「サンタバーバラ」ユン・ジンソ、恋愛下手な素顔から女優として常に率直でいられる理由

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広告業界の女性と音楽監督の男性が出会った。仕事で出会った人と絡むのは嫌だという女性は、仕事も恋愛も捨て所がなく完璧だ。こうやって出会ったのも縁ではないかとお人好しの笑顔を見せる男性は隙だらけでミスを連発する。あまりにも違う二人の男女が特別な恋愛を始める。映画「サンタバーバラ」(監督:チョ・ソンギュ、制作:映画社チョジェ)の話だ。

「サンタバーバラ」はロマン主義者の音楽監督と完璧主義の広告業界のキャリアウーマンが展開する率直な恋愛を描いた作品だ。映画社スポンジの代表で「おいしい人生」(2010)、「まさかそんなはずでは」(2012)、「私が告白したら」(2012)で監督としての頭角を現したチョ・ソンギュ監督の4度目の演出作だ。映画は劇的なドラマの代わりに日常のリアルさで、涙も鼻水も全て出させるどろどろ系の物語の代わりに、俳優たちの真心を込めた演技で観客の心を動かす。

映画「バス、停留場」(2002)のエキストラとしてデビューし、翌年にパク・チャヌク監督の「オールド・ボーイ」でフィルモグラフィーに初めて強烈な一線を画したユン・ジンソは、今回の「サンタバーバラ」では肩の力を抜き、私たちの日常に実際に生きているようなリアルな演技を披露した。一見隙がないように見えるも、意外と弱いところのある広告業界の営業担当スギョン役を演じたユン・ジンソは久しぶりにスクリーンに復帰し、明るく澄んだ笑顔で観客の前に立った。

「いつも死んで、病気で、暗い演技を多くしてきたためか、日常的な演技ができるという点が気に入りました。自然な演技を披露したくても、そのようなチャンスに恵まれていなかったわけです。その渇きを『サンタバーバラ』が解消してくれました。何よりもアメリカのサンタバーバラに行けるというのに、出演しないわけがないでしょう?(笑) 『サンタバーバラ』の撮影前には、カリフォルニアに行ったことがありませんでした」

写真=映画「サンタバーバラ」スチールカット
スギョン(ユン・ジンソ)はジョンウ(イ・サンユン)とお酒を飲んだ翌日、二日酔いをしているジョンウに「昨日のこと、覚えていませんか?私たち付き合うことにしたでしょう?」と話した。スギョンに好感を抱き、図々しく接していたジョンウには嬉しい言葉だった。こうやって突然(?)始まった二人の恋愛は広告業界の営業担当者と音楽監督という職業が絡んで上手くいかない。そして数年後、CMのためにサンタバーバラを訪れた二人は偶然再会し、恋とまでは言えない微妙な緊張感を感じる。意外なアンサンブルを披露するユン・ジンソとイ・サンユンの後ろに見えるサンタバーバラの柿色の夕焼けはこの映画の白眉だ。自然と恋愛がしたくなった。

「イ・サンユン兄さんとは最初から猫を被ることなく、お互いに率直になれました(笑) 初対面なのに酔ってしまったので。その分、すぐに仲良くなれました。面白いのは、イ・サンユン兄さんはソウル大学出身だとか、オムチナ(勉強ができて性格もよく、何でもできる完璧な人)というイメージとは違って、少しチョ・ソンギュ監督と似ています。1秒も休むことなくおしゃべりをしたり。そうですね、監督もイ・サンユン兄さんもおいしいお店をたくさん知っています。もちろんソウル大学出身ならではのきちんとした面もあります。おいしい店の位置をきちんと覚えているとか(笑)」

ユン・ジンソの本名はユン・スギョンだ。劇中の人物の名前と同じだ。実際、ユン・ジンソの性格がキャラクターに少なからず投影され、そのためにチョ・ソンギュ監督は制作の途中に役名を変えたという。スギョンを演じたスギョンは「私から見ても私と似ているところが多い」と伝え、笑顔を見せた。

