“名優”イ・ビョンホン、築き上げたトップスターへの道

OSEN |

映画「王になった男」を見た。そしてスクリーンの中で役者イ・ビョンホンに会った。

演技が下手な役者も多く、実力派を別に分類するのが最近の韓国映画界だ。演技が本業の役者が演技論争を起こすこと自体、恥ずかしくとんでもないことだ。しかし、優れた容姿やセクシーな魅力で人々から人気を得たスターがキャスティングを左右する中で、役者の演技力論争が絶えない。

そんな中でイ・ビョンホンは演技が上手なスター俳優として認められる。ロマンスやアクション、コメディなど、様々なジャンルやキャラクターを幅広く演じこなす俳優である上、海外でも通用する韓流スターだ。当然キャスティング第1順だ。

そんな彼が今秋、時代劇で観客に会う。「王になった男」だ。生涯初めての時代劇に出演し、一人二役を演じた。暗殺の脅威に震えている朝鮮の王光海(クァンヘ)であると同時に、そんな光海を嘲弄し、笑いの対象にする賤民(センミン:最下層の階級の身分)ハソン役だ。

ハリウッドの大作映画「G.I.ジョー バック2リベンジ」と「RED2/レッド2」に相次いで出演し、ワールドスターとしての位置づけを固めているイ・ビョンホンとしては多少冒険とも言える選択をした。なぜ、慣れない時代劇に大変な一人二役を選んだのだろうか。

俳優イ・ビョンホンのこれまでの活動を見ると、答えは簡単に見つかる。彼はトップスターになった後も地道に作品活動を続け、商業映画だけにこだわらなかった。「バンジージャンプする」「美しい夜、残酷な朝」「純愛中毒」「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」「悪魔を見た」等、作品性を見て快く出演した秀作も多い。

「悪魔を見た」では、サイコパスの連続殺人犯チャン・ギョンチョル(チェ・ミンシク)にさらに悪魔的に対応する復讐の権化スヒョン(イ・ビョンホン)役を演じ、残酷なアクション演技も披露した。スヒョン役もイメージが大事な韓流スターとしては決して容易ではない決定だったはずだ。

映画の中の凶悪犯罪係の刑事チョン・ホジンの台詞のように“人間ではない獣(チェ・ミンシク)”を相手にするスヒョンは、文字通り“口を裂く”行為まで赤裸々に見せる。ストレスを解消するための手段として若い女性をレイプ、殺人し、人肉まで食べる殺人鬼に対して、彼ら以上の残酷な手段で報復するのが映画の中の彼の役目だったためだ。

イ・ビョンホンに与えられた台詞は多くなかった。妊娠した婚約者がチャン・ギョンチョルにメッタ斬りにされ手足を引き裂かれた前半以降に、彼の悲しみは言葉では表現されない。もっぱら眼差しで語り、全身で表現しなければならないスヒョンの内面の世界だけが「悪魔を見た」で展開される。

イ・ビョンホンは監督の期待を裏切らなかった。「悪魔を見た」で最も印象に残る演技はチェ・ミンシクの狂気ではなく、イ・ビョンホンの冷ややかさだ。自身のすべてを捨てて、冷静で落ち着いてそれ以上残酷になれないほどの残酷な復讐に出る国家情報院のボディガードスヒョンとしてだ。悲しみや狂気を潤んだ目に浮かばせ、観客に問う。「あなたたちは今、悪魔を見ているのか?」と。

「王になった男」への出演も同じ観点から、イ・ビョンホンが持つ俳優としての真の価値をあらわした。神経質でセンシティブな王光海と、時と場所を選ばずおならをしてふざける道化師を行き来するとは。“ロマンスの達人”“アクションの大御所”と評価されるイ・ビョンホンが喜んで選ぶような役ではないというのが一般の考えなら、いざ本人は「シナリオを本当に楽しく読んだ」と出演の理由を語る。

「王になった男」を見ていると、イ・ビョンホンは消え、光海とハソンだけが見える。王と賤民という月とすっぽんほど差のある二人の人間を同時に見ながら、二人を演じる俳優が一人であるという認識は映画の前半からすっかり消え、ストーリーに集中させるようにするのは俳優イ・ビョンホンのパワーだ。

もう一つ、彼の声。俳優の演技は体だけでするものではない。眼差しや台詞一つだけで千変万化させるのが本当の俳優だ。光海に似ていくハソンの言葉遣い、結局光海を凌駕するハソンの叱咤。ドキュメンタリーのナレーション経験も多いイ・ビョンホンの声とトーン、感情移入がなかったなら本当にこなしにくい役柄だった。

記者 : ソン・ナムウォン