「共謀者」映画よりもっと怪物のような現実

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写真=映画会社チェウム

残酷な現実が映画の題材になる“怪物のような現実世界”

実は「共謀者」の題材である臓器密売は、新しい題材とは言えない。これは、爆発的な人気を集めた「アジョシ」でも登場した。同映画で臓器を摘出される被害者は“丸太”と呼ばれる。臓器密売は、合法的なビジネスではない。需要と供給の法則が崩れた医療界に存在する“違法なニッチ市場”である。ここでは、臓器密売の実態を暴く映画「共謀者」の中で誰が真の怪物なのかを読者に、そして観客に問いたいと思う。

第一の怪物はヨンギュ(イム・チャンジョン)だ。彼は、臓器密売業界では最高の実力者と呼ばれる。犠牲者を探し、誰も知らないうちに臓器を摘出した後、それを臓器密売市場に売り払うことは、韓国でヨンギュの右に出るものはいない。

違法で臓器を摘出する過程で同業者が犠牲になってからヨンギュは、臓器密売から足を洗う。だが、ヨンギュを再び臓器密売市場に帰らせたきっかけは、彼の借金だった。知り合いの弟に借りた借金は、数億ウォンに達する。災難は続き、コンテナで密売しようとした品は警察に差し押さえられてしまう。

同業者の死をきっかけにこの世界に再び足を入れることはないと誓っていたヨンギュは、借金の前で自身の決心を翻してしまう。つまり、ヨンギュは自身が望んだわけではないが、返さなければならない借金という現実の前で自身の決心を翻し、再び臓器密売に関わらなければならない怪物の道へと進む。

「共謀者」で最初の怪物が、仕方なく怪物になったヨンギュであれば、二番目の怪物はヨンギュという臓器密売業者を量産する違法な臓器売買市場である。「共謀者」は、実話に基づいて作られた映画なのである。

釜山(プサン)のキムさんは、妻とともに中国旅行へ行った。中国旅行でキムさんは、妻とタクシーに乗った。ところが、走っていたタクシーは急に止まってしまった。再発進するため、タクシーの運転手はキムさんにタクシーを後ろから押してほしいと頼んだ。タクシー運転手の頼みでキムさんがタクシーから降りた瞬間、タクシーはキムさんを放ったまま乗っていた妻を拉致して逃げた。

数週間後、中国公安に発見されたキムさんの妻は、身体の臓器が全てなくなったまま遺体で発見された。臓器密売業者によって拉致された後、臓器を全部摘出され殺されたのだった。

中国は、臓器密売で発覚されても法律上の処罰が甘いため、映画の中で見たようなこの話は不幸にも映画ではなく、実際に現実で起きた恐ろしい事例だ。もっと酷いのは、映画を元にして模倣犯罪が発生したのではなく、中国で臓器を摘出され殺されたキムさんの妻という実話を元に「共謀者」という仮想の話が作られたということだ。残酷な実話が映画の題材になったわけだ。

需要が供給より絶対的に多い医療市場で行われる臓器売買という違法なメカニズムの中で、私たちの身体は果たしてどれだけの価値があるのだろうか。報道資料によると、20代女性の身体から臓器を全部摘出すれば10億ウォン(約6900万円)以上の価値があるとされているが、これは誇張だと思う。

韓国ではまだ出版されていないスコット・カーニーの「レッドマーケット」を見ると、著者は自身の身体から臓器を全部摘出する場合、総価値は3000万ウォン(約204万円)に満たないという。東南アジア人ならアメリカ人である著者自身の身体より遥かに低い価格で取引されるということで、報道資料のように10億ウォン以上の価値があるという表現は誇張されたというわけだ。

だが、3000万ウォンにも満たない臓器を手に入れるため、実際には「共謀者」より残酷な現実が繰り広げられている。コロンビア国立大学の教授であるValdivieso Salimaの研究論文を見ると、アマゾン住民を狩る組織があるという。アマゾン住民を捕まえては首を吊って殺害する。そして、彼らの身体の中の臓器を密売する酷い現実は、フィクションでないノンフィクションということで私たちを戦慄させる。

「共謀者」は、本当の怪物は誰なのかを観客に尋ねる。お金のために自身の信念を曲げ、臓器密売の犠牲者を探し回る人間狩りのヨンギュが怪物なのか、または臓器売買をそそのかす巨大な臓器密売メカニズムが真の怪物なのか。

ところで、映画の中の臓器売買市場の実態より、現実で繰り広げられる臓器売買の実態があまりにも巨大かつ残酷で、現実で行われる臓器売買の実態が映画の中の怪物を圧倒するのではないかと問い直すことになる。現実の中の怪物である臓器売買の規模は、想像を絶するものだ。韓国ウォンで換算すると、少なくとも“億”ではなく“兆”単位の市場だと言われるためだ。残酷な現実が映画にモチーフを提供する残酷な世界で我々は生きている。

記者 : パク・ジョンファン