「王になった男」リュ・スンリョン“このような参謀、いや、俳優がほしい!”

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人の大切さを知っているから、一層貴重な俳優

彼を見ていると、羨望と嫉妬心を同時に感じた。特別なことを言っているわけでもないのに、表情と雰囲気で笑いを誘い、感傷に浸らせる男であり、俳優としてだけでなく、人間的にも親しくなりたいと思わせる魅力的な男だ。

2004年、彼は映画「小さな恋のステップ」の脇役で映画界に突如として登場したが、かなり長い間韓国の映画界は彼の真価を知らなかった。「今やっと」という言葉がふさわしいだろう。特に、昨年の映画「神弓 KAMIYUMI」をはじめ、今年の「僕の妻のすべて」「王になった男」に至るまで、リュ・スンリョンは確かに進化した。

「チャン・ボゴ(張保皐)」「NANTA(ナンタ)」など長い間、舞台で経験を積んだ彼に今、映画界が注目していることは、様々な面で幸運だと言える。彼の演技は、家にたとえれば“柱”に当たるのではないか。彼はすでに数々なドラマで魅力を見せてきたが、それに気付かれるまでは数年の年月が必要だった。まるで柱のように揺るがない俳優、リュ・スンリョンはいつの間にか人々にその存在を認識させるようになっていた。

映画「王になった男」で彼が演じたキャラクターも大きな柱の一つだと言える。柱は、簡単には揺るがない。まるで歴史の中のホ・ギュンが光海君(クァンヘグン)の時代にそうだったように、リュ・スンリョンは「王になった男」でホ・ギュンとして安定した柱の役割を果たした。


リュ・スンリョンには基本が大切だ

キャラクターの性格を表わす台詞も多くなかった。状況を説明したり、ハソンに情報を伝える台詞が中心だったためだ。そのためだったのだろうか。映画の中のホ・ギュンの微妙な表情と目つきの変化が大きく感じられた。ときには、ドラマ「個人の趣向」(2010)のチェ館長のコミカルなイメージが、ときには「神弓 KAMIYUMI」(2011)のジュシンタの殺伐としたカリスマ性が現れた。

王になろうとした者(ハソン役 イ・ビョンホン)や、その王に相談役としてノウハウを喜んで伝えた者(チョ宦官役 チャン・グァン)には共通した理想があり、ホ・ギュンはまさにその理想を実現するため、実質的な力になれる実力者であった。

「王になった男」に登場したホ・ギュンとは違い、歴史上のホ・ギュンは様々な資料で見られるように、朝鮮時代に一世を風靡した奇人で、権力の中心部から外れた部外者でもあった。歴史上の人物を映画に登場させるとき、実際のホ・ギュンをどれくらい受け入れたのかリュ・スンリョンに尋ねた。

「歴史的なことを見ようと、前から知っていたホ・ギュンに関する一般的な本を読みました。ホ・ギュンの歴史的事実を分析することは、ホ・ギュンへの礼儀だと思いました。でも、実在した人物ということを見ただけで、その人の性格や癖まで参考にしたわけではありません。

もちろん、奇人でもありましたが、映画では特に役に立たない特徴でした。『王になった男』には、ホ・ギュンの波乱万丈な話はあまり出ていないので、緊張感を持たせる必要がありましたし、その人の理想や性質は、映画に出てくる台詞で十分表現されたと思います」

どんな役でも、リュ・スンリョンはその人物に関する充分な知識を身に付けることで有名だ。歴史上のホ・ギュンの父親の名前まで知っているほどだった。彼は「王になった男」のホ・ギュンを演じる準備が充分できていた。


リュ・スンリョンには人が大切だ

リュ・スンリョンの魅力は、一緒に仕事をするとより際立つようだった。彼と仕事をした仲間やスタッフが、みな彼を評価したためだ。特に最近oh!my starとのインタビューを行ったチョ内官役の俳優チャン・グァンは「リュ・スンリョンさんが撮影後の打ち上げパーティーで、僕の額にチューをした。そこにチューをしたのは、たぶん彼が初めてだと思う。それだけ人をリラックスさせる才能がある」と裏話を公開した。

「あ、ばらしたんだ!(笑) 礼儀知らずのように見えるかもしれませんが、親近感を表現するスキンシップと言えますかね(笑) 今は額を静かに僕につけてきます。この仕事をしていると、僕も継続して会える関係は減るようです。今インタビューをしている記者さんもそうですし。

俳優は作品に出演しないと事実上、失業者ですね。そういうストレスもありますし、いつも新しい人に会うことから来るプレッシャーもあります。人間関係の問題がこの頃社会問題として挙げられることもあるけれど、人格障害やうつ病のようなものは本当に大変です。

人との関係がつらいのが一番大変です。僕が一番つらいこともあり得るし、逆に僕がつらい思いをさせることもあり得ます。そこで、働くときはせめて人のことでつらい思いをするのはやめようと思っています。すべての問題は、そこから起こるようです。人、人の言葉と誤解、そして人に対する欲まで」


リュ・スンリョンにとって大切なもの

リュ・スンリョンは、本当に器用だ。瀉血療法、木剣、水泳、歌など、技芸がとても上手だ。木で簡単な家具くらいなら自分で作れるほどの木工の実力も持っている。勉強は、リュ・スンリョンには自分を充電する重要な活動だった。

「仕事が仕事なので、僕たちのような人間は着実に続けられる趣味を持つことができないんです。月3回受講、3ヶ月コース?そんなものは、できません。その代わり家庭菜園で野菜を作ったり、園芸をしたり、趣味もそういうふうに変わりました。

もっと時間があれば、木工と紙粘土が好きだから続けたいと思います。後は、子供たちと一緒にできる冬のスポーツですかね?水泳とキャンプはもうやりました。自転車やローラースケートは、今も一緒にします。やはり幼いときに身に付けたことが記憶に残ります(笑)」

学習の重要さを知り、時間を大切にする俳優だった。演劇の経験も合わせると、20年を超えるキャリアを持つリュ・スンリョンは、何もせずに一日が過ぎることを最も残念に思う人物のように見えた。

「毎日反省します。一日は前の日の延長のようだと思います。今日はよくやったか。それともあのとき間違ったのかなどと振り返ってみます。作品を選ぶときも慎重に考え、正しいと思ったら判断は早いほうなのでこれまで生きてきた中で後悔したことはありません。結果がどうであれ、後悔はしません」

最後に、とんでもない想像をした。私たちが今、俳優のリュ・スンリョンに会えなかったら?幼い頃、俳優になると決心した彼が演技をしていなかったらどうだったのだろうか。
「まったく違う人になっていたでしょう。広告、または大工の仕事をしているのではないでしょうか。アイデアを出すことが好きだから。うーん……韓屋(韓国の伝統家屋)を建てて、フリーランスでコピーライターの仕事をすれば最高でしょうね(笑)」

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル