「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」チュ・ジョンヒョク“腹黒策士というあだ名も幸せな思い出になると思う”

OSEN |

写真=BHエンターテインメント
ファンタジードラマに登場しそうなキャラクターの中で、とりわけ現実的なキャラクター。憎らしい行動をするが、憎らしいばかりではない理由は、あまりにも現実的だからだ。「イデナム(20代の男性)の化身」「2030の自画像」と呼ばれるほど権力に敏感な人間、“腹黒策士”ことクォン・ミヌの存在は、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」シンドロームの大きな力になった。

ENA水木ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(脚本:ムン・ジウォン、演出:ユ・インシク)が第16話を最後に放送終了した。同作は、IQ165の天才的な頭脳と自閉スペクトラム症を持つ大手法律事務所の新入弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)が様々な事件を解決し、真の弁護士に成長するドラマだ。最高視聴率17.5%を記録するなど、韓国でシンドロームを巻き起こした。

ウ・ヨンウ、イ・ジュノ(カン・テオ)、チョン・ミョンソク(カン・ギヨン)、チェ・スヨン(ハ・ユンギョン)らの所属する法務法人ハンバダには、独特でファンタジーのようなキャラクターがたくさんいた。その中でチュ・ジョンヒョクが演じたクォン・ミヌは、あまりにも現実的で共感を呼び没入度を高めた。事件を解決するために、手段と方法を選ばない憎らしいキャラクターを素晴らしい演技力で見事に演じこなして、“腹黒策士”というあだ名がキャラクターの名前になったようにキャラクターに入り込ませた。

チュ・ジョンヒョクは2020年、Kakao Mアクターズオーディションで700分の1を勝ち抜いた新人だ。自主制作映画「The Craving」でデビューし、「私たちの中の彼ら」「忌日」「Young People in Korea」「電気技能士」などで主演俳優として作品を引っ張り、Netflixシリーズ「D.P.」のイ・ヒョサン役で大きく顔を知らせた。ドラマ「ハピネス」ではジムトレーナーのスンボム役、「ユミの細胞たち」シーズン1とシーズン2ではワーカホリックのゲーム開発者のルイ役を演じ、様々なジャンルの作品で存在感を見せた。このように“売れっ子新人”“売れっ子シーンスティラー(scene stealer:映画やドラマで素晴らしい演技力や独特の個性でシーンを圧倒する役者を意味する)”として活躍したチュ・ジョンヒョクは、“腹黒策士”クォン・ミヌという、人生に残るキャラクターに出会った。

ブームを巻き起こした「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」。クォン・ミヌ役で出演したチュ・ジョンヒョクも人気を実感している。試写会などのイベントで、チュ・ジョンヒョクという名前よりも「クォン・ミヌ」「腹黒策士」と呼ばれるのは日常であり、絶大な人気を博して演技人生最高の瞬間を迎えている。

「見ていだいているのが本当に不思議です。同僚の芸能人の方々も僕を腹黒策士と呼びます。それが固有名詞のように自分のあだ名になりました。腹黒策士と呼ばれたら振り返るほどです。面白いドラマになるだろうと確信していました。脚本が本当に良かったですし、現場で演技する時にエピソードごとに先輩達の演技を見ながら、自分たち同士で感嘆したりしました。見ているだけでもとても面白かったです。でも、こんなにも愛されるとは思いませんでした。最初は実感が沸かなかったし、すごく不思議だったんです」

ENAという馴染みの薄いチャンネルで17.5%という視聴率は、地上波に換算すれば遥かに高い数値を意味する。このような成果によって「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」チームは、バリ島で褒賞休暇を過ごした。また、黄金の鯨をもらう予定だという。

「(俳優たち同士では)そのような話をしたことがありません。あまりにも奇跡のようなことだったので、皆で拍手して、本当に感謝しています。全ての人物たちを愛してくださったので、ただただ不思議で感謝する気持ちしかありません。最高視聴率は予想することもできませんし、維持するだけでも大きな成功だと思っています」

「『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が終了した後も、視聴者の方々にまた見たいと思われるドラマになったら嬉しいです。温かいストーリーで、もう一度見てみたいと思うドラマになればと思います」

チュ・ジョンヒョクは「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のオーディション当時、あるエピソードのキャラクターとクォン・ミヌを準備して臨んだ。当時、彼はウ・ヨンウにペナルティーを与えるべきだと主張するシーンを演じたが、人物の背景は知らない状態で、その場面だけの演技をしなければならなかった。

