Hanumpa、不穏な歌詞にサウンド…彼らが歌うのは“破局”?

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写真=Mirrorball music

Hanumpaの2ndアルバム「Kiss from the Mystic」“さらなる暗闇、さらなる寂しさ”

Hanumpaは、イ・ジョンフン(ボーカル、ギター)、チャン・ヒョクジョ(ベース)、キム・ユンテ(ドラム)、ユン・スヨン(ギター)で構成された4人組のロックバンドだ。1995年「シムゴサ(心臓病を直した人たちの意)」というバンド名で音楽活動を始めた彼らは、1999年Hanumpaを結成し、2002年には1stアルバム「Hanumpa」を発表した。

Hanumpaという名前は、スタジオで使うマイクのブランド名からとったという。彼らは、2002年からしばらく活動を中断していたが、2007年再び“帰還”したと知られている。そして翌年EBSが主催した「スペース共感」の「今年のハロールーキー」で特別賞を受賞し、音楽ファンに実力あるバンドとしてその存在感を印象づけた。

Hanumpaが2009年発表した1stフルアルバム「獨感」に続いて、今年の3月に発表した2ndフルアルバム「Kiss from the Mystic」は全10曲を収録しているが、「ドミノ」と「V.L.S.(Vampire Love Song)」を除く8曲が新曲だ。ボーカルのイ・ジョンフンによれば、サイケデリックだった1stアルバムとは違い、今回のアルバムは1990年代前半を風靡したラフなオルタナティヴ・ロックを追求したという。(「ハンギョレ新聞」インタビュー、2012年5月17日)

真摯になった歌詞とサウンド、何を語っているのか

今回のアルバムは、1stアルバムに比べ歌詞とサウンドがともに真摯になり、その密度も濃くなった。最も視線を引く曲は2番目の曲「霧女のキス」だが、この曲はこのアルバムでもっともエンターテインメント的な曲になると思われる。一度聴いたらなかなか忘れられない魅力的なサウンドが強烈な印象を残す。

「Damage」は、自分を苦しめ痛みつけた者に破局を宣言する曲。話し手は陰険で冷酷な彼に「消え失せろ/騙されない」と叫ぶが、ボーカルのイ・ジョンフンの声をまとったその叫びの中には、積み重なった鬱憤と不安が混ざり合い残されたままのようだ。変化が激しいながらも強烈なロックサウンド、絶叫するように感情を吐き出す野性的なボーカル、馬頭琴の音が印象的な曲だ。人からストレスを受けているなら、この曲を聞いてすっきりすることもできるだろう。

「霧女のキス」は、別れた恋人を懐かしく思う気持ちを歌った曲だ。深く立ち込めた霧を見ながら、話し手は恋人を抱きしめていたあの日の思い出を回想している。あの日もやはり霧が立ち込めていたため、“今日”彼女を思い出すのも無理ではない。ベース、ギター、ドラム、キーボード、Fuzzギターなどが創り出す明徴なビートに、神秘かつ不穏なメロディーが、まるで霧が作り出した迷宮に閉じ込められたかのように、どうしていいかわからない話し手の感情をドラマチックに伝えている。

タイトル曲「急かす」は、うんともすんとも言わず気を揉ませる相手に、本音を言って欲しいと急かしたい男の気持ちを盛り込んだ曲。その相手は恋人と思われるが、話し手が確認したいのは、結局その恋人が自分を待っていてくれたかどうかだ。男は恋人の沈黙とため息に居ても立ってもいられないが、どうしてかと尋ねることさえ怖がっている。近づけば遠ざかりそうな気がするからだ。早いリズムは話し手の焦った気持ちを代弁しているようだが、絡み合っては分かれて駆けながら軽やかなサウンドを創り出す2台のギターが耳を楽しませる。

「内部告発者」は、ある内部告発者の内面を描写している。徒輩の文化が支配的な韓国社会で、内部告発者は大抵裏切り者の同義語として認識されている。話し手は、あの日以降響き渡る嘲笑いに、もう消えて欲しいという無言の圧力の中で苦しんでいる。「僕にだけ見えなかった/消えない深い烙印」「僕にだけもっと大きく響く/錐のように鋭い囁き」など、いじめを意味する歌詞は胸を打つ。煮えくり返っていた話し手の感情がついに爆発するリフレイン部分のギターサウンドは強烈だ。

呪術的な雰囲気で始まる「水中遊泳」は、うなされることを題材にした曲のように見える。話し手は夜な夜な水の中でもがいた末に沈んでしまう夢を見るが、それほど彼の胸を圧迫しているのは、歌詞では“君”と命名している人に対する記憶のようだ。話し手にとって“君”は、夢の中で探し求めている相手であり、朝目覚めると昨日のように鮮明な映像で浮かび上がる人物でもある。重量感のあるベースと軽やかなギターのサウンドが際立つ2番目の間奏と、太いサウンドで人生の疲労感を表現する馬頭琴の演奏が目立つ3番目の間奏が印象に残る。

