K-POPの中心を訪ねて ― 性教育にも細心の配慮を配るJYP

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ソウル特別市江南(カンナム)区、清潭洞(チョンダムドン)プリマホテルの向こう側にあるカフェTOM N TOMSとサーティワンアイスクリームの間の路地を入ると、5階建てのビルがある。アイドルグループ2PMや2AM、Wonder Girls、miss A、イム・ジョンヒ、JOO、San Eの写真で飾られているこのビルがJYPエンターテインメント(以下JYP)の本拠地である。ビルの向こう側のダンキンドーナツのテラスは、所属アーティストをひと目見ようと集まった日本のファンや制服姿の女子学生でにぎわっており、エンターテインメント街の風景そのものだった。

記者は振り返り、ビルの入り口に立った。自由に出入りすることができないようにセキュリティーの装置がついていた。ベルを押すと、1階の職員が迎えて応対してくれ、JYPのチョン・ウク代表取締役と会うことができた。彼は笑顔で挨拶をし、「僕の部屋にどうぞ」と案内してくれた。事務室に上がる2階の壁には、所属アーティストのアルバムのジャケットが並べられていた。

JYPのビルは、2階から使えるようになっている。1階は駐車場として使えるようなスペースになっている。2階には代表取締役の部屋と会議室がある。5階建てのこのビルには、作曲家の作業室やレコーディングスタジオ、メイクアップルームなどがある。階段の下にある地下のトレーニング室は現在リフォーム中で、今は他のビルにトレーニング室があるという。

K-POP界のスターが多数所属している事務所の代表取締役の部屋は、思ったより小さく質素だった。机の前にはテーブルと椅子が4つあり、小さな冷蔵庫には色々な種類のドリンクがぎっしりと詰まっており、彼の日常が感じられた。チョン代表取締役がアイスコーヒーを勧めてくれた。普通の白い紙コップではなく、JYPという文字が細かく入っている茶色の紙コップから、JYPという会社の自信と配慮をうかがい知ることができた。

コーヒーを飲みながら所属アーティストについて会話をする中、チョン・ウク代表は「うちの子達は少し変ですね。男子6人で同じ家に住みたいのかな?僕だったらあの年頃は一人暮らししたいと思うのに」と話した。2PMの話だった。2PMは現在、事務所近くのマンションに住んでいるが、このマンションの敷金をメンバーで分割し、それぞれが6分の1ずつ出したという。Wonder Girlsは現在合宿所ではなくそれぞれの家で暮らしている。

「マネージャーの仕事を増やさないためにも車を購入しろと言っても、聞かないんです。テギョン(2PM)は最近自転車に乗って街を走るのが好きみたいです。時々、COEX(韓国で有名なショッピングモール)のゲームセンターで目撃されることもありますし。あ、最近は横断歩道で事故に遭いました。怪我はしていませんが」と話す彼は、「ソヒ(Wonder Girls)はまだ父の車に乗っています。芸能人なんだから窓のガラスを黒くするなり考えろと言ったら、最近やっとそうしたみたいです」と付け加えた。裏話をしているようで、褒め言葉を並べているようだ。素朴な生活をしている“我が子たち”がずいぶん誇らしげな様子だった。

チョン・ウク代表は映画「建築学概論」に出演したスジ(miss A)を褒めることも忘れなかった。「スジは、男性だけでなく女性からの人気も高いです。可愛いふりをしないからでしょうか?テレビでシルム(韓国相撲)もしますし(笑) スジの本当の姿が、映画にもそのまま盛り込まれているんです。ありがたい限りですね」と褒めるチョン・ウク代表。「CMのオファーも多いですか?」と突然聞いてみると、彼は笑顔で答えてくれた。良いことは隠し切れないようだ。

JYPのトレーニング室は社屋とは違う雰囲気だった。社屋は多少事務的な感じだったが、トレーニング室には自由な雰囲気が漂っていた。白の壁にシンプルに書かれているJYPという文字が目に入り、白のライトで飾られた黒の壁も印象的だった。

トレーニング室には未来の2PMやWonder Girlsを夢見る若者達が休む間もなく汗を流していた。JYPの練習生は30~40人ぐらい。1年に2度の公開オーディションがあり、2週に1回事務所内でオーディションが開かれる。オンラインオーディションや地方を回るツアーオーディションなどを合わせると、1年に6万人ほどがオーディションに参加しているという。1次選考を終え、チーム長との面談、経営会議を経てパク・ジニョンさんが練習生の最終選考を行う。

練習生は平日の放課後にレッスンを受ける。授業の内容の種類は70以上。ジャンル別のダンスはもちろん、発声やスタイルの異なる6人のボーカルトレーナーが練習生のトレーニングを担当している。月末の評価を通じて足りない部分をチェックし、専門の相談役がいて心理的なケアも心がけているという。韓流スターとして活躍することを視野に入れ、外国語の勉強も欠かせない。また外国人の練習生にはハングルを教えている。2PMのニックンもここでハングルを学んだ。

miss Aのメンバー、スジがSBSバラエティ番組「強心臓」で「うちの事務所では、性教育をしてくれる」と述べ話題になったことがあるが、実際JYPでは性教育専門家であるク・ソンエさんを招き、性教育を行っている。こうして練習生たちにかかる費用はひと月1億5000万ウォン(約1079万円)から2億ウォン(約1438万円)に達する。衣食住をすべて提供するためだ。「練習生にかける費用が最も多いですね。一般の企業に例えたら、R&D(研究・開発)費用とも言えるのでしょうか。無料でトータルの授業を受けさせています」と話す彼からは、JYPの自信が溢れ出ていた。
 
練習生が芸能人としてデビューするまでには4つのプロセスがあるという。ここでは長きに渡る準備期間、練習生プロジェクトを経てこそスターになれると言える。現在活動している2PMや2AM、Wonder Girls、miss Aは皆この厳しい過程を経ている。それらのスターに共通する、JYPが最も重点を置く基準とは何だろうか?それは「成長の可能性」だという。

「声が独特なのかがもっとも重要です。しかし、今の姿ではなく声色の成長の可能性を高く評価しますね。ダンスも同じです。体を動かすことが苦手だとか、リズム感のない人は難しいでしょう。ですが、ダンスは知らなくてもリズムを知っている人がいます。その人は成長の可能性がありますね。そしてもっとも重要なのは、情熱です」

見学を終え、玄関から出ると向こう側にいたファンたちの瞳が輝いた。好きなスターが出てくるのではないかと注目をしている姿が印象的だった。“私生ファン(サセンペン:芸能人の私生活まで追いかけるファン)”が社会問題となっているこの頃だが、それについてチョン・ウク代表は「何ですか、それ?」と驚いていた。「うちのファンはほとんど20~30代なんです。アイドルもですが、ファンたちもなぜか大人なんですよ」と豪快に笑っていた。その笑いのおかげだったのか?JYPのビルから出た後、足取りがいつにも増して軽く感じられた。

記者 : チェ・ミンジ、写真:キム・ジェチャン