Vol.5 ― BIGBANGのG-DRAGON「後輩だけでなく先輩たちも認めるざるを得ないようにしたかった」
10asia |
大爆発が起こった地点から宇宙が始まった。それがBIGBANGである。
デビュー7年目を迎えたBIGBANGはすでに韓国大衆音楽の中において、他の歌手と差別化される彼らならではの世界を築いた。アイドルの音楽スタイルはもちろん、歌謡曲の定石とも異なるBIGBANGの音楽は、世界のトレンドに最も敏感に反応すると同時に、彼ら独自のカラーにこだわってきた結果である。そして、そのように作り上げた曲を世間に知らせるため、彼らは一度の番組出演で3曲の歌をそれぞれ別のステージで披露し、インターネットを通じて高画質のライブ映像を提供した。そのため、慣行や法則に従わないBIGBANGの歩みは時折り異例にも見えたが、衝撃が生じたその場には新しい何かが残った。
BIGBANGのリーダーでありグループのプロデューサーであるG-DRAGON(以下GD)とのインタビューは、その大爆発の原動力に関する糸口を見つけられる時間である。人々が想像する間、自分は計画や準備に時間を使ったというこのミュージシャンは、目の前の成功にもなかなか興奮しない。しかし、そんな理由から、彼の頭の中で起こっている次のBIGBANGを想像することは、かなり興奮できることだ。
「今回の活動はBIGBANGの新たな全盛期」
―リーダーでありプロデューサーとして今回の韓国での活動を終える感想が、他のメンバーとはまた違うと思えますが。GD:充実していました。そして、他の人がどう見るかは分かりませんが、個人的にはBIGBANGの新たな全盛期と言ってもいいと思います。
―GD&TOPとして活動する時、インタビューで「より大きい一発がくる」と言っていました。「ALIVE」のアルバムがその一発の始まりと思えたのですが(笑)
GD:アルバム自体に対する満足度も高いし、アルバムのプロモーションもいつもは少し短くしていましたが、今回は後悔なく見せることができました。そして、今年中にBIGBANGとメンバーのアルバムが続々準備されているため、この勢いをこのまま続けられると思います。
―「LIE」の後から認識され始めたBIGBANGの性格から確実に抜けたアルバムでしたが、その分、冒険によるリスクを甘受しなければならなかったと思います。
GD:GD&TOPをやる時からTEDDY兄さんや事務所の人たちと、トレンドを追うより一歩先に行くべきという話をいつもしていました。そうしながらも、僕たちがやっていることが正しいという考えを常に持っていました。ファッションとか音楽とか事業面で成功するかどうかではなく、僕たちの気に入ることを一番大事に思っていました。そして、それに対する確信があったら人々もそれを受け入れて僕たちについてきてくれると思ったのですが、それが当たりでした。成功した冒険でしたね。
―中でも「BAD BOY」や「BLUE」はアイドル曲の定石から外れた曲です。リフレイン(繰り返す部分)に“テチャン”(観客が歌にそって合唱すること)も入れていないし、メンバーごとのパートもはっきりと分かれていませんね。
GD:その2曲は社長が最後までタイトルにするかどうか迷った曲です。スローテンポのラップは一般受けしにくいし、「BLUE」は「LOVE SONG」の延長線上にある感じを与えられる曲だったから。でも、これからはBIGBANGの音楽をやらなければならないという考えから作った2曲だし、状況的に利害関係がピッタリ合っていい反応を得られたと思います。もしいつも僕たちがそんな曲を歌っていたら、今回のような反応は得られなかったはずです。
―事務所が一番好きだった曲は「FANTASTIC BABY」だったのではないんですか?