「最初はオーディションを受けました。クォン・ミヌ役と、あるエピソードの役を同時に受けました。その時は、クォン・ミヌの1つのシーンしか読まなかったので、どのような人物なのか分からなかったんですが、その場面ではクォン・ミヌが非常にきちんとした人だと思いました。そのようにオーディションを受けましたが、監督と脚本家の先生に、クォン・ミヌそのものだと言っていただきました。ウ・ヨンウにペナルティーを与えないかと抗議する場面だったんですが、正しいことを憎たらしく言うキャラクターなのかと思って準備しました。その時は腹黒策士だとは思わなかったし、嫉妬深い人なのかと思っていました」

クォン・ミヌが最初からこのように憎まれたわけではなかった。同作の序盤には、自閉スペクトラムを持つウ・ヨンウを皆が助けなければならない弱者だと思っていたが、クォン・ミヌだけはウ・ヨンウをライバルだと思うという点で、偏見のない人物だという評価を受けた。しかし、彼のあだ名が“腹黒策士”であり、ウ・ヨンウと同じ事件を担当する時にも、競争で勝つためにある手段を使い、ウ・ヨンウの出生の秘密を知って、法務法人テサンに職場を移すために裏で手を打つ様子が人々を怒らせた。クォン・ミヌに対する評価は、第5話を機に完全に変わった。

「序盤に視聴者の方々がクォン・ミヌを見て、偏見を持たずにウ・ヨンウをライバル、競争者として認識していると言って好評してくれました。その後腹黒策士というあだ名が出てきて、クォン・ミヌが“イデナムの化身”または“2030の自画像”と言われましたが、すごく難しい問題だと思います。個人によって価値観の差が大きいんですが、自分がもしクォン・ミヌだったら、彼のようにはしなかったと思います。むしろウ・ヨンウを自分の味方にしたがると思います。実はクォン・ミヌがある程度納得できることを言っていると思いました。演技をする時も、その部分について納得して演じました。ある程度、演技する時は理解できたのですが、実際に自分だったら掲示板に書き込みをしたり、ペナルティーを主張することはなかったと思います」

彼は、Blind(特定の会社や業界に属する者同士がコミュニケーションする匿名型SNSアプリ)掲示板にウ・ヨンウの不正就職を告発する投稿をし、テ・スミ(チン・ギョン)に取引を提案する姿で、ストーリーに入り込ませた。しかし、終盤に差し掛かってクォン・ミヌのストーリーが少しずつ公開され、“ドタバタ”ウ・ヨンウ、“春の日差し”チェ・スヨンに融和されながら最終的なヴィランにはならなかった。

「チョン・ミョンソクもそうですし、ウ・ヨンウとチェ・スヨンはソウル大学ですが、クォン・ミヌだけハナ大学です。それに対する劣等感があるんです。ある意味で現実的なキャラクターです。人間の本性には腹黒策士のようなところがある程度あると思いますが、そういう部分があるキャラクターです。憎たらしいことをたくさんをするんですが、悪い人ではないと思います。あくせくと最善を尽くして生きていく人物です」

「(クォン・ミヌは)見たままだと思います。一人で何か計略を立てて相手を崩そうと考えますが、その手法そのものがあまりにも単純で、1次元的な方法です。単純なだけに、すぐに困惑します。ある意味で少しは可愛く表現されたように思います。他の人物たちはファンタジーっぽい一面があります。脚本を見ると、皆温かいんですが、クォン・ミヌは本当に現実的だと思います。だからもっと現実的に表現したかったし、たくさん悩みました。どうすれば職場に必ずいる人のように見えるか工夫しました」

「記憶に残るのは、『鼻にあるほくろをベルのように押して後頭部を殴って逃げたい』という言葉でした。ちょっと幼稚ですが、斬新で記憶に残っています。ほくろまで憎らしいと言われて不思議でした。それでもクォン・ミヌは僕にとって、憎らしいけれど可愛いキャラクターになると思います。最後までヴィランにならなくて良かったと思っています」

