映画「このろくでもない世界で」ホン・サビン“知名度が低いことが逆にプラスになると思う”

OSEN |

義父(ユ・ソンジュ)に暴力を受けるヨンギュ(ホン・サビン)は、母親(パク・ボギョン)とオランダに行って暮らすのが人生の目標だった。自身をいじめる人たちと争い、示談金を用意しなければならない状況に置かれた彼は、暴力組織の中間ボス(ソン・ジュンギ)から助けてもらう。そのようにして高校生のヨンギュは学校を離れ、組織で新しい人生を始めることになる。

ヨンギュ役を演じた新人ホン・サビンは「ヨンギュは声も出せない子です。彼が声を出せるように助けるのがチゴンです」と2人の関係を説明した。

ホン・サビンは最近、ソウル小格洞(ソギョクドン)にあるカフェで行われたOSENとのインタビューで「僕が感じる通りに演技しても良いとおっしゃいました。先輩たちが『僕たちがあなたに刺激を与えるから、飾らずに表現して。飾れば人物に失礼になる』とおっしゃいました」とし、「キム・ジョンス先輩が多くのことを教えてくださって、現場でたくさん学びました」と話した。

短編映画「休暇」(2017)、映画「ユ・ヨルの音楽アルバム」(2019)に出演したホン・サビンは2022年、映画「万人の恋人」で本格的にデビューし、今年は映画「このろくでもない世界で」と「さよなら、明日また会おう」、ドラマ「放課後戦争活動」に出演し、キャリアを積んでいる。

ホン・サビンは「このろくでもない世界で」の主人公であるヨンギュ役のため、3回の長いオーディションを受けた。彼は「オーディションがあったので志願しました。『このろくでもない世界で』という作品に出演したかった理由は、20代の俳優として、ヨンギュという人物に会えばよい記録ができると思ったからです。打ち合わせをする度に出演したい気持ちが大きくなりました。そのため、1~3回のオーディションで僕がお見せできることは全部やりました。すべての作品のオーディションで最善を尽くしていますが、『このろくでもない世界で』という映画ではたくさん努力しました」と伝えた。

合格の知らせを聞いてどんな気分だったかと聞くと「『このろくでもない世界で』に出演したいと思ったので、欲が出ました。俳優として20代に重要な印を押すことができそうだと思いました。その当時は『カンヌ映画祭に行きたい』とも思っていませんでした」と答えた。

「このろくでもない世界で」(監督:キム・チャンフン)は、地獄のような現実から抜け出したい少年ヨンギュが、組織の中間ボスのチゴンに出会い、危ない世界で共に過ごしながら繰り広げられる物語を描くノワール作品だ。

同作は「第76回カンヌ国際映画祭」に招待され、韓国で公開される前、観客や評論家と出会った。ホン・サビンをはじめ、ソン・ジュンギ、BIBI、そしてキム・チャンフン監督はカンヌ映画祭に進出する喜びを味わった。

この日、ホン・サビンは「撮影を終えてからもカンヌ映画祭のことは考えもしなかったのに、作品が世界中の観客から注目を集めることになってとても嬉しかったですし、ありがたく光栄です」とし「レッドカーペットではカッコよく写真が撮りたかったけれど、あまりにも緊張してどうしたのか記憶がありません。演技の練習はもちろん、舞台挨拶の練習もしないといけませんね(笑)。行ってきて感じたことは、今後何十年かかっても、カンヌ映画祭にもう一度進出したいということです」と願いを語った。

印象深かった海外メディアからの反応はあったのかという質問には、「僕は褒められるのが好きですが、生きていて褒め言葉はあまり聞いたことがありません(笑)。俳優たちの相性がよかったという言葉がありがたかったです。よくできたという言葉は気持ちがよく、胸がいっぱいになりました」とし「完成版は3回観たのですが、見る度に感じが違います。3回目に観た時はスピード感があって、人物の感情により集中することができました。僕が評価することはできないけれど、僕とBIBIさん、ソン・ジュンギ先輩の演技がよく調和したと思います」と答えた。

BIBIとの演技については「BIBIさんがいて息抜きできました。僕はBIBIさんがクリエイターとして僕より先輩だと思っています」とし「BIBIさんは僕より年下だけど、話を聞いたら面白いんです。BIBIさんの話を聞くと良いアイデアが思い浮かぶことが多かったんです。でも僕たちが空回りしていると感じる時は、ソン・ジュンギ先輩が重心を取ってくれました。この上ない現場でした」と満足した。

ホン・サビンは観客から愛されてきたファン・ジョンミン、パク・ジョンミンなどの俳優と同じ事務所に所属している。彼は「先輩たちがいつも強調するのが態度です。僕なりに下した結論は、俳優が演技を上手くやらなければならないのは当たり前なことだけど、演技ができなくても現場で態度が良くなければならないということです」とし、「監督、先輩たちと現場で会話する時、彼らが僕に何を必要としているのか早くキャッチするようにしました。ただ意欲だけを見せれば負担になる可能性があるので、僕が早く把握する姿をお見せしたかったんです」と伝えた。

漢陽(ハニャン)大学演劇映画学科に在学中の彼は現在、4年生の2学期を過ごしている。「大学で演劇をしながら少しずつカメラの前でも演技をしてきたけれど、新人俳優と呼ばれるようになりました。まだ僕が既成俳優のように活動することはできないけれど、安住、安心してはいけないと思っています」と話した。

「クリエイターという大きな枠が好きです」というホン・サビンは、「演技に没頭しているけれど、毎回俳優にはなれないので、演劇や短編映画の演出もしています。まだ深くはないかもしれないけれど、面白いのが好きなので演出もするようになりました。今はまだ商業映画を演出する能力はないと思います。大学路(テハンノ)で商業演劇の演出をしたのですが、演劇の演出でも成果を出したいです」とし、俳優はもちろん今後演出者に挑戦したいという夢を語った。

また「僕が今は地名度が低いけれど、それが逆にプラスになると思います。観客に『あの人、誰だろう?』と言われるじゃないですか。これから出演作品が増えても気楽に見られる俳優になりたいです」とも話した。

記者 : キム・ボラ