“クレイジーな牛”クァク・ドウォンから“ヨンシク”チョ・ジェユンまで“旬な俳優”4人に注目!

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2012年のテレビドラマで大活躍した俳優

“名脇役”―いつからか、演技がうまい助演俳優たちをこう称するようになった。しかし、俳優たちは皆、この“名脇役”という単語を嫌がる。出演量はさて置き、自らのキャラクターを誠実に演じる俳優たちにとって、“脇役”と限界を設定されるのはつらいことに違いないだろう。

2012年の夏、完成度の高いドラマが話題になる中、主演ではないがドラマを支える演技力でその存在感をアピールした俳優も多かった。第4話を過ぎた「ゴールデンタイム」、不気味なリアリティーで愛されている「ファントム」、30%台の視聴率を維持し、国民的ドラマとして勢いに乗っている「棚ぼたのあなた」、そして最終回を迎えた後もさらに大きな反響を呼んだ「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)などが挙げられる。

政治を扱った正統派ドラマやアメリカドラマの「グレイズ・アナトミー」を思わせる医療ドラマ、現実を反映したスリラー、涙あり、笑いありのファミリードラマといった幅広いジャンルの中で、注目すべき俳優はイ・ソンミン、クァク・ドウォン、イ・ヒジュン、チョ・ジェユンだ。

名前を聞いてもすぐには思い浮かばないかもしれない。おそらく、名前よりも顔のほうが見慣れているこの俳優たちは、すでに多くの視聴者はもちろん、関係者たちにも確固たる印象を残している。“個性豊かな演技力”と“演劇”という共通点を持つ彼らを、これから“旬な俳優”と呼んでみよう。


2012年の俳優、イ・ソンミン…ドラマ3本で主演

2012年のドラマ「ブレイン 愛と野望」「キング~Two Hearts」「ゴールデンタイム」の共通点はなんだろうか。

年末年始に放映された「ブレイン 愛と野望」、そして全20話の「キング~Two Hearts」で、憎らしい医師のコ・ジェハクと、立憲君主制国家の大韓民国で人間味溢れる国王を演じたイ・ソンミンだが、たった2ヶ月で彼は全くの別人になりきっていた。「ゴールデンタイム」では、緊急手術で人命を救うチェ・イニョク役で、初のミニシリーズ主人公という栄誉を受けた。

2006年、ささやかな成績を収めた自主制作映画「Silk Shoes」の公開当時、最も輝いていた俳優もやはりイ・ソンミンだった。劇団チャイム出身の俳優たちが総出演したこの作品で、イ・ソンミンは人間的な暴力団員ソンチョルを演じ、演劇から映画とテレビの世界へ移っていった。

演劇から映画へ移った後の実質的なデビュー作で、面白い台詞回しと並々ならぬオーラを見せたイ・ソンミンは、「ミスター・ロビンの口説き方」などにいち早くキャスティングされ、1998年には「GO GO 70s」でポップコラムニスト役を演じ、シーン・スティーラー(Scene Stealer:スターよりも注目される脇役)としての魅力を遺憾なく発揮した。テレビドラマ出演も並行していた彼は「大王世宗(テワンセジョン)」「トリプル」「オンエアー」などに脇役として出演し、「パスタ~恋が出来るまで~」の憎らしくも可愛い社長、ソル・ジュンソク役で頭角を現し始めた。

老斤里(ノグンリ)事件を扱った「小さな池」のような意義深い作品はもちろん、「普通の恋愛」「同一犯」のようなKBS単発ドラマ、「老いた泥棒の話」「Bオンソ(蜚言所)」のような演劇にも精力的に出演した。おそらく彼は、現在韓国で最も忙しい俳優に違いない。


クァク・ドウォン、検事から刑事へ…ソ・ジソブと肩を並べる

大先輩のチェ・ミンシクを「焼酎を7本空ける、演技のできるただの舞台俳優」だと思っていたというクァク・ドウォンにとって、2012年500万人を動員した「悪いやつら」(以下「悪いやつら」)は、人生の節目となった。観客に「本当の検察官なのでは」と言わしめたこの39歳の俳優は、早くから演戯団コリペ(Street Theatre Troupe)に入り、演技を磨いた。

