映画界の“小さな巨人”シン・ハギュン VS イ・ボムス

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写真=TVレポート DB
韓国のポータルサイトに公開されているシン・ハギュンの身長は175cm、イ・ボムスは171cmだ。誤差はあるかもしれないが、最近の若い俳優の中ではあまり長身とは言えない。

しかし、二人を外見だけで評価してはならない。“小さな巨人”という言葉を聞けば自然と頭の中に浮かぶ歌謡界の大御所、チョー・ヨンピルやキム・スチョルに匹敵するほど、二人が映画界に放つ影響力は大きい。彼らの素晴らしい演技力がそれを裏付けている。

数年前から彼らは、映画館のスクリーンとお茶の間を行き来しながら輝かしい活躍を見せている。特に最近本格的にドラマに出演しているシン・ハギュンの快進撃は目覚しい。彼が主演を努めるKBS 2TV月火ドラマ「ブレイン 愛と野望」は、「シン・ハギュンの、シン・ハギュンによる、シン・ハギュンのためのドラマ」と言っても過言ではないほど彼のユニークな存在感が際立っている。

もちろんストーリー構成や丁寧な演出も同ドラマの成功の要因だろう。演技力だけを見ると、シン・ハギュンに勝るとも劣らない準主役、チョン・ジニョンの存在も「ブレイン 愛と野望」をさらに輝かせている。しかし、ありのままのシン・ハギュンをそのままキャラクター化したようなイ・ガンフンは、映画「約束」で主演のパク・シニャンに匹敵する存在感を見せたチョン・ジニョンの熱演が色褪せるほど強烈だ。

一足遅く月火ドラマの競争レースに参加したSBSドラマ「サラリーマン楚漢志」のイ・ボムスの活躍は、“ブ曜日(ブレイン 愛と野望+曜日)”という造語まで生み出すほど、月・火曜日の夜には右に出る者がいなかったシン・ハギュンの牙城を、少しずつ崩している。「サラリーマン楚漢志」は、話が進むにつれ「ブレイン 愛と野望」の視聴率を少しずつ奪い、大きな跳躍を図っているのだ。同ドラマで最も大きな貢献をしているのは、もちろんイ・ボムス。正確に言えばイ・ボムス独特の馴れ馴れしいコミカルな演技だ。

映画界にイ・ボムスという存在を刻んだ初めての作品としては、映画「なせば成る」(2000年)を挙げることができる。イ・ボムスは、三流ヤンキーのようなキャラクターを、鳥肌が立つほどリアルに演じきり、映画関係者に強い印象を残した。

ところで、イ・ボムスの魅力が最も引き立っている作品は何だろうか。

ここで少し俳優ファン・ジョンミンの話をしてみよう。ファン・ジョンミンの演技力と魅力が引き立っている作品を選ぶとしたら、ホームレスのリーダー役を演じた映画「ロード・ムービー」、鳥肌が立つほどリアルに嫌らしい三流のゴロツキを演じた映画「甘い人生」、そして卑怯で善悪の区別ができない短気な警察を演じた映画「生き残るための3つの取引」ではないだろうか。

だとすると、イ・ボムスはなんと言っても、映画「シティ・オブ・バイオレンス」だろう。馴れ馴れしくて、忠清道(チュンチョンド)出身の流暢な忠清道弁を自在に操り、カネのためなら血も涙もない忠清道のゴロツキ集団の親分を演じた彼の演技は圧巻だった。同映画の主人公はリュ・スンワンとチョン・ドゥホンの二人だったが、本当の主人公はイ・ボムスだったと言っても過言ではないほど彼の演技力は圧倒的だった。

職業や服装は「シティ・オブ・バイオレンス」の時と変わったが、「サラリーマン楚漢志」のイ・ボムスは「シティ・オブ・バイオレンス」の延長線上にある。限りなく純粋だが、その明るい純粋さの裏に秘められている生存本能と勝負欲は、虚々実々で外柔内剛のイ・ボムスだけが描けるものだ。

一方、シン・ハギュンは顔そのものが“悪魔”だ。映画「悪魔を見た」のチェ・ミンシクが、盲目的で他のことは目に入らない“悪魔”なら、「ブレイン 愛と野望」のシン・ハギュンは自身のトラウマやコンプレックスを乗り越えるために必死で、時には卑屈な笑顔で自身の野心を抑える傷だらけの“悪魔”だ。

時にチェ・ミンシクは、限りなく優しいおじさんの顔にもなる。シン・ハギュンも演出によっては、とことん純粋な良い人の顔に変わる。しかしシン・ハギュンの「分からない」と言わんばかりの表情の裏には、「本当は十分に分かってる」という刀が隠されている。

意図的なものかどうかは分からないが、このような“演技の大御所”シン・ハギュンとイ・ボムスが現在、お茶の間で激突している。

イ・ボムスがマイルドで温かい“お湯”で視聴者に浸透しているとしたら、シン・ハギュンは怒りと憎しみの“炎”でお茶の間を沸かせている。二人の演技のスタイルやキャラクターは真逆ではあるが、棒読みの俳優に飽きていた視聴者には二人の激突が“衝撃”でもあるのだ。鳥肌が立つほどの演技力に、視聴者は「これが本物の演技だ」と言って、二人を見るためにテレビの前にどんどん集まってくるだろう。

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最近、映画市場の低迷とあいまってテレビのチャンネルの増加や、コンテンツの飽和の中で、ドラマの質が著しく上がっている。このような環境の変化が、シン・ハギュンとイ・ボムスのような映画界の“ナンバー2”をお茶の間の“ナンバー1”にしたことは誰も否定することができない事実だ。

もちろん彼らは外見や人気だけを見ると、映画界での確実な“ナンバー1”とは言えない。チャン・ドンゴンやイ・ビョンホン、チョン・ウソンと肩を並べることはできないのだ。

しかし、ドラマならば話は違う。作品によって存在感はさらに増大する。

「ブレイン 愛と野望」のシン・ハギュンは近くて遠い、綺麗でありながらも醜い、行かない方が良いが行くことになる病院のイメージにぴったりだ。また、「サラリーマン楚漢志」のイ・ボムスは、社会の縮図である会社のひ弱な新人にぴったりだ。

映画を見るにはお金も手間も時間もかかるため、一緒に観覧する人とあれこれと選んだり、見た後に吟味をする楽しさや余韻が残る。しかし最近のドラマが楽しいのは、毎週放送される地上波3社の月火、水木のミニシリーズドラマを比べながら吟味できるからだ。それは映画とはまた違う次元のものなのだ。

この楽しみ方ができるのは、最近放送を終了した「根の深い木~世宗(セジョン)大王の誓い~」のハン・ソッキュをはじめとした、シン・ハギュンやイ・ボムスのような“演技の達人”が存在するからだ。

記者 : ユ・ジンモ