パク・ウンビン「無人島のディーバ」への愛情を明かす“2022年の私に必要な作品だった”【ネタバレあり】

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
写真=NAMOO ACTORS
「自分に与えられたことはしっかりやろうという心構えで生きています。他人に迷惑をかけず、自分のことは自分でやりながら生きようという素朴な考えで。みんなで生きていく人生だから、自分の役割をきちんと果たして生きていけば、互いに不便なこともなくなるのではないかと思っています」

パク・ウンビンは最近、ソウル江南(カンナム)区清潭洞(チョンダムドン)にあるNAMOO ACTORSの社屋でマイデイリーと会い、tvN「無人島のディーバ」(脚本:パク・ヘリョン、ウンヨル、演出:オ・チュンファン)に関するインタビューを行った。

同作は、15年ぶりに無人島から救助された歌手志望のソ・モクハ(パク・ウンビン)の“ディーバ挑戦記”を描いた。トップスターだったユン・ランジュ(キム・ヒョジン)の“チャート逆走”プロジェクト、カン・ボゴル(チョン・ギホ、チェ・ジョンヒョプ)とのロマンスなど、様々なストーリーが視聴者から愛された。

パク・ウンビンは劇中、ユン・ランジュのように歌手になりたいという夢を持っているが、予期せぬ事故により無人島に漂着したソ・モクハ役を演じた。15年という長い歳月を無人島で持ちこたえたソ・モクハは、世情には疎いが、それよりもっと貴重な道理を知り、世界へと羽ばたく人物だ。

写真=tvN
パク・ウンビンは「7~8ヶ月間という長い間撮影したのに、6週間で放送終了になったので、すごく短いと感じました。それでも有終の美を飾りたいと思っていたのですが、最高視聴率で終わったのでよかったです」と放送終了の感想を語った。

同作の視聴率は3.2%(以下ニールセン・コリアの韓国全国平均)でスタートし、最終回では9.0%を記録した。回を重ねるごとに視聴率は着実に上がり、自己最高視聴率で放送終了となった。

初回から高視聴率ではなかったことについて彼女は「私の予想通りだったので大丈夫でした。頑張って準備したものが積み重なれば、徐々に見てくれる方も増えるんじゃないかなと期待していました。決して絶望したりがっかりしたりはしませんでした」と告白した。

また印象的な反応について聞くと「私が『屋外録音室』という(YouTubeの)ライブコンテンツを撮影したことがありましたが、『泰陵(テルン)選手村の選手役を務めたら、オリンピックで金メダルも獲れたかも』という書き込みがありました。私の努力を分かってくれているような気がしてありがたかったです。実を言うと、私の努力は分かってくれなくても構わないと思っていたんです。役者として準備したものを楽しく見ていただけるだけでいいと思っていたのに、そのように隠れた努力までキャッチして褒めてくださると、感謝の気持ちがずっと強くなりました」と話した。

写真=NAMOO ACTORS
ソ・モクハ役を演じたパク・ウンビンは、代役を使わず自ら歌を歌った。ドラマで彼女がマイクを掴んだシーンは、すべてが本人の声だ。今作で彼女は「Someday」「その日の夜」「Here I am」「Mint」「Open Your Eyes」「Until The End」などを歌い、高音のパートまで完璧にこなして賛辞を受けた。

これについて質問すると彼女は「難しい曲がいろいろとありました。今回、ボーカルのレッスンを受けながら自分の限界を確かめたいと思いました。発生練習を担当してくれた先生が、どこまでできるか確認してみようと言った時、自分の音域が高い方だったのか、『4オクターブのド』まで出ました」とし、「一番キーの高い曲が『その日の夜』で、3段の高音があることで少しだけ注目を集めましたが、『3オクターブのソ#』くらいでした。思ったより高音は難しくなかったんです」と答えた。

また「ボーカルは私が好きなジャンルですが、聞き心地がいい曲と歌いやすい曲は違うじゃないですか。その曲を完璧に歌いたかったのですが、その実力を支える土台があまりなかったんです。モクハというキャラクターに会ったおかげで実力を積むことができたので、大変でしたが楽しい作業でした」と謙遜した態度を見せた。

歌の実力だけで、ソ・モクハというキャラクターを完成させることはできない。ソ・モクハはユン・ランジュの代役としてリップシンク(口パク)をする。同時に全盛期のユン・ランジュの実力まで越えなければならなかった。ユン・ランジュに代わって歌う声が、彼女と合うのか心配になった。視聴者を納得させる実力も必要だった。

彼女は「モクハがランジュに代わって歌を歌わなければいけませんでしたが、もし私の代役が登場したら、代役歌手の代役がまた登場することになるのです。それを視聴者の方々が納得できるか、作品への没入を妨害するのではないかと心配になりました」とし、「視聴者の方々を納得させるため、心を込めた演技を見せないとと決心しました。監督がすごく気を使ってくださいましたし、音楽監督を筆頭に、音楽チームが心血を注いでくれました」と感謝の言葉を伝えた。

