イム・スジョンが変わった?「いや、慣性を拒んでいるだけ……」

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女優のイム・スジョンが変わった。初心を忘れたわけではなく、役者としてさらに堅固に、目指すものが明確になったという意味だ。もちろん彼女のことをよく知っている知人でない限り、変化の幅は彼女が参加してきた作品を通じてしか計り知ることが出来ないという短所はある。

2011年「愛してる、愛してない」以降、いや、その前の「チョン・ウチ 時空道士」から変化への渇望があったと言う。自ら積み重ねてきたイメージが、自分からの意志であれ他人にからの意志であれ、意識的に作り上げられた時期があったなら、今やその中核を崩すことに挑戦したいと、イム・スジョンははっきりと答えた。

彼女の新作「僕の妻のすべて」は、おそらく最も明らかにその変化を垣間見える作品になりそうだ。大半の男性が嫌う女性像で、理路整然としている毒舌家の妻を演じたのは、それなりの理由があってのことだった。

彼女がある有名な化粧品ブランドのモデルだからではないが、彼女の変化をメイクに例えてみよう。今のイム・スジョンは、洗顔をしてローションで肌を整え、ベースメイクの段階まで済ませたと言える。他の言葉で言えば、今やモードのようなポイントメイクも可能な状態にまで準備が出来ているとでも言おうか。晴れた休日の6日の午後、女優のイム・スジョンにその秘訣、あるいは“変化の波”について尋ねた。


【STEP1.洗顔】イム・スジョンについての誤解を取り払おう「イム・スジョンはイメージで食べていく女優?」

もしかして、イム・スジョンを未だにスイートで神秘的なオーラをかもし出す女優としてだけ認識しているのではないだろうか? あるいは、多くのCMに出演した“業界のスター”と認識しているかも知れない。

「本当にそうなんですよ。長編の商業映画もやりましたし、短編の自主制作映画も撮り続けています。CMクイーンですって? 実は、1つの商品を長期間やっているだけなんです。ノートパソコンとか、化粧品とか……そんなものを長期間やってるとそう見えるようですが、CMにだけ注力したわけではありません。今もそうです。作品を選択することに負けないぐらい、広告も慎重に判断して選択しています。2つともバランスよく並行して行かなければならないという思いがあります。適切にと。でも、このバランスを取るのが非常に難しいです。イメージが張り付いてしまえば、作品よりCMに注力していると言われるじゃないですか。両方ともバランスを取りながらやりたいんですが、欲張りなのかもしれません(笑)」

イム・スジョンが選んできた作品を見れば、ジャンル的な性格の強い、それぞれユニークな個性を持つ作品であることが分かる。彼女なりの、変化への意欲と、彼女の明確な主観が垣間見えるところだ。

「20代の時は、様々なジャンルに挑もうと思っていました。一緒に仕事をした監督も、新人の監督さんも、有名な監督さんもいましたし。それで他人がやらなかった作品もあると思います。20代の頃は、女優イム・スジョンと言えば思い浮かぶものを積み重ねる過程でしたが、今はもう積み重ねてきたものをぶち壊す作業?(笑)」


【STEP2.ベースメイク】「僕の妻のすべて」は多彩な演技のスタート地点!

イメージをぶち壊すのは、自分が成熟する感じがしたという。簡単な言葉で言えば、多彩さに対する挑戦ではなかっただろうか。そのような意味で、「僕の妻のすべて」はイム・スジョンにとって大きな変化があった。まず彼女をひどく苦しめたのは、膨大な量のセリフである。

「セリフすべてがきつかったです。あまりにも多すぎて、編集でカットした部分もあります。もう一度こんなにセリフの多いキャラクターが演じられるでしょうか。またセリフが、それなりの論理を持っているんです。日常の言語ではなくて、相手を制圧するためのものだったので、問い詰めては掘り下げる、筋の通ったセリフで余計にきつかったです」

イム・スジョンの言葉通り、今回のキャラクターは本当に強い。家の中では首のゆるくなったTシャツにボトムスを履かないようなファッションは基本。夫が用を足しているトイレにまで押し入って、ついには青汁を飲ませるシーンまである。ジョンイン式の内助なのだ。また、家の中ではなりふり構わずおならをして、全身を掻きまくる。もちろんイム・スジョンだから、そのような姿でも魅力的に映ってはいるが。

