く閉じている花には飛び込んでこない。「多くの人に分かってもらえなくても、目立たない役だけが回ってきても演技するのが面白いから」といって頑張ってきた彼女は、出番が一度しかなかった映画「シルミド / SILMIDO」の小さな役も断らなかった。また、中国のドラマ「五星大飯店 Five Star Hotel」に出演することになった時は、あまりの厳しさに毎晩泣きながら中国語を勉強する根性まで見せた。MBC「チング ~愛と友情の絆~」でハン・ドンス(ヒョンビン)を追いかける、屈託のない明るい女の子ミン・ウンジを、そして「宝石ビビンバ」の愛嬌あるイ・ガンジを演じることができたのも、ドラマ関係者たちにその誠実さを認められたからである。地道に成長という階段を一段ずつ登ってきた彼女にとって、撮影現場で飲むコーヒーはささやかな贅沢であり楽しみであるという。そんな彼女がコーヒーを飲む時に聴くおススメの音楽だと紹介した次の曲は、目標に向かって突き進む中で、疲れた自分に安らぎを与えてくれる素朴で温かい曲となっている。

1.10cm「アメリカーノ(Digital Single)」
10cmの歌は味わい深くコクがある。コーヒー一杯をテーブルに置いて考え込んでいた彼女が、最初に「アメリカーノ」を思い出したのもその芳醇な香りに導かれたためである。まるでテレビで美味しい店を紹介する時や、夜中にグルメブログで美味しい料理を見た時、自分も知らないうちによだれが出てくるように。韓国語がよく分からない外国人もロックフェスティバルなどで一緒に歌うという「アメリカーノ」は、歌いやすくて面白い素直な歌である。何よりジャンべとアコースティックギターが織り成す温かみのあるサウンドと「アメアメアメ」と歌うクォン・ジョンヨルの魅力的なボーカルは、苦いけれど飲みたくなる、珈琲の不思議な魅力と似ているかもしれない。

2.キム・グァンソク「キム・グァンソク-再び歌う 2」 
苦いコーヒーは大人の飲み物である。子供の頃、両親が飲むコーヒーをこっそりと一口飲んで、何でこんなに苦いものを飲むのか理解できなかった人も、時間の流れとともに少しずつコーヒーの味が分かるようになる。彼女が“聞いているとなぜか涙が出てくる曲”と勧めた、キム・グァンソクの「ある60代の老夫婦の話」には静かに聞くだけで胸にジーンとくるものがある。「私の人生の最後を一緒に過ごすことができる人について考えるようになる曲」という彼女の話のように、人生について考えさせられる曲である。

3.グレン・ハンサード&マルケタ・イルグロヴァの「Falling Slowly」が収録されている「once ダブリンの街角で」のOST
独特の感性と声で音楽が好きな人の胸をしっとりと濡らした映画「once ダブリンの街角で」を見てOST(オリジナル・サウンドトラック)を購入した人も多かっただろう。彼女もその一人であった。映画が人気をになる前に「最初は映画館で見たけど、流れている曲がとても良くて、家に帰ってすぐ調べてみた」という彼女のお勧め曲は、グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァが一緒に歌う「Falling Slowly」。人生の苦しさと寂しさ、そして痛みを、時には繊細に、また爆発的に吐き出すかのように歌う「Falling Slowly」は、傷ついた人々の心を慰めてくれる。

4.ボブ・ディラン「Dylan:Collector's Edition」
ボブ・ディランの歌の中で、彼女が勧めた曲は「Mr. Tambourine Man」。決して寂しいメロディーではないが、アコースティックギター一本で歌うボブ・ディランの声には人生の深みが感じられる。「夕方にボブ・ディランの曲を聞きながら飲むコーヒー一杯は本当に幻想的」という彼女の話のように、叙情的でありながらも鋭い比喩が込められている歌詞とメロディー、そしてハスキーに変わって行くボブ・ディラン特有の鼻音の混じった声を感じることができる「Mr.Tambourine Man」は、黄金色に染まってていく夕暮れにぴったりで、聞く人の気持ちを幸せにしたり、落ち着かせたりする不思議な魅力のある曲である。

5.ミンディ・グレッドヒル「Anchor」
ミンディ・グレッドヒルの3rdアルバム「Anchor」に収録された「California」は、可愛い歌詞とさわやかなボーカルの歌声が、沈んだ気持ちを切り替えてくれる曲だ。「暖かい春の日にテラスに座ってコーヒーを飲みながら聞きたい曲」という彼女の話のように、のどかな春の日にカフェのテラスに座ってこの曲を聞いている姿を想像してみよう。まるでコマーシャルの一場面のようだ。「Pack your bags and lock your door I'll take you places you've not been before」という歌詞のように、ふらりとどこかへ旅立ちたい気持ちにさせる「California」で、忙しい日常に疲れた自分を励ましてあげるのはいかがだろうか。

「このように多くの人から応援、そして注目されたのは初めてで信じられない」という彼女の夢は、「ドレスを着てレッドカーペットを踏んでみること」。そして「『千日の約束』でその夢を叶えることができた」と話す彼女の次の目標は、「これからも今まで通り楽しく演技すること」だけだという。「千日の約束」に出演した時に最も良かった思い出の一つが「しばらく会っていなかった釜山(プサン)に住んでいる祖母がとても喜んでくれて、友人の方々にも自慢げに話したみたい」と話す彼女。ドラマで演じたヒャンギのように素朴で心やさしくて、黙々と成長していく女優に会えた気がした。

記者 : キム・ミョンヒョン、写真:イ・ジンヒョック、翻訳:ミン・ヘリン