「狩り」チョ・ジヌン、義理堅さと暖かい心を備えた“好きにしかなれない”俳優

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写真=ロッテエンターテインメント
“アジェファタール(アジョシ(おじさん)+ファムファタール(魔性の男))”という二つ名に間違いはなかった。俳優チョ・ジヌンはさらに磨きのかかったルックスに男らしい義理堅さ、周囲の人々を配慮する暖かい心を持った“好きにしかなれない”俳優だった。

チョ・ジヌンは「狩り」で正体不明の猟師連中のリーダドングン役を演じた。双子のミョングン役も担当して一人二役を務め、冷たい悪役のカリスマ性をスクリーンを通じて思う存分アピールした。

丈夫な体に悪役のオーラまで、外見だけ見ると想像もできないが、チョ・ジヌンは今回の映画撮影中に低体温症で苦しんだ。寒さが骨まで染みる日、夏でも氷谷と呼ばれる谷の中に入っていった。服の中にスーツを着込んだが、氷のように冷たい水が肌に入り込んだ。午前から始まり午後まで行われた撮影、スタッフたちは温水をかけるなど、俳優の体調が悪くならないよう努力を惜しまなかったが、この日チョ・ジヌンは低体温症で苦しんだ。寒さで苦労したエピソードについて話す中で言及したこの事件は、彼にとってはただの武勇談だった。

「実はそのシーンを撮影した時のことをあまり思い出せないんです(笑) 苦労しない映画はありませんが、当時低体温症に苦しみました。午前中に水の中で撮影し、昼食の時間になりました。食事はとらなくても、水に濡れたスーツを脱いで乾燥した後に着るべきだったのですが、それが面倒くさくて濡れたスーツを着ていました。ドングンのエンディングが終わった後、血圧が少し上がりました。俳優の知人がその周辺に住んでいるんですが、水炊きを作ってくれると言われて行きました。おかずを運ぶことさえできませんでした。その知人に『体の調子が悪そうだが、そのお酒を飲んでみて』と誘われました。それを飲んだら体の調子が良くなりました。『これ、何のお酒ですか?』と聞きながら、飲み続けました。そしてほとんど回復しました。手作りのお酒がたくさんあって、多様な種類のお酒を飲みました。翌日には平気になりました。その知人に感謝しています。今は大丈夫です(笑)」

冗談を交えながら撮影を振り返っていたチョ・ジヌン。しかし、インタビューが進むにつれて本心を語りだした。脱ぐのが面倒くさかったという言い訳は、男らしい自分の気持ちを何気ないように表現するためだった。

「僕が水の中に入っていると、スタッフたちは水を運び続けていました。バケツを持ってくるんですが、山の中だからすごく滑りやすかったんです。僕がこれを早めに終わらせないと『誰かの大事な子供たちが危なくなる』と思いました。少しでも早く投入できるように頑張りました。撮影時間は決まっており、装備も返納しなければならない状況でした。より早く判断して行動すべきだと感じました。そのように行動したら、スタッフたちの仕事がより簡単になるからです。今後はより経済的に撮影しようと思いました」

恥ずかしそうにに本当の理由を明かしたチョ・ジヌンは、現場で周りの俳優だけではなく、スタッフたちにも優しい俳優として有名だ。「皆で苦労しているから」というのが、彼が周りの人たちに気を配る理由だった。

「時には現場で問題が起きることもあります。それぞれが各分野の専門家だが、自身の分野をより投影したがってるからです。その時には俳優が介入するのがいいと思います。またスタッフが大変な時には一緒にお酒を飲んだりします。現場で気まずい関係になると映画の撮影にも悪影響です。どうせ同じメンバーで、皆この映画を作るために家族とも連絡せず苦労しています。良い作品を作って観客たちに公開しようとする目的は同じだから、仲の良い関係を維持する方がいいでしょう。男性向けの映画にたくさん出演したから、男たちのコミュニケーションに対しては詳しいです(笑)」

山の斜面で繰り広げられる追撃戦、度重なる追撃シーンの撮影中に、吐いたり、猛烈な寒さに苦労したりしたが、チョ・ジヌンにとっては全部“普通の映画”と同じく、そして“当然な”苦労だった。このように最善を尽くして誕生した作品の数々が彼にとっては子供と同じ存在だ。

「いつも同じ気持ちです。僕はまだ子供がいませんが、親は子供が生まれた時、目と鼻、口は全部あるのか、指の数を確認するでしょう。その気持ちが分かる気がします。緊張したという表現とは違います。目と鼻、口がないといけないでしょう。その喪失感を考えてみてください。その子供が世の中できちんと生きていくのは大変です。そのような親の気持ちと同じです。『暗殺』『お嬢さん』のように巨額の制作費が投入され、様々な二つ名をつけられる映画は、優良児のように誕生します。『狩り』の話ではありませんが、予算が少ない映画はきちんと制作されても、インキュベーターに入っている感じがします。だから、より愛情を持つようになります。僕の目にはきれいに見えますが、『さらにきれいに見てください』という気持ちになるんです。そのような理由で緊張したりもします。この作品はその理由でより愛着を感じます」

チョ・ジヌンが出演した映画「狩り」は、偶然見つかった金を独り占めするため、入ってはいけない山に入った猟師連中と見てはいけないものを見てしまった猟師ギソン(アン・ソンギ)の命をかけた16時間の追撃を描いた映画だ。15歳以上観覧可で、韓国で6月29日より公開されている。

記者 : キム・ミリ