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の法務法人ハンバダには、ウ・ヨンウ、イ・ジュノ、チョン・ミョンソク、クォン・ミヌ、チェ・スヨンで構成されたチームがある。シニア弁護士のチョン・ミョンソクが、新入弁護士ウ・ヨンウ、クォン・ミヌ、チェ・スヨンを率いて、訟務チームの職員イ・ジュノがサポートする。視聴者たちは“ハンバダズ”のケミストリー(相手との相性)にハマって、約2ヶ月の間、笑いと感動、涙など、様々な感情を経験した。俳優たちとハンバダズとして共演したチュ・ジョンヒョクも同じだった。

「エピソード形式の作品はあまりなかったので、難しそうで不安もありました。だからもっと準備して、緊張感を持たなければいけないと思っていましたが、初撮影の瞬間にその不安がすべて消えました。彼らと一緒に作っていくのなら、楽しんでもいい、楽しむだけでもクォン・ミヌを上手く表現できると思いました。幸せだったので、たくさん愛されることに本当に感謝しました」

「演じながらそれぞれの演技の方向性について感嘆しながら見ていました。まず、ベテラン俳優で大先輩のパク・ウンビンさんは、本当に決断力があって、上手すぎて、このような人が主人公をするんだなと思いました。カン・ギヨンさんは本当にセンスがあります。打って出るべき時をよく知っている感じです。だからそのシーンが面白く仕上がりました。自分もそのようになりたいです」

「カン・テオさんは、元々本当に上手だと思っていたんですが、本当にたくさん準備してくる俳優で、努力型です。本当に一生懸命に頑張っています。ハ・ユンギョンさんは本当に面白いです。どのような役でどのような人と共演しても、全部受け止められる女優です。そのような部分において柔軟な女優です」

「僕はその中で、彼らの演技を受け止めるだけだったんです。受け止めるだけでも、クォン・ミヌとしてのリアクションを作ることができました。だからすごくありがたくて面白い現場でした。すべての俳優たちが、お互いにフィードバックをしながらアイデアを出し合ったんですが、そのような部分で初撮影の時からケミ(ケミストリー、相手との相性)が良かったです」

権勢と謀略、手段と方法を選ばず目的を達成しようとする策略や計略を意味する腹黒策士は、チュ・ジョンヒョクの新しいニックネームになった。

「最近は腹黒策士と呼ばれるほうが多いです。名前よりも聞き慣れて親しみが持てる感じです。最近はインタビューをして、試写会に招待されてさらに実感しています。映画『非常宣言』の試写会の時に、足の力が抜けてちょっと椅子に倒れこんだんですが、その映像も話題になりました。他の方々には見えないと思って、寝転がったんですが、多くの方々が見て映像で撮ってSNSに掲載しました。そのような反応が不思議で面白いです。そしてSNSに投稿をすれば、腹黒策士というコメントが寄せられます。チュ・ジョンヒョクとクォン・ミヌを区分せず、僕をクォン・ミヌだと思う方が多いですね。それも関心ですし、ドラマをたくさん見てくださっているのだと思うので嬉しいです」

腹黒策士、ドタバタなど、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は、新鮮なあだ名で、各キャラクターを視聴者の脳裏に深く刻印させた。そのためチュ・ジョンヒョクは腹黒策士になったが、彼は自分が演じたクォン・ミヌに“拳拳服膺(心の深くに刻んで忘れずに大切にしまっておく)”というあだ名をつけた。そしてクォンリエリ(クォン・ミヌ+サリエリ)というあだ名もつけた。

「拳々服膺。いつも心に留めて決して忘れないという意味です。たくさん使う単語ではないので、聞き慣れないと思います。別のあだ名としては、クォンリエリです。法廷でウ・ヨンウが裁判をするのを見ながら、『サリエリはこのような感情だったかな』というセリフがあったんですが、監督と会話をしながら、『アマデウス』をもう一度見て、サリエリの感情をクォン・ミヌから感じました。“第2人者コンプレックス”です。クォン・ミヌも有能な弁護士ですが、自分自身にコンプレックスを持っています。見ていただく方々が、自分を他人と比較するというよりは、自分自身に集中して、自分をもっと愛してほしいです」

「腹黒策士は、僕にとってとても気分のいい言葉になりそうです。様々なあだ名があったんですが、後々振り返れば、とても幸せな思い出になると思います。腹黒策士としてたくさん愛されたので、次の作品やキャラクターでもたくさん愛されたいです。今までの人生最高のキャラクターは、腹黒策士クォン・ミヌですが、今後も新しく素晴らしいキャラクターを作っていくのが夢です」

記者 : チャン・ウヨン