「蜜の味」キム・ヒョジン ― 最注目を浴びる理由とは…

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【キム・ヒョジン考察レポート】“鳥は殻を破って、キム・ヒョジンは先入観を破る”

こんな言い方をしていいかどうか分からないが、女優キム・ヒョジンは立派に育った。また、今回の映画「蜜の味 テイスト オブ マネー」で演じたユン・ナミも立派に育った。「蜜の味 テイスト オブ マネー」の前作である「ハウスメイド」のあの子供が成長して、お金に毒された自身の家族を冷静な目で見る女性になった。

同じ年頃として、女優キム・ヒョジンに対しては人一倍愛情を持っていたのかもしれない。CMでは可愛くはつらつに映っていたスター、キム・ヒョジンは、いつの間にか内面の感情を表現する存在感のある女優になっていた。

やっと本来の姿を取り戻したのだろうか。「蜜の味 テイスト オブ マネー」のインタビューで会ったキム・ヒョジンは以前より和やかに見えた。女優として自身の立ち位置を見つけつつあるようであった。そのためか、映画「恥ずかしい」の脚本が手元にきた時、嬉しかったという彼女の言葉には心がこもっているように思えた。

「蜜の味 テイスト オブ マネー」は露出ではなく感情表現

予想外の決定だった。去年、映画「恥ずかしい」の公開と、俳優ユ・ジテとの結婚が報道されている状況で、キム・ヒョジンは「蜜の味 テイスト オブ マネー」の撮影中であった。

「本当に忙しかったので結婚してから活動しようと思っていましたが、会社から台本をもらいました。読んですぐこれだと思いましたし、イム・サンス監督でしたし、役柄の魅力が強く感じられたので、やりたい!と思いました。ユン・ナミの目線が重要な作品だと考えました。お金の誘惑を感じながらも誘惑されない人物。だから自分と他の人物をちゃんと見つめることができるんだと思います」

知られている通り、「蜜の味 テイスト オブ マネー」はお金の力を直視する一方で、俳優の異例の露出が話題となった作品でもある。視覚的なイメージが強い作品、特に露出が中心となる映画は固定した枠にはまりやすい。キム・ヒョジンにとって露出より大変だったのは感情の表現ではなかったのだろうか。

「わぁ、理解していただいてありがとうございます。皆、露出についての質問ばかりで……。ナミはあまり感情を表に出さないキャラクターです。冷たそうに見えても心の中には痛みも持っています。怒って非難できる状況なのに、監督はそのような感情を無くしたいと望んでいて、それに従い演技しました。だからと言ってナミが怒らないわけではありません。その点を表現するのが課題でした」

大きな目を見開きながら喜ぶキム・ヒョジンは、役柄について「非常に強烈ながらも真っすぐな感じでした。でも、他のキャラクターがあまりにも強いので、(ナミは)比較的特異な感じは少ないと思います」と述べた。

はたしてそうなのだろうか。よく“ポテンシャルが爆発した”と言うが、可能性と潜在力を秘めていた人物が実力を発揮したときに使う言葉である。映画「蜜の味 テイスト オブ マネー」では、キム・ヒョジンのポテンシャルを存分に味わうことができる。


忘れていたN世代スター、キム・ヒョジン「過ぎてしまえば、“あのときは大変だったな”と思う」

インタビューに応じるキム・ヒョジンを見ながら、以前のCMスター、キム・ヒョジンの可愛い姿を思い出した。生き生きとした目に、当時のはつらつなエネルギーが映っていたためである。N世代(Net Generationという意味で90年代末から2000年代初めに浮上した新世代のことを指す)の話をしたら、恥ずかしいと笑う。同じ時代を生きてきた同世代として、当時について質問をした。

「少しぎこちなかったと思います。『N世代?それって何ですか~』なんてセリフを言いながら(笑) とにかく、その世代を代表したという説明がつくのは意味のあることですね。その時一緒に活動していたモデルや俳優に会うと、当時の思い出を語ったりもします。その時着ていた服を破いて持っている人もいます」

キム・ヒョジンをスターダムにのし上げた代表的なCMがあった。今はなくなったあるキャリアの広告。全国民を電話ボックスに引き留めておいた“ポケベル”を可愛く紹介していたキム・ヒョジンの姿であった。聞いてみたら、キム・ヒョジンもポケベルの最後の世代だったという。

「キム・ミニさんとその広告を撮影したんですけど、それが評判になって一日中インタビューを受けたりもしました。当時メディアがあまりなかったじゃないですか。その分、関心も高かったと思います。その時は、インタビューも周りの環境も何もかもが新しくて。新聞の一面に私が載ってたら、スクラップもしました(笑)」

人々から注目を集めていた当時、視聴者としてキム・ヒョジンを見るたびに、そのうち疲れるんじゃないかと思っていた。ひとつのイメージだけが強かったためである。キム・ミニ、コン・ヒョジン、シン・ミナ等とともに当時有名だったモデル兼新人女優のキム・ヒョジンにとって、そのときをどのような記憶しているだろうか。そのときのCMが未だに記憶に残る。

「その時は女優としての意識があまりなかった状態でもあったし、幼かったですね。CMで演技をしましたが、あまり楽しいとは思いませんでした。主に、ドラマをしましたが、人々が私に、はつらつであどけない感じを求めていたようです。それがどういうものなのかも分かりませんでした。末っ子のような感じだったかな?過ぎてみたら“あのときは大変だったな”」と思います。もちろん、時間が経って年をとると自然と(固定した枠から)脱皮できたりもしますが、それが難しかったです。私たちの場合はそのような先入観が強く印象づけられていたような気がします」

それにもかかわらず、キム・ヒョジンは「わざわざ何かをやり遂げようとしなかった」としながら自然さを強調した。「その時、その歳で見せられる姿というのもある」と言う。演技について知るようになって気づいてくるものもあるというキム・ヒョジンに、今の覚悟について聞いた。

「どうしても、幼い時よりは気持ちが変わっています。新しい作品、自分の新しい姿を見せられる作品がやりたかったんですが、機会はあまりありませんでした。休むときもありましたし。今は少しずつオファーが来ています(笑) イム・サンス監督が、私がジーンズ姿で入ってくるのがよかったとおっしゃいましたが、どんな姿だったか気になりますね。監督が考える私の魅力を『蜜の味 テイスト オブ マネー』にたくさん入れてくださったんじゃないかと思います」

キム・ヒョジンの深みの増した魅力をたっぷり味わうため、ぜひ「蜜の味 テイスト オブ マネー」を見ようと思った。インタビューでは一部しか感じられないキム・ヒョジンの真価を映画で味わうのも良さそうである。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル