【姉の品格 Vol.1】キム・ジョンナン『紳士の品格』出演「これからは演技らしい演技ができると思う」

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1998年から休まず、毎年3~4本のドラマや映画に出演してきたキム・ジョンナン。そんな彼女が今まで演じてきた人物は、およそ50人余りである。そして、その数々の役の名前の中でもSBS「紳士の品格」のパク・ミンスクは、現在もっとも熱い名前だ。しかし、彼女に“再発見”というレッテルを貼るのは、今になって彼女の魅力を知った人々の大騒ぎであるだけで、彼女にとっては失礼な表現である。彼女は“清潭(チョンダム)の魔女”と呼ばれる以前から、オ・ヨンスク脚本家に「台本を越える演技」と絶賛された魔女のように恐ろしいヤン夫人(KBS「九尾狐伝~愛と哀しみの母~」)を演じた。また、パク・ミンスクよりクールな“大人の女性”であるSBS「愛の選択~産婦人科の女医」のキム・ミンソンに扮した。さらにKBS「カクシタル」で、カクシタルと同じくらいミステリアスだったイ・ファギョンも演じている。このように、最近の作品だけでもこれほど豊かな出演作を持つ彼女にとって、「紳士の品格」はもしかしたらただのスタートに過ぎないかもしれない。「これからは演技らしい演技ができると思う」という自信は、その考えをさらに固めてくれた。“ミンスク姉さん”のように心強い“ジョンナン姉さん”が、着実に一歩ずつ歩いてきた人だけができる話を聞かせてくれた。時間をただ流す代わりに、丁寧に積み上げてきた女優たちに捧げる“姉の品格”。その1番目の走者が、キム・ジョンナンである。

「パク・ミンスクを愛さずにはいられない」

―まず、「紳士の品格」の話をしたいと思う。パク・ミンスクはキム・ジョンナンという女優にターニングポイントを与えてくれたキャラクターだが。

キム・ジョンナン:パク・ミンスクは非常に心強いキャラクター。実は、ラブコメディは私にあまり合わないジャンルだと思う。私はホラーのようなジャンルが好きで、「紳士の品格」も“清潭(チョンダム)の魔女”だからやると決めた(笑) パク・ミンスクは視聴者たちが話したいけど口に出せなかったことを、一気にすっきり解消してくれたと思う。視聴者たちはパク・ミンスクの名台詞の中から、自分の答えを探すことができたから。例えば、「なぜ私が勉強をしなければならないのか。世の中は不公平なのに」と思うとき、パク・ミンスクがキム・ドンヒョプ(キム・ウビン)に「今、あなたが見たことがこれからあなたが生きる世界であり、お金がない人が勉強をしなければならない理由よ」と言った台詞で、すべてが説明されるのである。彼女は明瞭で格好良いキャラクターである。態度がはっきりしていて、間違ったことを見たら我慢できないような女性。お金をどんなふうに使ったらいいのか、はっきり分かっている女性。余計なことは言わないけど、愛に関しては他の人と同じく胸を痛める女性。そんな彼女を愛さずにはいられない。

―特に、女性視聴者から絶対的な支持を受け、彼女たちに「この厳しい世の中にパク・ミンスクのような姉さんがそばにいたらな」と思わせた。

キム・ジョンナン:今も年下の人たちがTwitterで悩みを相談してくる。「姉さん、こういう時はどうすればいいですか?」と真面目に聞いてくるので、答えないわけにもいかないし、何と答えれば良いのかもよく分からない。短くて鋭いアドバイスをしてくれると期待しているので、適当に答えることもできない。例えば、「姉さん、大学受験まで残り後80日になりました、どうしたらいいですか?」と聞いてくる人に、適当に答えることはできない。それで、一時期とても悩んだ。何と答えれば、その人の力になれるのか、本当に悩んだ。

―実際、一緒に仕事しているスタッフや同僚俳優たちの間でも姉のような立場だと思うが、キム・ジョンナンはどんな姉さんであるのか?

