「清潭洞アリス」チャ・スンジョ、彼はただ愛にこだわる純情男に過ぎないのか?

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小さな価値を大切にする人間的な人、彼にとって愛の有効期限はない

人が恋に落ちると、脳からフェニレチラミンという化学物質が分泌されるという。その物質は、人に精神的、肉体的な活力を与えるが、愛という感情と一緒に消えると知られている。“愛の有効期限は6ヶ月”という説がある。事実有無とは関係なく、人間の感情というのが永遠に持続されないことは誰でも知っていることであろう。

チャ・スンジョ(パク・シフ)、今彼のハン・セギョン(ムン・グニョン)への愛が燃えている。彼はもっぱらドキドキする恍惚な気分のためあれだけ愛を唱えているのだろうか?違う。彼は愛、その根底にある相手に対する真摯な気持ち、信頼、そして条件ではなく“人間そのもの”を包容してくれる、そんな人を探している。

写真=SBS

チャ・スンジョとハン・セギョンの愛は叶うだろうか

このドラマで金と地位を持っている人は、その集団で追求する価値観から離れようとしない。結婚において“愛”は最優先の考慮事項ではなく、徹底した階級意識は基本である。既得権と富、名誉が与えた甘さを満喫する彼らにとって、貧乏とはただの軽蔑の対象に過ぎない。彼らから“マナー”以上の“人間に対する礼儀”を探すのは容易ではない。

ドラマは、彼らを非難する形式を取っていない。ただ、彼らが長い間身につけてきた暮らし方を黙々と見せるだけだ。それに対する価値判断は視聴者に任せている。チャ・スンジョもシン・インファ(キム・ユリ)も、子供の時から“愛もビジネス”と洗脳されて生きてきた。一生をそのように生きてきた人なら、敢えて道から外れた世界に足を踏み入れる理由はないだろう。

チャ・スンジョは、その既得権の中でいくらでも安泰に人生を過ごすことのできる人だった。しかし、彼は“愛至上主義者”だ。愛の為に自身のすべてを捨てた前歴もある。たとえ、その無垢さのため結局愛する人を失ったとしてもだ。彼はその傷のため世去って精神科治療まで受けなければならなかった。ソ・ユンジュ(ソ・イヒョン)は、ハン・セギョンに「あなたが彼を騙そうしたことを知ると死ぬかも知れないから、絶対に話してはいけない」とまで話す。

ここまでになると度が過ぎるという感じもある。30を過ぎた人が二言目には愛だなんて。ハン・セギョンは自身の愛を“醜い愛”だと認め、それにもかかわらず何もかもを投じてそれを守るために努力すると話す。しかし、その過程を見る視聴者はやきもきする。チャ・スンジョとハン・セギョン、二人が恋に落ちたのは明らかであるため、真実の雷管が爆発しないことを願うことになる。それが爆発した瞬間、すべてが終わってしまいそうだからだ。


チャ・スンジョ“愛至上主義者”である前に、小さな価値を大切にできる人

しかし、チャ・スンジョは少し差別化された人間像を見せている。“愛”が彼の人生の最も大きなモットーではあるが、彼は愛だけを求める人なのだろうか?違う。彼は“人間に対する礼儀”と“信頼”を最も重視する人だ。それは、彼が人に接する方法を見ればすぐに分かる。

彼は地位によって、あるいは金や名誉によって人間を区別しない。ハン・セギョンの家族、周りの人々に対する彼の態度は、彼が持つ人間味をよく表している。条件によって自身の態度をあらかじめ決めておく典型的な“俗物”とは明らかに違う人だ。彼が単純に愛にだけ陥没している人間ではないということだ。

チャ・スンジョは、高級ブランドバッグ会社の社長だが、手作業で作ったブレスレット1つを重宝する人だ。そのように小さい価値を重視する人が金に左右される世界と調和するのは容易ではない。彼は既得権にへつらうことなく、愛が排除された結婚を軽蔑する。実際に、真実な愛に何もかもを捨てたこともある。

今の彼が“愛がなければ死ぬかも知れない”という評価を受けるのは、彼が世間知らずであるためではなく、それだけ彼が持った信念が強いためであろう。他のドラマや映画によく登場するシンデレラストーリーでは、“あなたが貧乏でも愛している”といった類の設定が多い。しかし、チャ・スンジョがハン・セギョンを愛して、彼女の家族や友達に寛大なのはそのような意味を超えている。

もし、シン・インファがハン・セギョンが持っている性質を持っていたとすれば、話はまた変わったのかも知れない。もとい、その前にソ・ユンジュがチャ・スンジョが追求してきた価値を支持した人物であったなら、別れることもなかっただろう。彼はやっと自身の人生観を理解してくれる人、ハン・セギョンに出会った。チャ・スンジョが全力で彼女を掴もうとする理由があるのだ。

彼は、謙虚さや真実さがあるものなら何でも受け入れる準備ができている人、極小さな価値も大切にできる人だ。軽くて滑稽な行動を繰り返すが、彼に世間知らずの愛しか知らないという評価をするは正しくない。このドラマを“白馬に乗った王子様”チャ・スンジョと“シンデレラ”ハン・セギョンに関するストーリーだと単純に評価できないのは、そのためだ。

ドラマは様々な角度から多様な階層の人々を眺望している。そもそもの企画意図だったいわゆる3放世代(お金がなく恋愛、結婚、出産の3つを放棄した世代)を描くことに対してはいい評価をし難い。しかし、人物たちが見せる人間味、そして彼らの性格、時には偽善的な行動を加減なく表現し、人生において大切なものが何かを物語ることに失敗したようには見えない。

限度6ヶ月という愛の有効期限を越えてもチャ・スンジョ、ハン・セギョンの愛が続くことを私たちは信じている。愛の感情の根底にある信頼、人間に対する基本的な礼儀等が長らく彼らを守ってくれるはずであるためだ。

記者 : ハン・ギョンヒ