【REPORT】10CMがバンド編成で4度目の単独公演を開催!初のホール公演は楽しさもエロさも悲しさも

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インディ、メジャーの垣根を越えて活躍する男性ユニット、10CM。彼らが「ホームタウン、ホンデのライブ・ハウスの雰囲気を再現する」がコンセプトの日本オリジナル公演「10CM Night~オヌルパメ」の4回目(会場:彩の国さいたま芸術劇場小ホール) を4月22日(土) に開催した。


至近距離での劇場型公演

これまでライブ・ハウスで開催されてきた「オヌルパメ」。今回は、初のホール公演となったが、客席はステージを半円で囲むようにすり鉢状に設置され、どの席からも舞台を間近に見ることが出来る……そんな贅沢な作りに開演前から期待が高まった。

そこに10CMがバンド編成で登場し、アコースティック・タッチの「セビョク・ネシ(午前4:00)」からライブがスタート。ボーカルのジョンヨル、ギターのチョルジョンはスツールに腰を掛けてフロントに構え、客席は温かな手拍子で心地よい演奏を包んでいく。ホール公演とはいえ、これまでのアットホーム感に揺るぎはない。いや、全席がステージに近い分、アットホーム感が一層強まった印象だ。

そしてゴキブリと思しき虫に怯えて彼女に甘える、ちょっとコミカルでロマンチックな「オヌル・バムン・オドゥミ・ムソウォヨ(今夜は暗闇が怖いよ)」で手拍子はより大きくなり、ファンの体は左右にスウィング。柔らかなタッチの鍵盤の音色があったかムードをより大きくし、10CMの感性が場内の隅々にまで行き渡る。続く「Healing」ではボーカルも演奏も力強さが光り、ジョンヨルの攻め込むかのような歌唱が客席をグイグイ惹きつけていく。こうして初期の名曲を中心にオープニングを終えた彼は「すべての公演会場でトキメキと緊張を覚えますが、(日本での初ホール公演ということから) 今日は特別ですね」と意気込みをコメント。さらに「皆さんも今日は覚悟が違う気がします」とファンを笑わせた。


ロマンスとエロスが交錯する10CMならではの世界

そんなMCの後は甘い歌を連発し、ロマンチックな貌を前面に出していく。まずは昨年10月に発表したばかりとあって、ライブではまだレアな「キロヤオーブン(That 5minutes)」から。ファンもレアなことを分かっているため、曲紹介だけでフロアから歓声が上がる。デートが終わり帰途についても、5分と待てず、彼女のもとへ戻ってしまうというロマンチック・チューンにジョンヨルの美声はマックスに映え、橙色の照明で会場の雰囲気は甘く、かつホッコリに。ファンも10CMとのデートをエンドレスに楽しむかのように体を揺らし、「Good Night」という囁きに皆うっとり。歌い終えたジョンヨルは客席に向けニッコリとほほ笑み、ステージを楽しむ彼の姿がファンをまた楽しくさせる。

続いた「ネ・ヌネマン・ポヨ (僕の目にだけ見える)」は現在日本で放映中のドラマ「トッケビ」(主演:コン・ユ) のOSTから。リリースが昨年末とあって、日本でのお披露目は今回が初。スウィートなムードはそのままに、演奏はリズミカルに展開され、館内の熱気が高まっていく。熱くなる客席を受け、二人はホットなボッサ・ナンバー「アナジョヨ(抱きしめてよ)」を畳みかけて、サビの前でジョンヨルはサムアップ。さらに「カモン」というメッセージを代弁するかのような両手のジェスチャーでファンを煽り、「アナジョヨ」という歌声にファンも「アナジョヨ」とコーラスでレスポンス。「抱いて」と声を一つに揃えたファンにジョンヨルは「ありがと!」と感謝し、2番では彼の煽り要らずで、フロアが「アナジョヨ」と唱和。僕が「歌って」と頼んでも、皆が一緒に歌ってくれるか気になる……ジョンヨルはそう明かした後に「(最初から) 全部、ファンの方と一緒に歌うべきでしたね」と話し、次もシングアロング系かと思ったのだが……。

高まった興奮を二人は悲し気な失恋ソング「クデワナ(君と僕)」で鎮めていく。ここでは二人編成のシンプルなセットで演じ、オレンジ色のピンスポットが当たった二人の演奏にファンは吸い込まれるように聴き入っていた。そして再びバンド編成に転じた後は10CMの核の一つになっているエロさを秘めた「きみのはな」を。一見、“花”がテーマの歌・風だが、「植物(花) に関する歌詞ではありません。本当の意味が分かる人はエロい人です」とフロアを笑わせ、レゲエ調の「アフリカ青春だ」を挟んだ後も、メンバーが“オンエア不可”と太鼓判を押すエッチ・ソング「Hey Billy」をスペシャル・バージョンで。二人はこの日のために「子供はどうやってできるの?」「お母さんとお父さんが愛し合って……」という日本語のナレーションを挿入し、スクリーンには蓮實重彦の小説「伯爵夫人」の帯の字を大写し。伏字だらけの文章が妖しげなエロスを醸し、会場はエッチな雰囲気と笑いに包まれた。


