「権力に告ぐ」イ・ハニ“世の中に公開されるだけでも半分は成功だと思う”

TVREPORT |

写真=エースメーカームービーワックス
ソウル大学、ミス・コリア、ミス・ユニバース。女優イ・ハニについている修飾語だ。デビュー後、ずっとエリートのイメージが強かったイ・ハニだが、ここ数年でその評価が変わった。

映画やドラマ、伽耶琴(カヤグム:韓国伝統の弦楽器、日本の琴のような弦楽器)の独奏会などジャンルや舞台を問わず着実に努力した結果だ。映画「極限職業」が1600万人の観客を動員し、SBSドラマ「熱血司祭」のヒットで大衆的な認知度も共に上昇した。

映画「権力に告ぐ」は、イ・ハニの演技力と観客動員力への期待がピークに達した時に公開された作品だ。

「権力に告ぐ」は、ヤン・ミンヒョク検事(チョ・ジヌン)が事件の真実に迫る過程で金融業界の不正の実態と向き合って展開されるストーリーを描いた作品だ。ローン・スター(アメリカ合衆国、ダラスを本拠とする投資ファンド)に韓国外換銀行が格安で売却された事件を題材にしている。

イ・ハニは劇中で、大韓銀行の訴訟代理人キム・ナリ弁護士を演じた。理性と判断力、自身だけの確固たる信念を持っている人物だ。前作とは180度変わったカリスマ性とクールな魅力で、スクリーンを埋め尽くした。

―― 映画「極限職業」、ドラマ「熱血司祭」のヒット後、初めての作品です。

イ・ハニ: 映画がヒットし、ドラマが話題になっても私の人生が突然変わったりはしません。一日三食食べて、好きなヨガをしながら過ごすのは同じです。もちろん、女優としてヒットしてほしいという気持ちがないと言えば嘘になるけど、「権力に告ぐ」は世の中に公開されるだけでも半分は成功だと思います。税金を払っている韓国の国民として、すごく残念でした。当時なぜこの事件(ローン・スターが韓国外換銀行を売却した事件)について知らなかっただろうと思いました。そんなに若い歳でもなかったのに。

―― 映画のどこまでが事実ですか?

イ・ハニ: 一つ一つ検証しなければならないですが、まず大きな筋となっている「70兆ウォン(約6兆5000億円)の銀行が1兆7000億ウォン(約1600億円)で売却された」のは事実です。内部的に情報が操作されたのも事実です。キム・ナリ弁護士やヤン・ミンヒョク検事のような人が実際いたかもしれないけど、それは映画上で作られた人物です。

―― チョン・ジヨン監督との出会いはどんな感じでしたか?

イ・ハニ: 釜山(プサン)国際映画祭のある打ち上げで会いました。監督は私を特に気に入ってはいなかったけど、誰かが推薦してくれた感じでした。私はキャスティングだとは思っていない状態で監督にお会いしましたが、私を5分ほどじっと見ていらっしゃいました。私は生きる伝説に会えたと思って、なぜじっと見るのだろうと思いながらすごく緊張しました。一緒に仕事をしてみると、全然怖くなくて本当に少年のような方でした。青年チョン・ジヨンと呼んでいます。70代とは思えないほどコミュニケーションがスムーズにでき、私がリラックスできるように接してくださります。

―― チョン・ジヨン監督は「権力に告ぐ」についてどんな話をしていましたか?

イ・ハニ: 監督に一度「なぜ、ここまでこの話を映画にしたいのですか?」と質問したことがあります。すると、「これを映画にしないと、眠れない」とおっしゃいました。それほどの答えもないと思いました。

―― 個人的に勉強したり、取材したこともありますか?

イ・ハニ: 実はとてもシンプルな事件です。細かく探ればキリがないけど、70兆ウォンの銀行が1兆7000億ウォンで外国資本に売られ、それも韓国政府のせいで遅延され損害があったと訴訟を提起された事件です。来年裁判があるけど、国と企業が戦うと国が負ける可能性が99%だそうです。5兆ウォン(約4600億円)を国民の税金で払わなければならない状況です。

―― 伯父(国会議長ムン・ヒサン)が国会に務めていた時、国政監査でローン・スター関連の質問があったりもしました。伯父に意見を求めたりもしましたか?

イ・ハニ: そうだったんですか? 私は知りませんでした(笑)。慎重になる話ですが、家族関係であるだけで仕事や職業的につながっているところは全くありません。

―― 英語の台詞が多かったようですが、とても流暢にこなしていましたね。

イ・ハニ: 初めて見る単語、経済用語などが多かったです。それをジャージャー麺とかちゃんぽんとか、自然に口から出る単語のようにするため、とても努力しました。

―― 商業的な面白みとは関係なく、社会的なメッセージも強い映画でした。断食のシーンではセウォル号沈没事故を思い出したりも。女優としてプレッシャーはありませんでしたか?

イ・ハニ: 女優が何かを恐れ始めたら、どんな役を演じられるでしょうか。私は女優で、キャラクターに集中するのが仕事です。最大限の力を尽くして、楽しく演じるのが私の仕事です。社会的、経済的なイシューは大衆が判断すべきであって、私の仕事ではありません。

―― これまで経験した最も大きな逸脱は、芸能人としてデビューしたことだと言っていましたが、デビュー当時は今の人生を予想できていましたか?

イ・ハニ: 全く想像できませんでした。20年以上弦楽器を専攻していたけど、伽耶琴は私が持っているエネルギーよりもずっと繊細です。そのエネルギーに合わせるために、私も繊細にならなければならなかった部分もあります。私は、打楽器に向いていると思います(笑)。韓国の伝統音楽は、音を学ぶのが基本です。私は韓国の伝統舞踊も好きだったので、複合的な芸術の形に関心が大きかったです。そんな中、演技を知り、私のエネルギーを表出できるぴったりのジャンルに出会えたことが幸せでした。弦楽器で表現しきれなかったところを、完全に表せるようになりました。

―― 伽耶琴の独奏会も着実に開催していますね。とても忙しい人生のようですが?

イ・ハニ: じっとしていられる人ではないので(笑)。休みながらも頭に色々なプロジェクトが浮かんできて、何かをしなければと思っています。最近はそのエネルギーを少し和らげ、完全なゼロの状態にするために努力しています。バリ島でヨガのトレーニングを受けたり、最近は私がヨガの講義をしたこともあります。

―― 完璧なボディの代名詞ですが、大衆の視線にプレッシャーを感じたりはしますか?

イ・ハニ: いくら毎日運動をするとしても、女性なので(生体リズムの)周期があって、体がむくんだり変動があります。そんな日でも大衆の前に立たなければならない職業なので、プレッシャーは感じます。以前は常に大衆の前に立たなければならないのがストレスでしたが、最近はストレスを感じる代わりに毎日きちんと運動をしようとしています。基本的な原則に集中したら、良くないイシューも減らすことができました。

―― 最近もベジタリアンの献立をキープしていますか?

イ・ハニ: なるべくベジタリアンの献立を目指しますが、今は(完全には)やっていません。健康上の問題もあり、中止しました。ヨガのトレーニングの時、久々に完全なベジタリアンの食事をとったら、できなかったポーズができるようになりました。環境の面でも、健康の面でもベジタリアンの献立はとてもメリットが多いです。

―― 最近、SNSでの書き込みで意図していなかったユン・ゲサンとの破局説が浮上しました。

イ・ハニ: 順調に交際中です。飼って5年の犬の毛の色が変わっていくのを見て、時間が経つのが寂しいと思って書いた書き込みでした。その書き込みが、こんなにたくさんの方々にご心配をおかけするとは。SNSで、どこまで私の気持ちを分かち合うべきか悩みます。これから感性に満ちた書き込みは自制しようと思いました。

―― SNSでのハプニングもそうですが、芸能人だからこそ経験する様々なことが辛くはないですか?

イ・ハニ: 私は有名人として生きたくはありません。アーティストとして自由に生きたいです。俳優や女優たちは、ある部分においては世の中を知り尽くしている賢い人たちより隙が多いです。それが魅力でもあるけど、世の中にすべてを削られてしまうと、何が残るんだろうととても悩んでいます。

―― 次回作は決まりましたか?

イ・ハニ: 決まったと言うには曖昧なところがあります。結婚式場に入るまでは、どうなるか分からないと言うけど、作品も同じだと思います。撮影現場に入ったとしても、公開されなかったり、作品そのものが霧散する場合も多いので、明確に言うのは難しいです。

――「権力に告ぐ」はどんな映画ですか?

イ・ハニ: 以前は、私と私の家族だけが幸せでも大丈夫でしたが、今は自分一人だけが幸せでいることはできない時代になったと思います。どのような対策があるのか、一緒に賢く共有すべき時代になったと思います。「権力に告ぐ」は、私たちにどのようなことがあったのか、今何が起きているかについて明確に見届けるべきだと話している映画です。

記者 : キム・スジョン