「スパイ」キム・ミョンミン“シナリオを見る目がない?偏見を破る”

TVREPORT |

「450万人(『ヨンガシ 変種増殖』)を超えたと、自慢することはできない。映画産業がこんなに盛り上がるとは思わなかった。こうなると知っていたら、映画関連の株を買っておくべきだったな……」

キム・ミョンミン(40)の幸せな愚痴だ。前作「ヨンガシ 変種増殖」(監督:パク・ジョンウ、制作:オジョンフィルム)のヒットにより、「スパイ」(監督:ウ・ミンホ、制作:映画会社ウルリム)まで2打席ヒットを狙うキム・ミョンミンだ。しかし、意外にも欲がない。プレッシャーがあってもよさそうだが、キム・ミョンミンは淡々としていた。

「今年の興行成績は1勝1敗…『スパイ』は秘密兵器」

「前作の成績が良かったから、今回も上手く行くだろうか?もちろん、ヒットすればいい。そう願っているし。欲張らないようにしている。映画は作品の内容も大事だが、運も大きく関係あるようだ。今回も運があればいいけれど……」

今年、キム・ミョンミンが作品のスタートを切った「ペースメーカー」(監督:キム・ダルジュン)が予想より低い成績を残した。彼にとって心の傷となった作品。「ヨンガシ 変種増殖」がキム・ミョンミンの自信を回復させてくれたが、その傷は完全には癒えなかった。おかげで、キム・ミョンミンはヒットについては達観の境地に至った。

一度の失敗と一度の成功、1対1の同点だ。今の状況において「スパイ」で逆転できる絶好のチャンスだ。もちろん、映画のヒットは神のみぞ知るといわれているが、彼が秘密兵器として「スパイ」を選んだ理由はなんだろうか?

「シナリオが『お~すごい!』というほどではないが、なかなか良かった。様々なジャンルがあって良かった。笑いも、アクションも、涙を誘う部分もあった。『上手く調和しているか』は観客が判断すると思うが、そのような様々なコンセプトが混ざっていて良かった」

キム・ミョンミンが言ったように、「スパイ」は様々なジャンルが混ざっているようだ。コミカルな映画にフォーカスを合わせた広報会社のおかげで不意打ちを食らったが、それなりに斬新な組み合わせだった。

「アクション俳優キム・ミョンミン?アクションスクールに通った実力発揮」

彼は加えて「シナリオを見る目がない」という自分への偏見を破りたいと説明した。ああだこうだという話にかなり傷ついたようだ。毒舌と強いカリスマ性で作られた内面を持っていると思っていたが、意外にもガラスのハートのようだ。

「僕が『シナリオを見る目がない俳優』であるという話がある。しかし、それは本当に違う。僕がシナリオを見る前に、僕を選んでくれた人たちはどうすればいいのか。僕を選んでくれた関係者は、僕よりずっと映画に精通している人たちだ。ときには上手くいくことも、そうじゃないときもあるのが人間の常だ。そのような話を気にしないようにしているが、僕も人間なので、あまりいい気分はしない。『スパイ』で観客から愛されたら、『シナリオを見る目がある俳優』という噂を広めて欲しい。ハハ」

冗談を言う姿が「スパイ」のキム課長に似ている。キム課長は韓国に送られてから22年が過ぎたスパイ。不法バイアグラ販売商で家族を養う生活型スパイだ。シャープで冷たい“チャドナム”(冷たい都会の男)も、笑わせるときは笑わせるお茶目な一面を持っていた。コミカルなキム課長に似ていると話すと、彼は手を横に振る。絶対似ていないという。

「役の中に自分の姿が1%もないとはいえない。30~40%はキム・ミョンミンだと思う。しかし、キム課長のように、ずうずうしくジョークを飛ばすタイプではない。キム課長と僕はユーモアのコードが違う。僕はより高級なギャグを駆使する。キム課長は下品なギャグを使う」

「スパイ」ではキム・ミョンミンのコミカルな演技にも驚くが、アクションにも親指を立てずにはいられない。キレのある動きが、それらしい絵を作る。彼は「以前、『スタントマン』という映画を準備するとき、アクションスクールに通っていたが、そのときの実力が発揮された」と説明した。

「もともとアクションの素質があるようだ。そのとき学んだアクションをこうして活用することができて、うれしい。これから“アクション俳優キム・ミョンミン”と呼ばれるのではないだろうか?ユ・ヘジンさんとも息が合って、いいシーンが出来上がったようだ」

そうだ。ユ・ヘジンとキム・ミョンミンの調和は見事だった。面白いと思ったユ・ヘジンがすさまじい眼差しで変身し、冷たいと思ったキム・ミョンミンが温かくなった。思いもしなかった絶妙なマッチだ。

「アメリカのコーヒーを飲むとき、ユ・ヘジンの眼差しに本当に怯んだ」

「映画の中で、僕がアメリカのコーヒーをおいしく飲むシーンがある。そのシーンは、自由民主主義の思想に浸り、アメリカの商品を生活のように楽しむキム課長の一面を見せるための方法だが、正直、そのシーンでユ・ヘジンの眼差しに実際に“怯んだ”。スパイとして、持つべき思想を手放した部分ではないか?アメリカを皮肉るシーンだが、実際のスパイだったら、おそらくその場で銃殺されたはずだ。反動なのだ」

生活型スパイにどっぷりはまっていたキム・ミョンミンは、これから悪名高きドラマ制作会社の代表としてお茶の間に帰ってくる予定だ。変身が趣味で、特技であるキム・ミョンミンに、観客に「スパイ」をどう見て欲しいのかを聞いた。やはりクールだった。

「8000ウォン(約600円)のチケットだ。もちろん安くはないので、観客が映画に望んでいる部分も多い。しかし、多くのものを得ようとしたら、むしろ多くを失う。リラックスして見て欲しい。秋夕(チュソク:韓国のお盆にあたる祭日)に家族と一緒に見るにはこれ以上の映画はないと思う。8000ウォンの値打ちはしっかりする映画だ。ハハハ」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : ムン・スジ