Vol.1 ― YG代表ヤン・ヒョンソク「大衆とマニア、両方とも捉えたい 」

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PSYはビルボードシングルチャートで依然として2位を維持しており、BIGBANGのG-DRAGONは韓国大衆音楽界のトレンドの最前線に立っている。21日はEPIK HIGHがSBS「人気歌謡」でカムバックした。ここ数ヶ月間、YGエンターテインメント(以下YG)は韓国大衆音楽界の話題の中心となった。その間、YGの株価の総額は、一時1兆ウォン(約723億円)近くに昇り、10月22日現在でも7800億ウォン(約564億円)以上である。しかしYGの経営者ヤン・ヒョンソクは依然として所属歌手のアルバムに入るサウンドをミキシングするために徹夜をしている。彼はYGの経営者である以前にアーティストたちと共にコミュニケーションするプロデューサーであることを望んでおり、会社のあらゆることを諦めてもミキシングエンジニアとしてサウンドを作ることだけは手放せないと話した。会社のあらゆることは結局良い結果のためであり、その結果は“良し悪しを判断”する“絶対的な基準”によるものだという彼の姿は、コスダック18位の企業家より頑固な職人に近かった。基準は明確だが、頑固な人にならないために努力している制作者。または、自分がやりたいことで最終的に大衆を納得させるというアーティストの心を持つ事業家。ヤン・ヒョンソクが自分の基準と哲学に対して話した。

-PSYの「江南スタイル」が世界的に成功した。色んなことを考えていると思う。

ヤン・ヒョンソク:世界で最高になりたいと常に夢見てきた。夢は大きく持たなければならないから。PSYのように誰かがまた成功するかどうかは誰も知らない。ただ、誰かが次に西欧の音楽市場で成功を収めるとしたら、YGの誰かになる可能性が高いのではないかと期待している。PSYのファンたちの中にYG所属事務所に所属しているミュージシャンに関心を持ってくれる人が10分の1はいるのではないかと思っている。それに、BIGBANGは今回のワールドツアーで70万人の観客を動員した。アメリカとヨーロッパではまだ認知度が低いけど、アジアではすでに十分な力を持っている。BIGBANGと2NE1の両方が、今回初めてワールドツアーを行ったけど、今回のことを経験として、次の舞台ではより進化した姿を披露することができると思う。

-上場を基点に会社が大きくなり、ワールドツアーのように初めて経験することが多い。PSYのこともYGが珍しく外部から招いてうまくいったし。外部から招請したミュージシャンと仕事をするのもまた違う感じだと思う。

ヤン・ヒョンソク:PSYは遊び上手で私と相性が合う人だ。私も中学校の時からナイトクラブをはしごしていたから(笑) 芸能人の気質を持つ人は遊んでみることが重要だ。ただし、PSYとEPIK HIGHはまた違う。PSYは友達みたいで、EPIK HIGHは里親のような感じかな(笑) 例えば、TABLOは自分に内面に深く食い込む人で、酷い時は私がそこから引っ張り出したりする。そしてPSYもEPIK HIGHもソテジワアイドゥル(ソ・テジと子供たち)のファンだったから、私を先輩として認めてくれる。それに考えを無理やり押し付けないタイプだし。

「だれにも細かく干渉しない」

写真=YGエンターテインメント
-PSYとEPIK HIGHはYGのどんな点に魅力を感じたのか。

ヤン・ヒョンソク:私も彼らもお互いに求めていた。PSYとEPIK HIGHはアーティストとして人気もたくさん得たし、同時に創作以外の出来事が複雑に絡み合ったとき、それを阻止することが出来なかったので、深く傷ついていた。私が彼らと疎通できるという点が重要だと思う。どんな分野でもアーティストは一般人と違う方法で世界と交流する。だけど、接点を見つけることは難しい。それはアーティストだからだ。ビジネスをする人たちとは乖離が大きい。ともするとアーティストが遠い世界へ行ってしまうこともある。そういった部分で私が上手にできることがある。彼らが行くべき時と止まるべき時をアドバイスできる。

