ポン・ジュノ監督&ユ・ジテ、阪本順治監督と対談!日本映画「せかいのおきく」韓国でプロモーションキャンペーンを実施

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映画「せかいのおきく」の韓国公開を記念し、阪本順治監督とプロデューサー・美術監督の原田満生が2月24日(土)から26日(月)の3日間、韓国プロモーションキャンペーンを行った。

2023年度の「第97回キネマ旬報ベスト・テン」第1位&脚本賞2冠、「第78回毎日映画コンクール」大賞&脚本賞&録音賞3冠を受賞した「せかいのおきく」は、世界が待ち望んでいた今年の話題作として韓国でもメディアや評論家から最高の評価を受け注目を集めている。

阪本順治監督と古くから交流のあるポン・ジュノ監督(「パラサイト 半地下の家族」)、阪本順治監督の「人類資金」に出演した経験がある俳優のユ・ジテ(「オールド・ボーイ」)との対談付きの上映チケットは販売と同時に超高速で完売! 韓国の観客の熱狂的な反応の中、素晴らしいキャンペーンとなった。

韓国に到着し、すぐに劇場入り。上映後に登壇した阪本順治監督は「海外の各国で上映された際、観客のみなさんの反応に応えられることが本当に素晴らしいことでした。本作は“サスペンス”という評価を受けたことがありますが、皆さんはどのように映画をご覧になりましたか?」と観客に問いかけ、江戸時代の下肥人の若者たちを描いた異色のモノクロ時代劇を初めて見た韓国の観客の反応に興味津々。その後、江戸時代を舞台にした理由、モノクロで撮ることになった経緯、キャスティングについて、映画のテーマである“サーキュラーエコノミー”についてなど、より深い話が続き、人々が最も興味を抱く“うんこ”の話題に!

「長屋の地面や船に積むうんこは、段ボールを削って、水と油を注いで着色し、薬用入浴剤などをいれて泡をたて発酵してる感じを表現した、食べられないうんこです。俳優に飛び散る可能性があるシーンでは、お麩などの食用品を使って、食べられるうんこを作りました」と原田満生プロデューサーが制作秘話を明らかにし、会場は大爆笑。

進行役で作家のキム・セユンは、「主役になれない存在が主役になるのが映画なら、私は当然、いつかは“うんこ”が主役になるべき運命だったのではないかと思います。“うんこ”から始まり、眩しい“青春”が描かれるこの作品を見ながら、一層“うんこ”を愛おしく思うようになりました」と“うんこ”愛たっぷりの感想を述べた。

イベント終了後に車に乗り込もうとすると、パンフレットを抱え息を切らして走ってくる少女の姿が。阪本順治監督と原田満生プロデューサーにサインを求め、ふたりが彼女に年齢を聞くと中学一年生とのこと。会場にも若い観客が多く、熱のある質問も多く、韓国の映画愛の深さを感じた。

梨花女子大学校キャンパス内にある映画館、アートハウスモモで行われた上映では、「主人公が口癖のように言う『青春だなぁ』という台詞の意図は?」という質問に対し、「武士の時代が終わり、より新しい世界に向かうしかない状況で、名前もなく生きてきた人々がより明るい未来を予測し、自由を求める意味で“青春”という言葉を使いました」と明らかにし、観客は深く頷いた。

同日午後にシネコンのCGV龍山で行われた上映イベントでは、ポン・ジュノ監督が「ポンテール」(ポン・ジュノ+ディテール)という愛称に相応しく、阪本順治監督の繊細な演出が映画の随所に隠されていることを紐解いた。たとえば、「突如挿入されるカラーシーンが映画のリズムを生み出す演出意図は何か?」「3年に及ぶ長い時間をかけて新しい章を作り出す際にどのようなリズムで続けるかをどう考えたのか?」「映画全体の微妙なリズムを形成する美しいインサートショットをどこにどのように配置し、どのようなリズムで調整したか?」など、制作の秘密について質問を投げかけた。

また、黒木華が演じるおきくについて、「特有の生命力があり、女性としての恥じらいや控えめな面もあり、没落した侍の娘として傷を持つ内向的な面もありつつ、長屋の住民の前ではきっぱりと話す強い面もある。これまで見たことのないキャラクターだ」と賞賛した。

そして、多くの人が最高のシーンとして挙げる雪景色のシーンについては、「中次が雪が降ると周囲が静かになるのが好きだと言ったが、そのシーンに台詞がない。主人公に対する監督の繊細な配慮だったのでしょうか?」と、阪本順治監督のキャラクターの心さえも考慮した繊細な視点について問いかけ、阪本順治監督は「声を出さずに心を表現するシーンです。雪が降ると周囲が静かになるという中次の心を考えると、そのシーンでは音楽を入れたくても入れてはいけないと思いました。だから音楽を入れませんでした」と回答し、観客により豊かで深い映画的解説を伝え、会場は熱狂に包まれた。

江南のアート系映画館、アートナインのイベントに駆けつけてくれたのは「オールド・ボーイ」などで知られる韓国を代表する演技派俳優のユ・ジテ! 彼は日本に半年間住んでいた経験があるため、日本語もかなり理解しており、旧知の仲のふたりは息もぴったり。トークは大盛り上がりで、質疑応答も質問が途切れず、1時間延長して終了した。

◆原田満生プロデューサー コメント

今回のキャンペーンで感じたのは、どこの劇場でも、若い観客が本当に多かったことです。珍しい光景でした。韓国の皆さんは、映画の創り手に対するリスペクトが凄いという話も方々で耳にしました。熱心に質問もされるし、質問のレベルも高い。また、終わったらサイン会になり、皆さんちゃんと並んで待っている。とても映画愛を感じた出逢いの数々でした。
また、配給会社の方々も、何パターンもオリジナルポスターを作り、「おきくのお守り」などのオリジナルグッズ、「おきくのおにぎりセット」も販売されてました。「せかいのおきく」への愛情を感じましたし、色んな努力が本当に嬉しく、感謝でいっぱいの旅となりました。

記者 : Kstyle編集部