キム・ジョンナン:優しいときは本当に優しくて、間違ったときはそれをビシッと言うタイプ。マネージャーたちを褒めるときも、美味しいものをおごったり、お小遣いをあげたりして、本当に明確に褒める。でも、ミスに対しては厳しく言う。適当に注意して終わらせたら、相手も私のことを正確に把握しにくくなるから。相手も私が好きなものと嫌いなものが何なのかはっきり把握していれば、仕事をしやすくなるけど、そういうことが曖昧だとミスが多くなる。

―自分の感情を素直に表現する方だと思う。

キム・ジョンナン:素直に表現するし、多様な感情を持っている。血液型がAB型だからか、感情表現に対して忠実で、“感情露出症”と言われるほど(笑) 時にはかなり鋭く、時には突然少女の感性に変わるときもあり、皮肉っぽいときもあるなど、感情の差が激しい。気分がいいときは周りの人たちが「本当にキム・ジョンナンなの?」と思うぐらい大騒ぎするけれど、辛いときはひたすら憂鬱になる。でも、それも年を重ねるにつれ、妥協するようになった。それでも、相変わらず映画やドラマを見たらよく泣く方。自分の泣く演技を見ながら、自分で泣いたりもする(笑) 映画「青ぶどうキャンディー:17年前の約束」のモニタリングをしながらもたくさん泣いた。

「少し遠回りしても、堂々と着実に一歩ずつ歩んで行きたい」

―映画「青ぶどうキャンディー:17年前の約束」のジョンウンは、まだパク・ミンスクを手放すことができない観客たちにとっては違和感があるかもしれない。迷いのないパク・ミンスクとは違って、ジョンウンは過去の傷に縛られている閉鎖的な人物だから。

キム・ジョンナン:ジョンウンは本当に難しい役だった。説明がほとんどなく、隠されたことが多くて、理解するのが難しかった。今まで演じてきたキャラクターよりも難しかった。ジョンウンはソンジュ(パク・ジ二)やソラ(パク・ジユン)に比べて非現実的であり、曖昧で危うい女性と言えるかな。今もその人物について100%理解しているとは言い切れない。ただ、私は作品を準備するとき、その人物の過去のストーリーを考えながら情報をなるべくたくさん集めようと努力する。そのために最初は、学校で学んだように人物の基本である背景や家族、習慣などを推理してみる。ドラマはストーリーが進むにつれ、新たな情報が出たり、他の人物の台詞から推測して得られるものがあるから、あまり難しく感じないけれど、ジョンウンは与えられた情況が本当に少なかった。それでも、監督が女性だからか、映画には思春期の少女たちの繊細な心理や男性が理解できない女性たちの心理が本当によく描かれていて良かった。

―SHINeeのファンであったり、Twitterでリボンのヘアピンをした写真を見ると、今も少女の心を持っているように思える。

キム・ジョンナン:少女的な趣向を持っている部分がある。猫を飼っているけど、その子たちとよくおしゃべりしているからなのか、言葉遣いも少し少女っぽくなった(笑) ターキッシュアンゴラとシャムの夫婦と子猫まで一家族いる。しばらくの間、忙しすぎてその子たちを実家に預けたけど、親も動物が大好きなので、私に返そうとしない。「猫に執着しないで、外に出て男性と会いなさい」とよく言われる。名前はシャイニーだと知られているけど、本当はSHINeeより先につけた名前だ。シャインという名前を、呼びやすくしてシャイニーと呼んだ。だからか、SHINeeを見たとき、「これは運命なんだ!」と思って彼らが好きになった(笑) でも、最近は色んなところでSHINeeのファンであることを明かしてしまって、常にSHINeeのファンたちを意識してしまう。「いい年してSHINeeが好きなの?」と言われたら、どうしようって。アイドルのファンは怖いと聞いたけど、「姉さんも見る目ありますね。一緒に応援しましょう」という雰囲気で良かった。

―最近のインタビューを読んだら、デビューの頃は幼かったにも関わらず、少女というよりむしろ頑固な性格だったようだ。不合理な制作環境に不満を持ったりもしたようだが、新人女優としてそういう姿を見せることは、決して簡単ではなかったと思う。

キム・ジョンナン:その時は怖いものがなかった。元々少し気が強い性格でもある。幼い頃、母親を亡くして大変な時期があったけど、そのときから成功したいという願望を持っていた。何であろうと、自分の分野で最高になろうと思った。特に、勝負欲がものすごく強かったその当時、ただ純粋に演技がしたくて行った現場はまったく変な雰囲気だった。人間として尊重してくれず、とんでもない状況をたくさん見てきた。プライドを守るためによく喧嘩をした。しかし、今振り返って見ると、そういうことがすべて大切な過程だったと思う。時間が過ぎてから考えてみると、そのように傷ついたこともすべて経験であるから。もし、そういうことを経験できなかったら、傷つくことに鈍感になれなかったかもしれない。

―KBS「明日は愛」で大人気を博した直後、仕事を休みながら演技を続けるべきかと悩んだようだが、それにも関わらず、続けてカメラの前に立つと決めた理由は?