有名な演劇演出家のイ・ユンテク氏がメガホンを取った映画「オグ」に、チョ・ヨンジンを始めとする演劇界の仲間たちと一緒に出演したのが2003年である。「グッド・バッド・ウィアード」「母なる証明」「アジョシ」などで、脇役を演じた彼は「哀しき獣」で、ハ・ジョンウに殺害される教授役を経て「悪いやつら」にたどり着いた。

そして、ドラマ「ファントム」に出会った。「通帳の残高より知名度のほうが切実だった」と言うクァク・ドウォンにとって、「ファントム」の“クレイジーな牛”クォン・ヒョクジュ役は、トップスターのソ・ジソブと肩を並べる運命的なきっかけとなった。ソ・ジソブさえも笑わせるアドリブを披露したクァク・ドウォンこそ、これから映画やドラマで活躍するであろう俳優だ。「シシルリ(時失里)2km」「チャウ」のシン・ジョンウォン監督の次回作「漁村の幽霊 パクさん、出張す」の僧侶役で笑いを予告しているクァク・ドウォンに期待する理由は、明らかではないだろうか。


イ・ヒジュン“ドラマスペシャルの男”から“旬な男”へ

「コーヒープリンス1号店」でトップスターになる前、イ・ソンギュンはKBSとMBCの単発ドラマの常連俳優だった。主演になってからも彼は、「ちょっとエッチな僕たちの恋愛」で、2010年に再開されたKBSドラマスペシャルに出演した。韓国芸術総合学校の後輩であるイ・ヒジュンも、2011年だけで「完璧なスパイ」「キューピットファクトリー」「同一犯」に連続出演し、“ドラマスペシャルの発見”にも選ばれた。

彼は、「棚ぼたのあなた」のぶっきらぼうな純情男、チョン・ジェヨン役で未婚女性たちの“旬な男”の座を射止めた。すでに「キューピットファクトリー」の作曲家ソジュン役でチョン・ジェヨンのウォーミングアップをしていたイ・ヒジュンは、2010年の「生き残るための3つの取引」を皮切りに、「特捜本」「火車」「チャ刑事」で小さい役ながらも強烈な印象を残した。

面白いのは、1979年生まれのイ・ヒジュンがイ・ソンミンとクァク・ドウォンの後輩だということだ。大邱(テグ)の小劇団で演技を始め、演戯団コリペと劇団チャイムで演技力を磨いてきた。人気の尺度と言われる単独CMまで撮ったイ・ヒジュンだが、「棚ぼたのあなた」の“あなた”のうちの一人は、明らかに彼だろう。


チョ・ジェユン「追跡者」の“ヨンシク”

まだ旬な俳優と呼ぶにはいくらか抵抗がある俳優、チョ・ジェユンのフィルモグラフィーの8割は“ヤクザ”や“悪者”だ。しかし、「追跡者」でペク・ホンソクを手伝うヨンシクは、“優しいヤクザ”に生まれ変わるキャラクターだ。「孟母三遷の教え」でのソン・ヒョンジュの演技を真似してアレンジしたという彼の全羅道(チョルラド)訛りの演技は、確かに「追跡者」のエネルギーとなっていた。

出演シーンが増え、“チョ刑事”ことパク・ヒョジュとのロマンスが入ったのも、彼の巧みな演技に支えられてのことである。演技と美術を勉強し、舞台美術や子供演劇の演出まで経験したという彼の役者人生は、これからがスタートなのかも知れない。

ソン・ヒョンジュ、カン・シニルなどの演劇界の先輩の中で自分の役割を120%こなしたチョ・ジェユンも、同い年のクァク・ドウォンとともに2012年、SBSドラマが発掘した俳優として注目された。次回作でもまた、ヤクザや犯罪者役を演じるとしてもいいではないか。これからはチョ・ジェユンの40代に注目してみよう。

記者 : ハ・ソンテ 写真 : イ・ジョンミン