Vol.1 ― 「追跡者」リュ・スンス“ヒットしている実感が湧かない”

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写真=マイデイリー DB
最近話題のドラマと言えばSBS月火ドラマ「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)を外しては語れない。「追跡者」は、キャストの好演によるリアルな緊迫した展開や、時宜性によって形成された共感などにより月火ドラマの視聴率第1位(以下、AGBニールセン・メディアリサーチ全国基準)を記録している。

俳優リュ・スンス(41)は、「追跡者」で正義を具現し、娘と妻を失った刑事ペク・ホンソク(ソン・ヒョンジュ)を助ける検事チェ・ジョンウ役を演じている。これまで映画20作品、テレビドラマ10作品に出演してきた彼だが、注目され始めたのは最近のことだ。視聴者は、正義のために一生懸命に戦うリュ・スンスからカリスマ性を感じるとともに、ドラマの中のソ・ジウォン(コ・ジュニ)との小さなロマンスではお茶目な一面を感じることができる。


「『追跡者』のヒットは、まるで予想できなかった」

最近、マイデイリーとの取材に応じたリュ・スンスは、ドラマの中の検事チェ・ジョンウのようなビシッとしたスーツを着て現れた。だからだろうか、ドラマの検事役がよく馴染んでいた。前日放送された「追跡者」は視聴率20.7%で月火ドラマの1位を記録したが、リュ・スンスはまだ実感が湧かないといった様子だ。

「このドラマの撮影に入るとき、期待せずに撮影を始めました。実際、世間で話題になっていても実感が湧きません。僕が出演した作品は、大ヒット作が多くないからか、しっくりこないですね。何よりもドラマに出演することにした一番の理由は、ソン・ヒョンジュさん、キム・サンジュンさんたちと共演してみたかったから。彼らとともにプレッシャーを感じず気軽に演じてみたかった。また、演出のチョ・ナムグク監督も多くの俳優が一緒に仕事をしてみたいという監督です」

彼の言葉のように放送スタート初期までは、「追跡者」のヒットを予想する人は多くなかった。その最大の理由としてトップスターが出演していないことが挙げられる。演技が上手い俳優とトップスターは明らかに違う。このドラマには、ソン・ヒョンジュ、キム・サンジュン、パク・グンヒョンら、演技派俳優が出演しているが、華やかな韓流スターは出演していない。この矛盾とも言える世の中の常識をこのドラマは、良い意味で裏切っている。

「『追跡者』が人気を得た一番大きな理由は、脚本を手がけたパク・ギョンスさんにあると思います。先生は、台本を本当によく仕上げてくださって、どんな俳優でも上手く演じられるようなシナリオを書いてくれるんです。このドラマでは、埋もれてしまうキャラクターが1人もいない。ソン・ヒョンジュ、キム・サンジュン、パク・グンヒョン、キム・ソンリョン先輩たちが、しっかりとした土台を作ってくれているおかげだと思います。僕は、お膳立てされたところにくっついて行っているような感じです」

このドラマでは、リュ・スンスをはじめ、演技派俳優が数多く出演している。彼らは、カメラが回っていないときでも輝きを放っている。リュ・スンスは、「追跡者」の撮影現場の雰囲気を尊敬の念を込めて伝えた。このドラマの出演者の好演は、弛まぬ努力にあった。

「このドラマでは、キャストがNGを出しません。ものすごくセリフの長いシーンでもNGを出さずに演じる。その評判が広がってほかのドラマの制作スタッフが、『追跡者』の撮影現場を見学にしに来るほどでした。ソン・ヒョンジュさん、キム・サンジュンさんはもちろん、ベテランのパク・グンヒョンさんでも力を抜いて演じる人は1人もいない。先輩方がそうなので後輩の僕らは、手抜きなんかできない雰囲気なんです」


「弁護士、検事、医師……僕って知的に見えるのかな?」

リュ・スンスは、前作のKBS連続ドラマ「あなただけよ」で歌う弁護士キ・ガチャン役を好演した。キャラクターの重さは違うが、彼は弁護士役に次ぎ、ソウル地方検察所の検事役など、相次いで法律関連のキャラクターを演じている。“知的なイメージ”という質問にリュ・スンスは、笑った。

「弁護士、検事だけでなく医者も2度演じたことがあります。インテリな職業が似合っているんですかね。CMもラーメン、コーヒーなどのオファーは入ってこなくて、すべて金融関係のCMでした。これは、僕の実際の姿とは、まるで違うイメージで……ハーフパンツ姿で気軽にどこでも行くタイプなんですよ。今着ているスーツも実は結構窮屈なんです」

スーツが窮屈で検事役と実際の姿が異なると言う彼だが、その演技はリアルだ。ドラマで、チェ・ジョンウ検事の裁判が始まるときの姿とペク・ホンソクを助けるのときの姿では、それぞれ違う印象を与え、お茶の間の視線を集めた。正義を具現する検事として大統領選挙の有力候補であるカン・ドンユン(キム・サンジュン)への憤りは感じなかったのだろうか。

「カン・ドンユンへの憤りは、当然感じています。簡単な例を挙げると、大学病院に行ってもコネクションがあればすぐに診察してもらえたりしますよね。一般の人は、朝早くから来て何時間も待たされているのに。そんな金と権力は、虚像のように思えます。誰もがそれを手に入れたいと必死で努力するけど、平凡が一番ですね」

10日放送の「追跡者」でチェ・ジョンウ検事は、ソ・ジウォン(コ・ジュニ)記者に「1時間以内に戻るから会いたくても我慢」と話し、2人のロマンスの始まりを伝えた。無関心なようできちんと気にかけてくれるチェ・ジョンウ検事の姿に視聴者は、張りつめた緊張感が走るドラマの中に小さな安らぎを感じていることだろう。

「チェ・ジョンウ検事は、こう言ってました。『あの子は気に入っているんだけど、家柄が気に入らない』と。これからどう展開していくのかは、誰にもわからない。個人的には、上手くいってくれると嬉しいですね。ソ・ジウォンは、富と権力の中で育った人物ですが、チェ・ジョンウ検事と上手くいって、人生を悟るきっかけになってくれるといいなと思います(笑)」

記者 : チェ・ドゥソン