-彼らにどんな話をするのか。

ヤン・ヒョンソク:だれにも細かく干渉はしない。PSYとEPIK HIGHを招いたのは彼らの音楽性を認めたからだ。彼らが私の指示に従うことで音楽が変質してはいけない。反対に彼らはYGに所属することでYGだけが作り出す良いサウンドを欲しがっていた。そういった面でEPIK HIGHだけの色がYGの作曲家とスタッフと一緒になった時、さらにバージョンアップできると期待した。YGに所属して干渉を受けるのではなく、新たなシステムとサウンド技術で違う結果を作り出すのだ。それも方向を決めて進めるのではなく、YGの作曲家たちと仲間になって一緒に作業する過程で作り出すのだ。

-そのような作業スタイルなら、お互いの音楽に対する価値観を共有することが重要だと思う。

ヤン・ヒョンソク:どんなアーティストであれ、スタッフとかけ離れていると、良し悪しに対する判断が鈍くなることもある。私もBIGBANGと2NE1に会う時、彼らから新しいことを学んでいる。彼らのような歌手は遊ぶことが、どこかへ行ってお酒を飲むことではなく、会社に来ることが遊ぶことだ。1ヶ月の中で20日間は好きなアーティストの話をして、音楽の話をしている。そんな面でお互いに影響を与え合っている。

-そうするために会社全体が所属ミュージシャンを中心に動くシステムを作らなければならない。

ヤン・ヒョンソク:例えばビジネスパートは朝早く出勤して定時退勤する。反対にクリエイティブに集中する人たちは遅く出勤して夜遅くまで仕事をする。私も夜、仕事をする人だ。そうするためには彼ら同士音楽の話をして、好き嫌いと良し悪いの基準をお互いに話し合う。そのような人たちが団結できるように環境を整えてあげることが私の仕事だ。

-YGではスタッフ全員が正社員として仕事をしているのはそのためなのか。プロデューサーはもちろんCDジャケット制作や映像編集まで外注せずにYGの中で全部やりこなしている。

ヤン・ヒョンソク:YGは他の会社と交流がほとんどないということが独特な点だ。誰が正しくて、誰が間違っているということではない。ただし、長い説明をしても理解してくれないことより、人々が団結している方が良くて、そのような人々がYGのスタッフになる方が良いと思う。プロデューサーたちも別途に専属契約を結んだわけではないけど、YGで仕事をしていることに対してプライドを感じるファミリーになれるように引っ張って行くのが目標である。

-しかし、無条件に内部の人材で仕事をすることは、事業的側面から見た時、リスクが高いかもしれない。Jinuseanを制作する時からYGの曲だけ作るプロデューサーを置いた制作システムを維持してきたが、事業的側面で心配はなかったのか。

ヤン・ヒョンソク:短く見れば上手く行く作曲家に曲を頼めばいいけど、長い目で見ればこの方がより競争力があると思う。歌手として一番の条件は良い音楽なのに、その音楽を作るためには良いプロデューサーチームを作らなければならない。今会社に15のプロデューサーチームがあるけど、招請したのではなく、みんなYGで優秀な人材として育てた人たちだ。各自のスタジオがあるので、そこで作業をしながら成長してきた。EPIK HIGHのアルバム制作に参加したチェ・ピルガンやCHOICE37もそのような過程を経て認められるようになった。運が良くて何度かはうまく行くこともあるけど、毎回成功するわけではない。成功するためには彼らのための基盤を整えなければならない。

「独創的なアイディアを持っていることにプライドを持っている」

-最近YGの事業は特有の制作方法の延長線に経っているようだ。現代カードやNAVER MUSICのように特定事業のパートナーとコラボしている。それだけお互いのブランドに強い影響を与え合っている。