「言葉遣いから似ています。私もスギョンのようにきっぱり言うくせがあるんです。相手を傷付けようとしているわけではないのですが、やや投げつけるように言う口調ですね。劇中でスギョンがソヨン(イ・ソム)を可愛がっているみたいに、私も意外と後輩を可愛がる性格です。一見周りに男性が多そうに見えるみたいですが、実際はそうではありません(笑)」

ある意味「サンタバーバラ」は一種の恋愛のアドバイスブックでもある。財布が軽い男性のために何事もないように「私がご馳走します」と言うセンス、何気なく食事の約束をとり、自然とお酒の席までつなげる緻密さ。ユン・ジンソは「私もこの映画を見て『ああ、恋愛をするためにはこうしないとな』と気付いた」と打ち明けた。

「私、恋愛が下手なんです。『サンタバーバラ』を見て、『ああ、男性に食事をおごってほしいと言うべきなんだな』と気付きました。恋愛をしたいですよ。開かれている人に出会いたいです。自分が生きてきたルールに合わせてほしいと求める人の中で、開かれた人は見たことがありません。そのような人とは一緒に映画を見ても面白くないし、ご飯を食べても面白くないですね。去った恋、過去をめぐって一種の線を引く人もあまり好きではありません」

「オールド・ボーイ」のユン・ジンソの登場はとても強烈だった。謎めいた魅力と悲しさを同時に秘めているような澄んだ顔でカメラを見つめるユン・ジンソの顔はそれだけで一本のドラマのようだった。その強烈な印象は10年という歳月が経っても消えることはなく、依然人々はユン・ジンソに「オールド・ボーイ」以上の何かを期待し、求めている。“普通の女優とは違う何か”を求める人々の期待は、時にユン・ジンソの肩を強く押さえつけた。その悩みの糸口を少しではあるが解いてくれたのが、今回の「サンタバーバラ」だという。

「私にも何なのか分からない、人々も分からないその正体不明な“独特な感じ”、期待のためにとても大変だった時期があります。実際、『サンタバーバラ』は日常的で自然な演技ができるということだけで良かったのですが、おしゃべりなイ・サンユン兄さんと綺麗なイ・ソムちゃんと、とても明るくて健康的なエネルギーを交わしながら撮影することができ、本当にこの上なく良かったです。『サンタバーバラ』をきっかけに私の新しい一面を届けて、演技の幅を少しずつ広げていきたいと思います」

ユン・ジンソはインタビューの最後で「少しの対価も支払わずに、本物の役者になるのは難しい」も力強く語った。忠武路(チュンムロ:韓国の映画界の代名詞)では女優がメインになる映画があまり制作されない状況が長く続いているが、大作商業映画という枠から少しだけ離れると、女優が自身の演技力を十分に発揮できる作品は溢れるほど多いという。

「女優にできる多彩なキャラクターが、『サンタバーバラ』のようなミドルクラスの作品に本当に多いです。感情と台詞で遊ぶ、面白い演技ができる機会は多いということです。このような映画(低予算の商業映画)に対する悩みや愛情、本気があってこそ、そのような機会に恵まれます。もちろん私だって、商業的な成功は嫌いではありません。ただ私に合わないキャラクター、映画に突然出演してパフォーマンスのような演技をすると、見る人もおかしいと思うでしょう?もちろん合うキャラクターだったら断る理由はありません」

昨年、エッセイ集「VIVRE SA VIE」で作家としてもデビューしたユン・ジンソは下半期にもう一つの本を発売する予定だ。エッセイと小説の中間に当たる性格の本だという。「VIVRE SA VIE」で自身の深い内面と人としてのユン・ジンソの姿を打ち明けた彼女に、常に率直でいられる理由について質問した。

「誰かによく評価されたくて女優をやっているわけではありません。みんなが私を好きにならなくても良いんです。私が本当に好きな映画に出演できて、意味のある演技ができれば満足できます。わざわざ誰かに媚びて、自分を隠したくはありません。結局はバレてしまいますよね?私が率直でいられるのは、私の中に存在するものに対して愛情とプライドがあるためではないでしょうか」

記者 : キム・スジョン、写真 : キム・ジェチャン