「いとしのソヨン」「清潭洞アリス」が見せたヒロインの進化論

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※この記事にはドラマ「清潭洞アリス」の結末に関する内容が含まれています。
写真=KBS

現実を反映したキャンディの変化、それにもかかわらず変わらないシンデレラのファンタジー

過去のドラマで地位向上を遂げる“キャンディ”(漫画キャンディ・キャンディの主人公、お転婆で元気に困難を乗り越えるキャラクター全般を意味する)たちは、男性中心の社会に最適化された従順な女性のキャラクターがほとんどだった。しかし、女性の社会進出が増え、形式的にでも男女平等になっている今日、男性依存的なキャンディはもはや女性たちにとって歓迎される存在ではない。

2000年代に入り、新しく登場したキャンディは、時代の流れに合わせて進取的で能動的な性向に変身を図る。世間知らずで優しくきれいなだけの過去のキャンディに比べて、新世紀のキャンディたちは比較的自身の世俗的な欲望に忠実であり、自身の願いを叶えるために、先に王子様に近づく積極性を持っていたりもする。

しかし、2013年のドラマに登場するキャンディも最初は王子様の求愛を受けるシンデレラを望んでいたわけではない。彼女らは自身の力だけで成功できる資質を十分に備えていた。本人たちも他の誰かの助けではなく、自分で世界に立ちたいという夢を持っていた。しかし、優れた才能を持っているにもかかわらず、努力と誠実さだけでは彼女たちを取り巻く不遇な環境から脱出できないと判断したキャンディたちは、シンデレラを夢見て、富裕層が集う清潭洞への嫁入りに挑む。

実際に平凡な家の女性が財閥の男性と結婚する確率は極端に低いが、ドラマでのキャンディと財閥3世の結婚成功率は100%に近い。しかし、「シンデレラと王子様が出会って幸せに暮らしました。めでたしめでたし」で終わるファンタジーとは違い、2013年のシンデレラのサクセスストーリーは、ただ結婚の成功にとどまらない。また、キャンディたちがシンデレラに変装して王子様に会う過程も、さして美しく純粋なものには見えない。

写真=SBS
それも玉の輿に乗るためにキャンディであるふりをするSBS「清潭洞アリス」のハン・セギョン(ムン・グニョン)がついた嘘は、SBS「野王」、KBS「いとしのソヨン」のキャンディに比べると可愛いレベルだ。「いとしのソヨン」のイ・ソヨン(イ・ボヨン)はそもそも財閥との結婚そのものに積極的ではなく、父親の正体を隠すしかない特別な事情があった。しかし、「野王」のチュ・ダヘ(スエ)は、財閥3世との結婚のために自身にそれまで献身的だったハリュ(クォン・サンウ)に意図的に冷たくし、顔を背けるようなひどい悪女の本性を見せる。

90年代末までは可愛く優しいだけだったキャンディたちが、自分たちの地位向上のために自身の正体まで隠す行動までもはばからず、緻密さまで備えた背景には、自分で自分の将来を開拓できる女性たちの能動性を反映しようとする意図も見える。

以前とは違い、宮殿入りに成功したシンデレラの挫折と脱出の過程を描いていることも興味深い。ふしぎの国への旅行を終え家に帰るアリスとは違って、「清潭洞アリス」のハン・セギョンが見せた結末は清潭洞の原住民チャ・スンジョ(パク・シフ)と一緒にうんざりする清潭洞の夢の国の旅行を続けていくということを暗示した。その半面、「いとしのソヨン」のイ・ソヨンは、3年間財閥家の嫁、お金持ちのお坊ちゃんカン・ウジェ(イ・サンユン)の妻として献身的に暮らしたノラの家から脱出して自身なりの人生を生きると宣言する。

保守的なホームドラマの特性上、イ・ソヨンとカン・ウジェがよりを戻す結末も排除できないが、過去3年間カン・ウジェとともにした時間が幸せばかりではなかったと打ち明けるイ・ソヨンの告白は、お金持ちの家に嫁ぎ、幸せに暮らすとだけ思っていたキャンディの寂しい自嘲がにじむ。自ら玉の輿のチャンスを蹴飛ばして出た「清潭洞アリス」のソ・ユンジュ(ソ・イヒョン)の選択も、やっとのことで手にした王子妃の席から追い出されないために戦々恐々していただろう過去のシンデレラから一層進化した姿を見せる。

しかし、キャラクターが変わっただけで、以前も今も財閥家系に入る機会を与えられたキャンディがやがて王子様から選ばれるという成功神話はドラマだから可能なファンタジーだ。特に、2013年のように階層間の移動がさらに難しくなった時代には、ドラマの主人公を通じて一瞬だが地位向上の欲求を満たすことも贅沢なことに思えるほどだ。

以前とは違って女性の権利が拡張し、女性たちの社会進出が増えているとしても、財閥の男性の助けを得て地位向上に成功する女性たちのストーリーは、依然としてドラマでよく活用される展開だ。ただ時代が求める女性像と両親から受け継いだ富によって子どもたちの将来がある程度決まる現実に合わせてシンデレラを夢見るキャンディもさらに大変になっただけだ。

日増しに階級の固定化が激しくなり、一生懸命に努力すれば成功するという希望さえ抱きにくくなった時代、藁をも掴む気持ちで清潭洞への“就婚”を夢見て数々の苦労を経験する大変なキャンディの孤軍奮闘は当分続きそうだ。それも現実では不可能なシンデレラ成功ファンタジーのもう一つの変奏曲に過ぎないだろうが。

記者 : クォン・ジンギョン