ヤン・ヒョンソク:私たちより優れているパートナーと仕事をしている。現代カードは金融事業を行っているけど、才能が溢れている会社で、NAVERはポータルサイトでトップの座を占めている。お互いの独創的な面を認めてくれる会社でなければ、一緒に仕事をすることはできない。お互いが望んでいるパートナーを作らなければならない。第一毛織株式会社と始めるファッション事業も私たちの独創的な発想を守ることが重要だ。私たちのスタイルをもって他の人々が着たいと思う服を作ることが重要なことであり、売り上げは重要ではない。ファッション事業の件は10年間悩んできた。お金を稼ぐためではなく、所属している歌手がみんなファッションに関心を持っていて、舞台の外でも表現したいと思っているからその方法を選んだ。全国500~600軒のショップをオープンしてお金を稼ぐつもりはない。極端に言えば1~2軒のショップだけオープンすると思う。それが競争力だ。世界を対象とした事業だから。

-世界を見通しているということはどんな意味なのか。

ヤン・ヒョンソク:以前は韓国市場でトップの座を占めることだけ悩んだけど、最近は韓国市場の比重は30%程度だ。それだけ韓国のコンテンツは強くなったけど、付加的な事業はあまりにも弱い。海外で認めてくれるほどのブランドを探すことは難しい。韓国では63ビル(ソウルにある超高層ビル)のように認知度が高いものはある。だけど、海外には50階の建物が数えきれないほど多い。そういった面で様々な分野で私たちの名前を前面に出せる代表的なブランドを作る必要があると思う。YGがその力量があると信じている。基本的に私たちが西欧より上手いというわけではないけど、プロとして恥ずかしくはないクリエイティブな側面を持っているというプライドがある。

-しかし、一週間に一度だけ音楽番組SBS「人気歌謡」に出演したり、NAVER MUSICを通じて放送活動をすることはリスクが多いと思う

ヤン・ヒョンソク:最近のトレンドはミュージックビデオを立派に作り放送されるのが重要ではあるけど、音楽が一番重要だ。放送に頻繁に出演することが役に立つこともあるけど、最終的には音楽がダメだったらうまく行かない。一週間に一度放送されると誤解されやすい。ファンたちも残念に思うことも分かっている。だけど、PSYも事実一週間に一度放送された。一週間の間、4つの音楽番組に全部出演して、バラエティ番組にまで出演して、イメージを消費することは長期的に見て良くない。放送することに時間を費やすことより、全世界の人がYouTubeを通じて見る、より良いコンテンツに集中することが重要だ。

-別の見方をすれば所属ミュージシャンが音楽を作っているように、アーティスト感覚で事業を行っているようだ。

ヤン・ヒョンソク:その通りだ。ただしアンディ・ウォーホルもモーツァルトも偉大なアーティストであり、大成功した人たちだ。私は大衆が認めてくれるアーティストになりたい。その点でスティーブ・ジョブズも偉大なアーティストだと思っている。立派な物を作ったら、人々がそれを満喫する権利があると思う。

-しかし、自分のスタイルだけを押し付けたら、方向を失うかもしれない

ヤン・ヒョンソク:市場の流れの半歩先を歩くことが重要だと思う。私が感じていることを、しばらく経って人々が感じることが重要だ。例えば私自らアイドルに疲れ果てた時、BIGMAMA(ビッグママ)とフィソンを前面に出した時、大衆もそれを気に入ってくれた。人々の心は常に変わり、どちらか一面だけを消費すると、また違うものを探し出す。私もやはり同じで、人生もそうだ。パターンは常に繰り返される。だから大衆的でありながらも半歩先を歩かなければならない。一般的に普及した音楽をするのなら、大衆の心を虜にして、アーティストたちはマニアの心を虜にする。だけどYGはその中間にいる。非常に難しいことだが、両方とも虜にしたい。そうするためには大衆の中でもよりクリエイティブな大衆、そして文化を引っ張っている大衆と共に歩かなければならない。

記者 : 文:カン・ミョンソク、編集:イ・ジヘ、翻訳:チェ・ユンジョン