「WE ARE THE HIPHOP BOYS!」イ・ヨンジン監督“失敗して情熱を哀れに思われるのが嫌でした”

10asia |

第10回アシアナ国際短編映画祭(以下、AISFF)の“郵政事業本部ファンドプロジェクト2012”の支援作である「WE ARE THE HIPHOP BOYS!」は、無名の3人組ヒップホップグループが自分たちの初めての公演に向かって突き進んでいくストーリーを描いた映画だ。小人症だがヒップホップ精神だけはちっとも小さくないリーダー“ブッダ・ハンサム”、食欲旺盛のフリーター“アナコンダ”、そして、郵便局で働きながらヒップホップへの夢を見続ける“センス男”の姿は、様々な問題を抱えている現在の20代の若者にそっくりだ。一見、本物のヒップホップグループのドキュメンタリーのように見えるこの作品は、イ・ヨンジン監督の頭の中の想像が何度もバージョンを変え、一番現実味のあるバージョンを選んで作り上げた劇映画である。俳優たちも短い制作期間の間、自分たちで呼吸を合わせながら練習したため、ヒップホップミュージシャンをそれなりにうまく演じることができた。

「今の若者たちは、努力することを“情けない”と思っているように感じました」

「WE ARE THE HIPHOP BOYS!」で最も魅力的なキャラクターである“ブッダ・ハンサム”は、その役を演じた俳優キム・ユナムからアイデアを得て誕生させたキャラクターである。イ・ヨンジン監督はSBS「気になる話Y」にお笑い芸人志望生として出演したキム・ユナムのエネルギーを見てびっくりしたという。ある程度、新人の新鮮さが意図されたキャスティングだったはずだが、自分でコミカルな番組へと雰囲気を変えてしまう彼のエネルギーと堂々とした姿が深く印象に残り、助監督が彼の連絡先を様々な手段で調べたほど、彼のキャスティングに力を入れた。映画でも最もドラマチックな措置に使うことができる要素が“ブッダ・ハンサム”の障害だが、この映画ではまるで最初から彼には障害などなかったかのようにまったくそれに触れない。

「新派は完全に排除したいと思ったし、ブッダ・ハンサムは一番傲慢で堂々としたキャラクターに描きたいと思いました。主人公の3人はみんなそれぞれ問題を抱えていますが、この子は自分の問題をまったく認識していないように描きたかったんです。今も彼と一緒にお酒を飲みながら話します。『これからも君の問題点を消耗したり利用するキャラクターとしては絶対に活動しないでね』と」

イ・ヨンジン監督があえてヒップホップをやりたがる“ルーザー(敗者)”たちのキャラクターを描いた理由は何だろうか。

「社会に出て仕事をしながら出会った若者たち全員から感じられる、同じような雰囲気がありました。中には、一生懸命頑張っているのに、そんなに頑張ってはいないふりをする人もいました(笑) 彼らは情熱を持って最後の力まで出して努力することは“クール”ではなく、“情けない”と思っているように見えました。『どうせできないのに』と思い、もし結果が良くなかったら情熱そのものがむしろ哀れになると思うことが嫌でした。そうじゃないということを見せたかったです」

だからだろうか。映画の中でヒップホップボーイズは、ため息さえもまったくつかない。ただ、小さな“抵抗”を繰り返し、それがダメになったら“練習”を続け、どんなに小さなチャンスでも逃さないように頑張る。そのため、ドラマチックな構成が弱くなった面もあるが、一方ではそのエネルギーに失笑する中で「いいじゃん。あんなふうに生きても別にいいじゃん」と思い、観客たちが肩を張るようにする面もある。

お金より貴重な仲間との出会い

この“ルーザー”たちが四方八方で障害に突き当たるこの挑戦記の中で、イ・ヨンジン監督に一番似ているキャラクターを選ぶとしたら、それは郵便局で自分の席を探すことに戦々恐々する小心者の“センス男”であるだろう。そして、映画の後半で彼はどんでん返しを見せてくれる。イ・ヨンジン監督も夢と現実の間で葛藤した末に、現実を選んだことがある人だ。彼は、夢ばかりを追って周りに迷惑をかけ、自己責任を負うことができない人にはなりたくないと考え、他の仕事を始めた。そして昨年、「Iyagis」というバイラル・マーケティングの映像制作会社の若いCEOになった。

「映画への夢を諦めず見てきましたが、もう遠くなり過ぎたという気持ちがありました」

その時、仲間になってくれたのがAISFFだった。2011年「チョンアのソウルアドベンチャー」という短編が、AISFFと日本のSHORT SHORTS FILM FESTIVAL&ASIAの韓国トラベルショートプログラムに招待され、AISFFの公式予告映像を制作したこともある。切実な彼の心が通じたのか、今年までその縁が繋がり、郵政事業本部ファンドプロジェクトの支援を受けるようになった。知識経済部の傘下にある郵政事業本部の文化芸術分野への支援事業の一環であるこのプロジェクトを通じて、彼は制作費として2千万ウォン(約146万円)を支援された。

「けれど、会社はまた損害を受けました。職員たちの助けがなかったらたぶん、この映画を作ることができなかったと思います」

彼にとっては制作費の支援よりも、これから年に1本ずつ一緒に映画を作ってみようと意気投合ができる心強い仲間たちの存在を再確認できたことが嬉しかったのであろう。そして、地に根を下ろしたままでも夢に向かって進むことができるという勇気ができたことこそが、彼が受けた一番大きな支援であると思う。

記者 : キム・ジヒョン、写真 : イ・ジンヒョク、編集 : キム・ヒジュ、翻訳 : ナ・ウンジョン