そのため彼女は、1月半ばからレッスンを受け始めた。実力派シンガーソングライターのAaliaがギターと発声を教えた。一日3時間ずつ、計6ヶ月間、43回のレッスンが続いた。撮影が始まった4月には時間的な余裕がなく、一週間に1回のレッスンを受けられればよい方だった。それでもパク・ウンビンのレッスンは続いた。6ヶ月間、基本と基礎を固め、着実に実力を積んできた。

これについて彼女は「実際に実力が伸びたのは、レコーディング室からだったと思います。作曲家から直接ディレクティングを受けるのは、まるで出題者の意図を理解する近道ができたような感じでした。作曲家のTAIBIANが集中的にプロデューシングしてくださったおかげで、実力がどんどん伸びていきました」とし、「音楽監督も音楽チームのスタッフも『レコーディング室での練習が、本物のディーバ挑戦記』と言っていました。ドキュメンタリーとして制作してもいいかも、と言われるほど熾烈な時間を過ごしました」と満足した表情を見せた。

彼女は数十曲のデモ曲をもらい、自ら選曲した。もちろん、彼女が選んだすべての曲が採用されたわけではない。脚本家も、今回のドラマに合う曲を選んだ。そのようにして選ばれた曲は、予想よりジャンルが多様で、聞くにはよいが歌うのは簡単ではなかった。しかし、彼女の努力が光を放った。徐々にレコーディングの経験が積み重なって、全曲を再レコーディングしたら雰囲気が変わりそうだと称賛された。

パク・ウンビンは「相変わらず自分の歌の実力に対する確信はないですが、私は自分の最初の実力を知っていますから。本当にたくさん努力してよくなっていったんだなと思いました。最善を尽くしたので、未練は持たないようにしようと思っています。難しい歌のように聞こえても歌いやすい曲もあって、反応は良かったけれど私にとっては難しくて死にそうだった曲もありました。素晴らしい境地に達したと堂々と言えるくらいです」と話した。

“死にそうだった曲”として彼女は「その日の夜」を選んだ。リズムに乗ると同時に、感性的に歌わなければならなかった。さらに、アコースティックとコンテストバージョンも別にあった。特にコンテストバージョンでは2008年のユン・ランジュの声を超える、2022年のソ・モクハの声が必要だった。もちろんこのすべてはパク・ウンビンの役目だった。

彼女は「コンテストバージョンというもの自体が、『ああ、この歌手』という風に耳をとらえる何かが必要でした。昨日の自分に勝つのも大変なのに、2008年のユン・ランジュの全盛期という設定と、『今の声がもっといいね』という設定の中でどうすればいいだろうかとすごく悩みましたし、レコーディング室で一番長い時間を過ごしました」と告白した。

また「一番好きな曲は『Someday』です。『Fly Away』もフィナーレを飾るのにいい曲だと思いましたが、その前の曲がよかったので、比較的『Fly Away』への関心が少なくて悲しいです」と冗談めかして言った。

このようなパク・ウンビンの努力により、ソ・モクハはスタジアムで単独コンサートを開催して、年末授賞式で大賞である「今年の歌」のトロフィーを獲得する歌手に成長した。韓国女性ソロ歌手としてトップの座を獲得したソ・モクハは、歌手のIUを連想させるという反応もあった。

これに言及すると彼女は「監督と助監督が美術に力を入れましたが、唯一参考に見せてくれたものはテイラー・スウィフトのライブでした」とし、「ワールドツアーでの姿を見た後、緑色の背景で自分自身がディーバになったと思って演技しました」とビハインドストーリーを伝えた。

発売したOST(挿入歌)が多かっただけに、音源の収益に関しても質問が出た。「本業が歌手ではないので関係ないと思いますが、よく分かりません」と言う彼女に、著作隣接権があると説明すると、「では待っていたら収益が出るのですか。全然知らなかったので教えてくれてありがとうございます」と答えて笑いを誘った。

モクハというキャラクターには、歌の他にもパク・ウンビンの血、汗、涙が込められている。彼女がいつも作品に出演する度に作成するキャラクターノートにも、その痕跡が残っている。本人もデジタル化したという彼女は、ノートではなくタブレットにキャラクターに関することを書き込んだ。

彼女は「歌に関してはプロ歌手の実力に追いつくため、彼らの歌唱法を真似した瞬間、不自然に感じられたんです。似合わない上に、私が完璧に歌えないと不快感を与えかねないと思いました」とし、「私の声色、モクハらしい歌唱法について悩みました」と述べた。