ロックンロールなステージで会場をホットに

エロい貌を見せた後は楽しいナンバーが続くハッピータイムだ。赤く染まったステージで演じた「Oh! Yesh!」ではチョルジョンのギタープレイが大きな興奮を呼び、ジョンヨルのタフで艶やかな歌声に全員がロックンロール! そしてドラムのビートに合わせてファンが手拍子をとれば、そのまま流れるようにロックンロール・バージョンの「アメリカーノ」に転じ、ジョンヨルは歌声に全力を注ぐようにパフォーマンス。その後、テンポを落とし、本公演のテーマ曲ともいうべき「オヌルパメ(今夜に)」をアーバン&ムーディーに演じ、チョルジョンがハードボイルドなナレーションを添える。そしてラストでジョンヨルが両手を広げてポーズを決めると、客席から「エロい!」との掛け声が飛んだ。


カップルの破局を願うブラックな桜ソング

続くMCで「最近、あまり眠れない人はいますか?」と尋ねたのは次の曲への前フリだ。そんな人が安らなに眠れるように「Good Night」を歌ってあげようという企画だったが、応える人はおらず、ジョンヨルは自らフロアに降りて、ファンの女性をピックアップし、ステージに招待。レゴ風オブジェに腰かけた二人は肩を寄せ合い、ラブリーモードだ。そして悲しい片思いソング「ストーカー」を挟んで、再びハッピータイムに転じていく。

「サランウン・ウンハス・タバンエソ」ではジョンヨルの呼びかけ無しで、ファンがサビを合唱し、「次の曲ももっと大きく歌って下さい」とのリクエストに客席は「ネェ(はい)」と声を揃える。こうして強い一体感が熟成された中で演じた「スダムスダム(なでなで)」は、鍵盤奏者がピアニカを、ベースがシェイカーを手にし、楽しくてハッピーに! ジョンヨルは身体で大きくリズムをとり、途中、イヤモニを外して、ファンの歌声に聴き入った。

ピアニカのイントロが郷愁を誘う「クリウォラ(さよなら)」に続いたのは、4月というタイミングにピッタリな10CM流・桜ソングの「春が好き??」。一般的な桜ソングの真逆を行き、春を楽しむカップルをディスるこの曲は昨年最大のヒット曲。「ファンの心からの声が必要」と言うジョンヨルのリクエストに応えて、ファンも一つになって「マンヘラ(ダメになれ)」とシャウトすれば、ステージもフロアもオール・ブラック。舞台は桜色に染まるが、場内はカップルの終焉を祈る呪いの言葉で一つになるというシュールさがまた楽しい。そして本編最後の「ピミルヨネ」で、ファンはまた「パ、パ、パ~~」と声を揃えて、楽しさ溢れる幕締めとなった。

アンコールでも二人は“らしさ”を見せる。禁煙化社会に牙をむく「タバコ王スモーキング」はロック魂を炸裂させ、ラストは「I Love 埼玉!」とシャウト。公演の最後に相応しいと紹介された「コロナ」は二人にピンスポットが落ち、彼らはこの日の光景を永遠に記憶に刻むかのようにじっくりと演じた。そしてフィナーレは「美しく終わらせたい」との思いから「Fine Thank You And You?」をチョイス。「トゥルルル~~」というコーラスを添える客席にジョンヨルは優しい微笑を見せて、ファンとアーティストが互いに支え合うのを実感した。

日本に来て4年が経ったという10CM。この公演の終盤、ジョンヨルは「笑ってくれて、会場を埋めてくれてありがとう」と感謝の気持ちを述べた。そして「また、日本に来た時は、馴染みの顔をたくさん見たい」とも。過去最大規模となったこの日、いつも以上に男性の観客が多く、性別を超えて“顔馴染みのファン”が増えているように感じた。
また、ジョンヨルがバンドメンバーに「準備できた?」と尋ねると、すかさずファンが「ネェ」と答える一幕もあり、こんなエピソードからも、アットホームな雰囲気が伝わるだろう。

「10CM Night~オヌルパメ」シリーズの集大成ともいえる本公演を成功裏に終えた10CM。その音楽に魅せられるファンはこれからもどんどん増え続けることだろう。

ライター:きむ・たく

■公演概要
「10CM Night~オヌルパメ Vol.4」
日時:2017年4月22日(土) 開場17:00 / 開演18:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

【セットリスト】
01. セビョク・ネシ(午前4:00)
02. オヌル・バムン・オドゥミ・ムソウォヨ (今夜は暗闇が怖いよ)
03. Healing
04. キロヤオーブン (That 5minutes)
05. ネ・ヌネマン・ポヨ (僕の目にだけ見える)
06. アナジョヨ (抱きしめてよ)
07. クデワナ (君と僕)
08. きみのはな
09. アフリカ青春だ
10. Hey Billy
11. Oh! Yesh!
12. アメリカーノ
13. オヌルパメ (今夜に)
14. Good Night
15. ストーカー
16. サランウン・ウンハス・タバンエソ
17. スダムスダム (なでなで)
18. クリウォラ(さよなら)
19. 春が好き??
20. ピミルヨネ
<Encore>
21. タバコ王スモーキング
22. コロナ
23. Fine Thank You And You?

日本公式サイト:http://www.10cm-kjmusic.com/

記者 : Kstyle編集部