Netflixで注目!「愛の不時着」から「梨泰院クラス」「ヴィンチェンツォ」まで、韓国ドラマで輝くカメレオン俳優たち

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tvN「サイコだけど大丈夫」/ACEFACTORY Instagram/tvN「ヴィンツェンツォ」

ヒットドラマや映画には必ず素晴らしいバイプレイヤー(名脇役)が存在します。特に韓国では著名な総合大学の多くに演技を学ぶための演劇・映像関連学科が存在して高い演技力を持つ俳優の層が厚いことや、韓国ドラマの話数が多く脇役のキャラクターまでも色濃く描かれることから、印象的なバイプレイヤーを挙げたらキリがないほど。

そこでKstyleでは、最近活躍がめざましいバイプレイヤーをピックアップ。演じる役柄によって見た目や話し方、性格までガラリと変えるカメレオン俳優たちを紹介します。

 

◆ユ・ジェミョン

写真=ACE FACTORY
出演作:「梨泰院クラス」「ヴィンチェンツォ」「自白」ほか

ドラマ「梨泰院クラス」で飲食業界トップに君臨する大企業「長家(チャンガ)」の会長チャン・デヒ役を熱演したユ・ジェミョン。2021年の話題作「ヴィンチェンツォ」では、チャヨン(チョン・ヨビン)の父親であり、弱者に寄り添う人権派弁護士ホン・ユチャン役を演じましたが、最初はこの弁護士役の俳優がチャン会長と同一人物だと気がつかなかった人も多いのでは? それもそのはず。「梨泰院クラス」では、原作キャラクターに近づかせるために髪を白髪交じりにして、特殊メイクでしわやシミを施し、声のトーンも低く重厚に変えて60代に見事に変身。後半の衰弱しきった姿もあまりにも自然だったので、彼を初めて知った視聴者には、1973年生まれの48歳(2021年8月現在)だとは想像もできなかったはずです。

「自白」では、事件解決のためには手段を選ばない熱血刑事チュノ役。2PMジュノ扮する心臓病を患う弁護士とタッグを組み、頭脳派&行動派で事件の真相に迫る2人のブロマンスが見ものでした。髭面に革ジャン姿のワイルドな姿でアクションまでこなす姿を見ると、ますます「これがあのチャン会長?」と驚くことうけあい。

tvN「自白」
「力の強いト・ボンスン」では、ボンスン(パク・ボヨン)の父で、クルミ菓子店の店主チルグ役。エプソン姿がキュートで、怪力の妻に頭が上がらない気弱なお父さんだけど、ボンスンをこよなく愛する優しさにほっこり。「秘密の森」では、法曹界を掌握している次長検事イ・チャンジュン役で、オールバックにスーツをピシッと決めて、お堅いエリートに扮しました。タイトなスラックスを履きこなす姿から、実は身長183㎝、体重78㎏、長い脚のモデル体型であることも発覚!!

JTBC「梨泰院クラス」ポスター
大学時代に演劇サークルで演技を始め、33歳の時に釜山で劇団「俳優、観客と空間」を設立して以降俳優兼演出家として舞台に携わってきたというユ・ジェミョン。彼が有名になったきっかけは「恋のスケッチ~応答せよ1988~」で、ドンリョン(イ・ドンフィ)の父で学生主任教師リュ・ジェミョン役に抜擢されたことでした。厳しくも愉快な慶尚道おじさんキャラクターが大好評で、それから大きな役を任されるようになった彼は、このドラマの縁でシン・ウォンホ監督の「刑務所のルールブック」にも、プロ野球界のスター選手ジェヒョク(パク・ヘス)が信頼を寄せるリュ弁護士として登場しています。
韓国tvNで9月スタート予定の新ドラマ「ホームタウン」では連鎖殺人事件を追う刑事役で堂々の主演。ソン・ヒョンジュ、チョ・ジヌンのように地道にフィルモグラフィーを積み上げ、主演まで上り詰めたバイプレイヤーのひとりになりました。
 

◆オ・ジョンセ

写真=プレインTPC
出演作:「サイコだけど大丈夫」「椿の花咲く頃」「ストーブリーグ」ほか

Netflix独占ドラマ「サイコだけど大丈夫」で、自閉症スペクトラム症と発達障害3級のムン・サンテ役という難役を見事に演じて称賛されたオ・ジョンセ。障害のために弟のガンテ(キム・スヒョン)を困らせることも多いけれど、常に自分は兄だという自覚を持ち、ガンテを守ろうとする姿は涙を誘いました。その一方で、特定のことにとんでもなく深い知識を発揮することや、コ・ムニョン(ソ・イェジ)との幼稚なケンカなど爆笑シーンも多く、ムニョンが呼ぶように視聴者からも「サンテオッパ」と呼ばれ多いに愛されました。

tvN「サイコだけど大丈夫」
一方、同じくNetflixで好評を博した「椿の花咲く頃」では、ドンベク(コン・ヒョジン)が経営するバーの家主で、言うことは大きいが妻には頭があがらないヘタレ男ノ・ギュテ役を熱演。ピーナツをサービスしてもらえないことでドンベクにサービスを執拗に要求するせこい性格は、ピュアなサンテとは正反対すぎて「とても同じ人とは思えない」と戸惑った人もいたのではないでしょうか。しかし、見進めていくと、そのセコさやおバカぶりが愛しく見えてくるから不思議です。