陰険なサウンドで幕を開ける「V.L.S.」は、ヴァンパイアの愛を歌った曲だ。題名の「V.L.S.」は「Vampire Love Song」の頭文字を取ったものである。朝になる前に来て欲しいとか、灰になる前に心を見せて欲しいなど、ヴァンパイア物語を借用した歌詞が面白い。曲の構成は、今回のアルバムに収録された他の曲に比べて相対的に気軽で明るい雰囲気だ。ヴァンパイアを題材にしてはいるが、軽快ではつらつとしたサウンドが楽しい。

「頭の上、人」は、このアルバムで主にベースとバックコーラスを担当したチャン・ヒョクジョがメインボーカルとして歌った曲だ。歌詞は、前後の脈絡を把握するには、フレーズ間の意味の余白が大きすぎて、ミニマルになっている。「頭の上に落ちたあの人」をどのように解釈すべきか、この曲が伝えようとしているメッセージは何か、想像力を働かせながら聴いてもいいだろうし、あれこれ考えずクールなリズムと温かい中低音が支配するサウンドに集中するだけでも嬉しくなるだろう。

「木化石」は、自分自身との約束が守れなかった一人の男の悔恨を描く曲。歌詞に出てくる「時間を超えた少年」と「背を向けた男」は話し手の「僕」と同一人物だ。少年時代の夢をすでに捨てた、大人になった話し手は、当時を「固まってしまった化石」と称するが、これは当時の約束を守るには自分が変わり果ててしまったという、骨身にしみる自覚からだと見える。

ミロの絵ような超現実主義の絵画を思い浮かばせるこの曲のポイントは、ベースとギター、ドラムをもとにハラハラ感を促す、重みのあるエレクトロニカ・サウンドだ。このアルバムをプロデュースしたLowdown30のリーダーユン・ビョンジュの“指紋”が最も鮮明に表れている曲だが、Lowdown30の2枚目のフルアルバムに収録されている「ソウルの夜」と比較しながら聞いても面白そうだ。

「ドミノ」は拒めない欲望について歌った曲だ。話し手は「重い寂しさ」と「多くの願望」「呟く名前」などが引き起こす欲望から逃れたいが、思うままにいかない。「絶望の道に踏み入る」ことを知っていながらも「欲望を積み重ねていく」自分の姿を、一つが崩れ始めると二度と「取り返しのつかない」ドミノに例えている。そしてサイケデリックなバンドサウンド、凄然とした馬頭琴の演奏、イ・ジョンフンのリリカルなボーカルなどが、けだるく深い悲しさと虚しさ、絶望を感じさせている。

「Denial」は、深い絶望を歌った曲だ。今話し手は、暗く寂しいトンネルのような人生の一時期を通り過ぎている。出口が見えないそのトンネルで話し手は、その「暗闇の向こうにもっと大きな暗闇」があり、その「寂しさの向こうにもっと大きな寂しさ」があるかも知れないという不安に包まれている。終始低く響きながら不吉さを煽るベース、いわば“鬼哭の声”の背景音のように奇怪さを加える馬頭琴の音、絶望の端に立った者の絶叫を表現したイ・ジョンフンのボーカルなどが、色鮮やかな“地獄絵図”を描いている。

果てしなく絶望しながらも、S.O.Sを発信し続ける曲たち

今回のアルバムに収録された曲は、大半が取り返しのつかない一種の破局の状況を歌っている。関係の破局、またはある時期の破局を意味しているが、これは話し手自身が尊重されていないとの思い、相手が自分に何かを隠しているという疑念、自分自身への失望などに起因している。中でも特に嘘偽りに対する抵抗感は、アルバムを一貫して著しく現れている。

しかし、歌の中の破局を迎えた話し手たちは、大体無気力な姿だ。「あの時のように僕につかまって」(「霧女のキス」)、「僕を誤解しないで」(「急かす」)、「お願いだから僕を離して」(「内部告発者」)、「僕の手を掴んで」(「水中遊泳」)、「僕のもとにやって来て」(「V.L.S.」)など、頻繁に使われている依頼形の歌詞が、まるで“S.O.S.”のように読み取られる理由だ。

もはや問題は、破局の後だ。彼らには、今日よりましな明日を作ることができるという自信も、気力も残っていない。彼らは自ら化石のような存在になって生き延びたり(「木化石」)、無駄な欲望を積み重ねては崩すことを繰り返しながら絶望の道を歩くだけだ(「ドミノ」)。

このようにHanumpaが今回のアルバムで描いた世界は、人が生きていくにはあまりにも暗く寂しいところだ。それだけでなく、そこには「この暗闇の向こうにもっと大きな暗闇」があり、「この寂しさの向こうにもっと大きな寂しさ」があるかも知れないという不安まで潜んでいる。この全ての災難は結局人が作り出したものだが、それにも関わらずHanumpaは人に対する希望だけは、最後まできっちり掴んでいる。

果てしなく絶望しながらも他人にS.O.Sを発信し、「霧が深く立ち込めたあの日」のような救援の瞬間を待つのだ。かつて詩人のパク・ノヘが「人だけが希望だ」と謳ったように。もっとも、この険しい世の中を生き抜くには、そう考えるしかないような気もする。人が希望になれない世の中なら、人としてそれ以上生きていく理由もないだろうから。

記者 : ソ・ソクウォン