また今回の役柄は、結婚はしているものの、ちょうどイム・スジョンと同じような年頃のキャラクターだ。実際の歳に近いキャラクターは初めてだと言う。30代中半に向かう女性の感情、状態を映画でお見せできたようで嬉しいとも話した。イム・スジョンにどうせなら30代初めで行こうと言っても、自分は30代半ばだと言って聞かない。こんな女優は初めてだ。

セリフの量と共に、今回の映画でつきつけられたもう一つの課題は、他でもなく夫に愛されない妻の持つ感情。それは、寂しさを心に抱え込み、映画で表出する過程だった。実は映画でジョンインが、休まず夫にお喋りをして、お隣と言い争う姿は、寂しさを表す彼女なりの表現だったのだ。

「映画の後半に差し掛かって初めて、私の感情が表されます。実は、ジョンインの膨大なセリフの中に、寂しさが潜んでいるんです。映画の最後の部分で、どうして私がそんなにお喋りをして、家の中で掃除機とミキサーを休まず回していたかが分かります。

幸い、夫のドゥヒョン(イ・ソンギュン)とジョンインを誘惑していたソンギ(リュ・スンリョン)とのシーンを撮影した後にその部分を撮ったので、感情を積み重ねることが出来ました。私が泣きながら『嘘をついて近づかないでください。皆殺しちゃうから!』というセリフを叫ぶんですが、撮影していたスタッフも動揺していました(笑)」


【STEP3.ポイントメイク】広まった枠の中で、さらに思う存分演技せよ!

自ら、変化への不安はないと堂々と話すイム・スジョンだった。イム・スジョンで思い浮かぶイメージをぶち壊す楽しさがあると。だからだろうか。イム・スジョンは最近目に見えて出演依頼が殺到していると“公に”自慢した。アクションも、ラブコメディも、スリラー作品も依然としてオファーされると言う。その中には、濃密なメロドラマも結構あるそうだ。是非にとオススメまではしないが、引き止める気もないと言うと大笑いした。

「近くで私のことを見る関係者の方々は、そんな想像をするみたいです。検討し続けています。ドラマも前向きに考えていますし。やりたいものがあったらやると思います。濃密なメロドラマ? 体を鍛えて、一度やってみましょうか!(笑)」

参考までに「僕の妻のすべて」を撮りながら結婚に対する考えも変わったという。全く考えていなかったが、それなりに結婚を前向きに考えるようになったのだ。今すぐ予定はないが、良い内助とはどういうものか、相手をどのように愛すべきか、などについて考えるようになったそうだ。だといって映画のジョンインのように、トイレにまで押し込むイム・スジョンは想像しないで欲しい。相手の隠密なプライベートは守ってあげたいらしい。

男の観点から観たこの映画は、近い存在である程おろそかにしがちな男、または人間のよからぬ習性に対する反省文のように見えた。イム・スジョンに彼らへの厳しいアドバイスを頼んでみた。

「夫婦でも、恋人でもそうですが、もう自分の人になったと思った瞬間から、男性の方は相手をそれ以上愛そうとしないみたいです。でも、その女性は他の男性にもっと愛され得る存在だということを意識して、もっと良くして欲しいです。今隣にいる人に、もっと良くしてね!」

インタビューの終盤、イム・スジョンに映画「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」(2007)の話をした。彼女が是非やってみたいと思う題材の映画だった。インタビューの度に質問されがちな、“是非やってみたいキャラクターは?”という問いに、この答えを貫いてきたのだ。彼女のために祈りを捧げた。イム・スジョンが演じられる、女性、または女優の人生を描いた作品がありますように、と。

「そうなんです。『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のように、女性の人生を描いた作品を是非やってみたいです。扮装すれば、10代から50代まで全部表現出来ると思いますけれど、どう思いますか」

デビューしてもう14年という言葉は、まだ14年という言葉に言い換えよう。この女優が表現する、また違う美しさに期待していると、改めて胸がドキドキする。まるで、インタビューで初めて対面した時のように。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン