【映画レビュー】「同窓生」事情を抱えていそうなT.O.Pの眼差し、神の一手だった

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20歳になったばかりの少年の願いは、世界中でたった一人の家族である妹と平凡に生きることだ。しかし、世界は少年の小さな願いさえも許さなかった。非情な世界は哀れな少年だけに慈悲を施さなかった。

29日午後、ソウル中(チュン)区東大門(トンデムン)MEGA BOXでアクション映画「同窓生」(監督:パク・ホンス、制作:ザ・ランプ)のマスコミ向け試写会が開かれた。

「同窓生」は人気グループBIGBANGのメンバーで俳優のチェ・スンヒョン(T.O.P)による「戦火の中へ」(監督:イ・ジェハン、2010)以来2度目となるスクリーン挑戦作として話題を集めた映画だ。役者としても活躍する歌手の代表格であるT.O.Pの出演だけでも「同窓生」は今年下半期最高の期待作に浮上するなど、韓国映画界の注目を一身に受けた。


3年前「戦火の中へ」で学徒兵をまとめる中隊長オ・ジャンボムを演じたT.O.Pは、今回の「同窓生」で韓国に送られた少年工作員リ・ミョンフンに変身した。北朝鮮軍に銃を構えた韓国の少年は、北朝鮮最高の工作員となり、勢力争いの犠牲になる。特に、勢力争いの中心に、妹リ・ヘイン(キム・ユジョン)と友人イ・ヘイン(ハン・イェリ)が巻き込まれ、リ・ミョンフンの運命はさらに暗澹としたものになる。

結論から言うと、3年ぶりに映画俳優として帰ってきたT.O.Pの帰還は、歓迎の一言である。デビュー作の「戦火の中へ」が商品を購入する前に味わう試食用だとすれば、「同窓生」はかなり形を整えた機能性商品だ。もちろん、高い最高級ブランドまではなれなくても、“演技をしてみたい歌手”から“演技が面白くなった歌手”になった。

今年の上半期大ヒットしたスパイ物「シークレット・ミッション」(監督:チャン・チョルス)と比較対象になった「同窓生」は、キム・スヒョン、パク・ギウン、イ・ヒョヌというスリートップ体制の「シークレット・ミッション」よりさらにシンプルなT.O.Pのワントップ映画として魅力をアピールした。ここに笑いのコードをなくし、感性のコードを加え、重みを生かした。二つの映画を比べたとき、少し優位に立つのは後発の「同窓生」といえよう。

その理由は、目で語るT.O.Pの演技がキャラクターを生かしたためだ。T.O.Pは若くしてたった一人の妹を守らなければならない責任感と理由もなく殺人を犯さなければならないリ・ミョンフンの苦痛や苦悩を眼差しだけでしっかり説明した。どこか事情を抱えていそうな瞳は「同窓生」の神の一手だ。

秘密のアジトである屋台のお婆さん(イ・ジュシル)に向けた涙と、拉致された妹ヘインへの叫び、自身を脅迫する北朝鮮偵察局の将校ムン・サンチョル(チョ・ソンハ)への怒りなど“T.O.P眼差し3点セット”は、多くの女性観客を魅了するに十分な武器になった。特にムン・サンチョルの胸倉をつかみながら睨み付けるリ・ミョンフンの殺気を帯びた目は、人々をぞっとさせる。「同窓生」で見逃してはならない名シーンの一つだ。

T.O.Pのアクションも評価されている。「同窓生」で披露したイスラエルの特攻武術は「アジョシ」(監督:イ・ジョンボム、2010)のウォンビンを凌駕する武術だ。ガラスの破片で手を切る怪我をするほど力を入れたアクションは抜かりがない。“アクション俳優T.O.P”と言っても過言ではないほど、すばらしいシーンを作り上げた。

しかし、完璧な眼差しとアクションがあるにもかかわらず、ぎこちない発音とアクセントは整えられなかった。「同窓生」でT.O.Pの流暢な方言に期待している観客はがっかりするかもしれない。無口なリ・ミョンフンが魅力的な113分だ。最初、いや2回目でお腹いっぱいにはならないのが当然かも知れないが、自然な話術はもう少し磨かなければならない部分だ。

映画の80%が韓国に送られたT.O.Pのシーンであるにもかかわらず「同窓生」というタイトルにこだわったパク・ホンス監督の意思も理解が難しい。試写会が終わった後、タイトルに対する質問が相次ぐ中、方向性の違う答えをしたパク・ホンス監督。エンドロールがあがり、映画館を出るまでもタイトルに対するミステリーは解けなかった。「同窓生」というタイトルよりは「T.O.P」というタイトルが似合う。T.O.Pのほかにもキム・ユジョン、ハン・イェリ、チョ・ソンハ、ユン・ジェムンなどいい材料がたくさんあったのに、活用できなかった。

もう一つ。映画の終わりごろに登場する工場アクションシーンで、血が飛び散るほど左肩を銃で撃たれたリ・ミョンフンがその後は何もなかったような肩でいきなり足を掴むミスがあった。俳優活用の未熟さから玉に瑕まで、所々で現れたミスが残念だ。

このようなミスがあるにもかかわらず、T.O.Pのさらに成長した眼差し演技とアクションは褒められて当然だ。次が期待できる俳優だ。観客動員数700万人を突破し、大ヒットを収めた「シークレット・ミッション」に続き、下半期スパイ映画のダブルヒットを慎重に予想してみる。

「同窓生」はたった一人の家族である妹を助けるために韓国に行き工作員になるという提案を受けるしかなかった19歳の少年、リ・ミョンフンの物語を描いた作品だ。T.O.P、チョ・ソンハ、ハン・イェリ、ユン・ジェムン、キム・ユジョンなどが出演し、「僕の妻のすべて」「高地戦 THE FRONT LINE」「義兄弟」の助監督出身であるパク・ホンス監督の演出デビュー作だ。R-15で、韓国で11月16日に、日本では来年1月25日に公開される。

記者 : チョ・ジヨン