また、方言を使う演技については「方言は(モクハと)同じ出身地の方々に助けてもらいました。同じ地域だと言っても、地域の中でさらに分かれた地域や年齢、性格によって違いました。だいたいは何を言っても、『私たちの耳には全て方言に聞こえる』と言われました」とし、「その方々のおかげで気軽にモクハが持っている方言の中の情緒に集中しようと考えを整理することができました。練習中に『これ大丈夫ですか』と聞いたことがありますが、寛大に受け入れてくれたのでよかったなと思いました」と伝えた。

ソ・モクハに言及する時、歌、方言と共に欠かせないものがある。それはソ・モクハが15年間いた無人島だ。そして無人島について聞いた時に予想した答えは、島での撮影の苦労や美しい自然環境、漂着した人物を演じるための努力などだった。

しかし彼女は「制作発表会の時にも言及しましたが、作品の根底にあるメッセージは、みんなが自分だけの無人島に閉じ込められている時期がある、ということです。モクハは物理的に無人島という空間に閉じ込められていましたが、私はそこで夢に近づきはしなかったけれど、停滞している時期ではなかったと思いました。どうやってでもモクハは、自分の夢を叶えるために頑張っていただろうと思いました」とし、「私も昨年、この作品への出演を決心した時に、無人島という空間は自分の中にあるんだなと感じたんです。自分だけ存在する、自分の声が響く空虚な空間が心の中にあるじゃないですか」と深い話をした。

パク・ウンビンは「そこでどんなことを考えて、どんな気持ちで社会に出てくるのかによって、人との関係が決まると思いました。無人島を経験し、そこから出てきたモクハが、様々な人々に会って互いに影響を与え、救済します。このようなメッセージを伝えることができたのではないかと思います」とつけ加えた。

これに先立ち、制作発表会で彼女が言及した重要なポイントがもう一つある。当時彼女はソ・モクハについて「2023年はモクハが道しるべになるんじゃないかな、という希望が芽生えました」と語った。彼女は「いつも一年に1本は必ず出演してきました。一年を振り返ってみると、自分が出演した作品のキャラクターが残って、このキャラクターとして一年を過ごしたんだなと思いました」と話した。

また「そのような意味で2022年がウ・ヨンウだったとしたら、2023年は自分をどのキャラクターとして記憶するべきだろうかと考えました。モクハは2022年のパク・ウンビンにとって、本当に必要な性格のキャラクターでした」とし、「個人的に、2022年の嬉しかったけれど落ち着かなかった心を、モクハがうまく整理してくれそうな感じがしました。実際にモクハが、台風が無人島を襲った時に『台風に負けるな』と髪を結って片付ける姿にすごく癒されました」と告白した。

ウ・ヨンウからソ・モクハまで、彼女の選択は簡単ではなかった。いつも“大きな挑戦”という言葉がついてきた。しかしキャラクターと台本を選ぶ時の基準について彼女は「実は挑戦は好きじゃないんです。“挑戦のアイコン”になりたいとも全く考えていません。難しい選択が好きな性格でもないですが、その時その時の選択は、私の心に忠実だった結果です」と説明した。

そして「前作ではこんな人物を演じたから、次回作では異なるキャラクターにしようと思うよりは、台本を見た時、これをやってみようという気持ちに忠実だったのが、後で考えてみると難しい挑戦になっていたんです」とし、「自分の決めたことに責任を負う人生を生きようといつも思っています。そのおかげでキャラクターと共に成長する一年を過ごすことができたと思います」とつけ加えた。

ソ・モクハは15年間無人島にいたが、素晴らしい“ディーバ”になって夢を叶えた。しかし、漂流したソ・モクハがいつも凛々しかったわけではなかった。無人島生活6年目を迎えると、彼女も挫折した。そんな彼女のもとに流されてやってきたのは、賞味期限が過ぎたラーメンが入っているクーラーボックスだった。そしてそのクーラーボックスが、彼女に希望と生きる勇気を与える媒介になった。では、常に輝いているパク・ウンビンにも、クーラーボックスのような存在はあるのだろうか。

彼女は「モクハはクーラーボックスに助けられましたが、まだクーラーボックスを見つけられなかったことが私にとっての救済ではないかと思います。必ずしもクーラーボックスのようなものが流れてくることを望みながら生きる必要はないと思うからです。まだモクハほどの危機がなかったのか、クーラーボックスがなくても大丈夫な気もします。私も危機に直面した時、モクハのクーラーボックスを思い浮かべて、自分にとってのクーラーボックスは何だろうと考えながら乗り越えられると思います。まだ見つかりませんでしたし、見つける計画もありませんが、人生の危機に直面した時、必ずモクハのクーラーボックスを思い出そうと思います」と伝えた。

記者 : カン・ダユン