キム・ジョンナン:専攻が演劇映画学だったから、学校に戻った後もワークショップ公演に行ったり、論文を書くためによく公演を見に行った。しかし、ステージの上に立っている俳優たちを見るたびに、演技がやりたくて気が狂いそうになった。頭の中には「あそこは私がいるべき場所だ」という思いしかなかった。そういう刺激を絶えず受けていたので、演技をせずにはいられなかった。「結局、私の道はこれしかないんだ」と結論を出した瞬間、他のものは私が越えなければならない山となった。

―結論を出した後、スランプはなかったのか?

キム・ジョンナン:少し遠回りしても、堂々と、一歩ずつ歩んで行きたいと思った。その考え一つだけで、演技一筋でしっかりと歩むことができた。その後、スランプと思える時期は特になかった。もちろん、人々に無視されたことはある(笑) しばらくの間、短編ドラマだけに頑張って出演したときがあったけど、当時は短編ドラマに出演する俳優に対する視線があまり良くなかった。売れている俳優は短編ドラマに出演しないというような偏見があったというか。しかし、私は仕事をもう一度始める立場だったので、短編ドラマは多様なキャラクターを演じることができ、とても好きだった。そのときにたくさん鍛えられたとも思う。しかし、ある日、放送局で通り過がる人が私のことを「短編ドラマの専門女優」と呼んだ。その言葉に傷ついたが、傷ついたのはその時だけだった。私が好きでやっている仕事だから。

「女優にとって年を重ねることは、恐れることではない」

―そうやって、ドラマ、リポーター、バラエティ番組まで、20代を忙しく過ごした。

キム・ジョンナン:熾烈に走り続けた。20代があまりにも熾烈すぎて、いつ30歳になるかなと指折り数えて待ったほどだ。疲れ果てたし辛かった。スランプが来たり、愛に失敗したり、色んなことを経験したから、時間が本当にゆっくり流れる感じだった。それでも、後悔はないほど、本当に頑張って生きたと思う。

―なぜそんなに30代になることを願ったのか?

キム・ジョンナン:30代になったら、安定すると思ったから。実際、20代よりは安定したけど、あっという間に過ぎてしまったので、特に話すことがない(笑) 休まず、作品に出演し続けた。しかし、39歳になり、少し大変だと思った。29歳のときと、39歳のときはまったく違ったから。29歳のときは早く30歳になることを待っていたので、まったく不安がなかった。むしろ、嬉しかった。しかし、39歳のときは少し憂鬱になった。言葉では説明できないけれど、年を取ったからでもないし、何か特に理由があるわけでもなかったけど、何となく落ち込んでいた。でも、それも少しの間だけだった。受け入れたら、気楽で気分も良くなった。今は演技らしい演技ができると思うし。女優にとって年を重ねることは、決して恐れることではないと思う。

―それでも、カメラの前に立つ職業の人として老化に対する恐れを克服することは、決して簡単なことではないと思う。

キム・ジョンナン:マッサージを受けたりケアもする。でも、目つきから感じられる年齢は隠すことができない。その目が人生を語っているので、いくらしわのない顔をしていても、目つきや言葉遣い、身振りからその人の年齢が感じられる。だから、“時を遡ることはできない”という言葉が合っていると思う。演技をする女優だけじゃなく、どんな女性であろうが、年を重ねると目つきが深くなる。それは、物を見るとき、少し違う意味を込めて見れることを意味する。私も目つきが少し奥深くなった感じもするし(笑) 最近は年を忘れて過ごしている。40歳になる前までは歳を数えながら生きたけど、今は私が40歳か、41歳か、42歳かと瞬間的に戸惑ってしまう。本当に数えなくなった。愛する仕事に夢中になっているからでもある。だから、あまり寂しくない。もちろん恋人がいたら、より幸せだったと思うけど。だけど、いないから!(笑) だからといって、不幸でもないし、寂しくもない。自分で寂しいとしきりに思ってはいけない。楽しいことを探さず寂しいと思うばかりだと、どんどん泥沼に陥ってしまうから。世の中が変わって、面白いことがたくさんあるし、意味あることもたくさんある。

記者 : イ・ジヘ、写真 : イ・ジンヒョク、翻訳 : ナ・ウンジョン