プレインTPC Instagram:「ストーブリーグ」
「ストーブリーグ」では、ナムグン・ミン扮する野球経験ゼロのGMをスカウトする常務ギョンミン役。ねっとりとした口調とチャラい態度の裏で万年最下位のダメ球団を処分しようともくろんでいる計算高い人物ですが、実は球団に対して複雑な感情を持っており、ドラマの結末を大きく左右するキーマンを演じました。「半沢直樹」のような痛快な逆転劇が魅力のこのドラマで、最後の大逆転劇に関与したギョンミンもまた視聴者に強い印象を残したのは言うまでもありません。

tvN「サイコだけど大丈夫」ポスター
2001年にデビューし、2013年の映画「男子取扱説明書」で注目を集めたオ・ジョンセは、2019年に大ヒットした映画「エクストリーム・ジョブ」で、トレーニングウェアとヘアバンド姿のヘタレな麻薬犯罪組織のリーダー、テッド・チャン役を演じて知名度が急上昇。そこから今の快進撃へとつながっています。外見が個性的というわけもなく、オーバーな演技をしているわけでもないのに見るものを惹きつけてやまない不思議な魅力を持っている彼は「椿の花咲く頃」と「サイコだけど大丈夫」で、百想芸術大賞の助演男優賞を2年連続受賞し、最高のバイブレイヤーの称号を手中に収めました。実は、去年出演したテレビ番組で人の顔をうまく認識することができない「相貌失認」であることを告白したのですが、俳優としては不利ではないかと思える症状を抱えながらも、繊細な演技をしていることに驚かされます。
 

◆キム・ビョンチョル

写真=ALIEN COMPANY
出演作:「SKYキャッスル」「トッケビ」「太陽の末裔」ほか

「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」で、検事になれなかった夢を子どもたち叶えさせるべくスパルタ教育をするチャ・ミニョク教授役を演じたキム・ビョンチョル。大きなピラミッドのオブジェを子どもたちに見せながら階級社会の現実を厳しく説き「この頂上に上がって行かなければならない!! 」と叱咤する姿がシニカルな笑いを誘い、威張っているわりには情けないキャラクターで人気を博しました。

「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」を見たならば、900年間さまよい続けてきた怖い幽霊パク・ジュンホン役が印象に残っているでしょう。白装束にドス黒い唇で悪態をつく姿や、過去の因縁の回想シーンなど、短いシーンの登場ながらも強烈な印象を残しました。パク・ジュンホンが消滅する時に叫んだ「見ろ!! 結局、破局だ」というセリフが印象的だったあまり、「SKYキャッスル」のオンエア時には“チャ・パグク(チャ教授+破局の合成語)”との愛称も誕生しました。ちなみに「トッケビ」ではキム・シン(コン・ユ)を支えるキム秘書を演じた俳優チョ・ウジンとそっくりなことも話題になりました。チャ・ウジンが結婚した際は、自分は未婚なのにも関わらず「キム・ビョンチョル結婚」をいう検索ワードがあがってきて驚いたとか。

tvN「トッケビ」
「SKYキャッスル」に続いて出演した「ドクタープリズナー」も大ヒット。医師一家に生まれながら医療ミスで出世街道からはずれると、刑務所の医療課長となって政治家などの社会的地位の高い人々に便宜を図ることで成り上がり“刑務所の王”と呼ばれるに至ったソン・ミンシク役で、刑務所で利権をむさぼる者たちを懲らしめるために刑務所にやってきた天才医師役のナムグン・ミンとやられたらやり返すの攻防を繰り広げ、視聴者を大いにイライラさせました。

野心家を演じることが多いですが、「ショッピング王ルイ」では、七三分けに1,2本だけおろしたカールの前髪が特徴のイチーム課長役でコミカルな演技が大好評。ソ・イングク扮するルイの正体を知らずに親切にしたことで星5つの評価をもらい喜ぶシーンはキュートで癒されました。また「仮面の王 イ・ソン」では、巨大な富と権力で王を操る辺首会の首長テモク(ホ・ジュノ)の息子ウジェ役で、父からの信頼を得たい気持ちとイ・ソン(ユ・スンホ)を守ろうとする娘のファグン(ユン・ソヒ)との間で板挟みになる気弱なお父さん役を演じています。

KBS「太陽の末裔」
2003年にデビューした彼が広く顏を知られるようになったのは、ヒットメイカー、キム・ウンスクが脚本を手掛けた2016年のドラマ「太陽の末裔 Under In The Sun」にシジン(ソン・ジュンギ)の上司である大隊長役に抜擢されたことから。その後も「トッケビ」と「ミスター・サンシャイン」に出演し、キム・ウンスク作品には欠かせない存在になっています。
 

◆チョ・ハンチョル

写真=NOONカンパニー
出演作:「ヴィンチェンツォ」「ナイショの恋していいですか!?」「100日の郎君様」ほか

Netflixで人気を博したドラマ「ヴィンチェンツォ」で、強い者には弱く弱い者には強いウサン法律事務所のハン代表を演じたチョ・ハンチョル。富と権力得るためには手段を選ばず、状況によってあっちに着いたり、こっちに着いたりとコウモリのような卑劣さを見せるものの、いつも裏目に出てしまう憎めない悪役キャラが好評でした。一方、「ロマンスは別冊付録」では、キュル出版のホン編集チーム長役。詩をこよなく愛し、詩集の出版を提案しては不採用になるも情熱は失わない少年の心を持つ文学中年役を演じ、ハン代表とは正反対に損得計算しないキャラクターに和みます。また「誰も知らない」では、リュ・ドクファン扮する主人公の兄で中学校の理事長ユン・ヒソプ役。誠実そうに見えて腹の中ではなにを考えているのか、善人なのか悪人なのか判断のつかない謎めいた人物でドラマに緊張感を与えました。

tvN Instagram:「ヴィンチェンツォ」
1998年に演劇でデビューしたチョ・ハンチョルが頭角を現したのは「ナイショの恋していいですか!?」から。ソ・イングク扮する主人公が二重生活をするための助力者となるキムチーム長役をコミカルに演じて好評を得ました。演劇俳優時代は、SMエンターテインメントで練習生に演技を教える講師をしていたという変わった経歴の持ち主で、SUPER JUNIORのヒチョル、シウォン、少女時代のスヨン、ユナを指導していたというから驚きです。

NOONカンパニー:「100日の郎君様」オフショット
2018年には映画「神と共にー因と縁」に、Me Too運動によりスキャンダルが発覚した俳優の代役で判官1役で出演。「100日の郎君様」にも、飲酒事故を起こした俳優の代役として王役で出演するなど、代役で期待以上の結果を残したことが近年の活躍につながったようです。最新作は、8月28日よりNetflixで独占配信されるシン・ミナ&キム・ソンホ主演ドラマ「海街チャチャチャ」で、過去の栄光にすがって生きる元歌手でライブカフェのオーナー役。クセのありそうな役だけに、また新しい姿を見せてくれそうです。
 

◆チェ・デフン

写真=ACE FACTORY
出演作:「愛の不時着」「悪の花」「ラケット少年団」ほか

「愛の不時着」で、クイーンズグループの後継者の座を狙う長男セジュン役を演じたチェ・デフン。短絡的で妻に操縦されている情けないキャラで、狡猾な次男夫妻よりは好感が持てました。不時着ファンにとっては印象薄めかもしれませんが、今大躍進の注目バイブレイヤーこそ彼。2021年上半期にオンエアされた「怪物」では、シン・ハギュン扮する主人公の親友パク・ジョンジェ役を務め、第57回百想芸術大賞男性助演賞の候補に名を連ねました。残念ながら受賞はならなかったものの、ある秘密から精神を病んでいる警察官をうさんくさく演じて視聴者を混乱させ、真相が明かされてからの鬼気迫る演技が高く評価されました。

ACE FACTORY:「愛の不時着」記念ショット
「胸部外科」では、コ・ス扮する主人公テスと同期の胸部外科フェロー、ドンジュン役。胸部外科長の息子であることから甘やされて育ち、面倒なことはテスに押し付けるちゃっかりキャラですが、徐々に医師としての使命感に目覚めて成長していく姿が爽やかな感動を呼びました。「悪の花」では捜査を陣頭指揮する正確で抜かりのない強力課のチーム長ウチョル役。「ブラームスは好きですか」では、大胆で図々しい性格が憎めないギョンフ文化財団海外通信チームのパク・ソンジェ役。「十八の青春」では、シン・スンホとキム・ドワン扮する高校生たちが通う数学塾の人気講師ソン・ジェヨン役で出演。「ラケット少年団」では、元バトミントン選手のキム記者役で出演。出演シーンの分量に関わらず、視線を引いて大きな印象を残すシーンスティラーとして徐々に注目を集めてきました。

ACE FACTORY Instagram:「ラケット少年団」
そんなチェ・デフンのかっこいい姿が拝める作品は、ヤクザ役を演じた2013年のドラマ「狂った愛」。同じ擁護施設で育った初恋の人ミソ(パク・ソニョン)と再会すると、夫の裏切りで離婚していたミソをいつも陰から見守り、ミソが他の男性と愛し合っていると知ると自分の気持ちを隠し通す男気と純情に惚れずにはいられません。ちなみに彼の奥様は本作での共演が縁でゴールインしたミス・コリア出身の女優チェ・ユンソです。


ライター:安部裕子

記者 : Kstyle編集部