GD:社長が最初に望んだのは、「BABY BABY」の後、BIGBANGには代表的なダンスナンバーがなかったので、コンサートや公演で楽しく歌える曲を作るべきだということでした。それでTEDDY兄さんと曲を作りながら、どうせやるなら人々があまり聞いたことのないリズムの曲を作ろうと思ったんです。ぴったり合う部分にわざとビートを不規則に入れてみたりして、聞いてる人の予測を覆す楽しさを作りました。そして、数多くの歌手が電子音楽をやっていますが、その中でも差別化するため、僕の声で曲が始まるように作りました。本物を見せる必要があったから。誰が聞いても独特な構成で、誰が聞いても忘れられない曲を作るまで、二人の得意なことを曲の中にすべて入れました。
―曲の中だけでなく、アルバム全体に様々な人の様々な長所がうまくミックスされていますね。
GD:アルバムが出る前まで色々な事がありましたが、社長が冗談半分で「BIGBANGという名前は非常に大きいけど、その中の内容は果たして人々が思うほどぎっしり詰まっているのか?」と聞いてきました。そんな質問を受けてリーダーとしての負担感は大きくなったのですが、ある程度は社長の質問に同意するしかありませんでした。僕たちなりにトレンディーにやってるつもりだし、音楽性もあるにはあると思いますが、いざ活動をすると2%ほど足りない感じがBIGBANGのそれまでのイメージであったので。だから、今回音楽を出した時は、評価を受けることよりも、評価を乗り越えてただ良いという感じを誘導する必要がありました。はてなマークではなく、びっくりマークが出る音楽が必要だったんです。
「後輩だけでなく先輩たちも認めるざるを得ないようにしたかった」
―そういった点で、1番目に公開された「BLUE」の反応が励みになったと思えます。リフレインがむしろ下降するような曲なのに、情緒的にたくさん共感を得ました。GD:久々にかなり苦しんでいたから、それが曲によく盛り込まれたんだと思います。曲を作る時、僕の心情もそんな雰囲気であっただろうから、歌詞にもかなり気を使いました。これまでは、グループの上昇傾向を維持する感じで仕事をしていたので、疲れてもいたし、人々の趣向を考えるなど計算的な部分もありました。でも、今回のアルバムは目標を決めないで今の僕のストーリー、誰もが共感できるストーリーを語りたいと思いながら制作に臨みました。当時、僕たちの状況を語ることができる通路が音楽しかなかったのもあります。そのため、日記を書くように作ったアルバムなんです。
―そのためか、曲の構成にも変化が多かったと思います。段階を踏みながら緻密に構図を作るスタイルから気楽に流れる方向へ変わった感じがしますが。
GD:個人的にはそんな変化が成長だと思います。段階を踏んで細かく流れを分ける曲を練習する時期はもう過ぎたと思います。趣向も以前は非常に強いものが好きでしたが、今は聞きやすく飽きない曲を作りたくなりました。
―気楽に流れる曲は単調になる恐れがありますが、アルバムでは様々なボーカルでその点を乗り越えたと思います。
GD:あえてそんな意図を持っていなくてもメンバーたちの声があまりにも違うから、同じパートを歌ってもまったく違う感じが出ます。そして、僕が書いたストーリーを彼らに渡してはいるけれど、それぞれの解釈が違うから歌う人によって違う印象を与えるはずです。
―BIGBANGのメンバーたちを“武器”と表現したことがありますが、もう武器の使用法をマスターしたんですか?(笑)
GD:いつも一緒にいる子たちなのにそれを分からなかったら馬鹿でしょう(笑) 今回のアルバムを制作しながらメンバーたち自身も知らないうちに少しずつ成長した部分がありますが、そういう部分がよく表れたと思います。それから、以前はそれぞれソロ活動をしていてその合間に集まって制作したのですが、今回は皆が一緒に休みながら一緒に制作をしたので5人の息が合い、そのエネルギーがうまく反映されていると思います。僕も初心に戻って一人ひとりのボーカルディレクティングを本当に“きつく”したりもしたし。V.Iの場合は「FANTASTIC BABY」でいつもと違って鼻声やブレスがたくさん混ざった声を出しましたが、そこが個人的に非常に好きな部分ですね。
―他のメンバーたちも声を発見したという感じがするほど、新しい瞬間があったんですね。
GD:メンバーたちが皆細かなディレクションを望んでいました。歌詞に僕が望む発音を書いてあげた時もあるほど綿密にやったし、それにメンバーそれぞれの解釈が加わって独特なトーンを出すことができたと思います。特定の人やグループを否定する話では全くないですが、アイドルの音楽がたとえば獣ラップ(まるで獣の声ように荒くハスキーボイスでするラップ)のように、様々なスタイルのラップや曲が典型的な形を持つようになったので、僕たちがそういったスタイルに飽きたというのもありますね。
―わざと、さらに違う方向に行くべきと思えたんでしょうね。
GD:少しでも従来のものを避けて、もう一度ひねる必要があると思いました。後輩たちだけでなく先輩たちも、僕たちの曲を聞いたら認めるしかないような音楽にしたかったから。
「僕の中心にある一番大きい単語は不良」
―色々考えて、複雑に曲を作っているようですが、根本的には本能的な感覚がより鮮やかになっているように感じます。GD:数多くのアルバムを制作しながら気づいたのは、たくさん制作したからと言って決して良いものができるのではないということです。「HEARTBREAKER」のアルバムでの僕の声は、本当に緻密な計画の中から作られたものですが、そのため、今の僕がカラオケでその曲をもう一度歌おうとしても、その時と同じ声を再現するのは難しいです。しかし、今回のアルバムからは以前より少し自然なものを追求するようになりました。そのため、レコーディングの時、ほとんど一発録りにしました。それが計算していない、本人の声に一番近いものだから。そんな部分をメンバーたちが信じてくれるので、それぞれ練習をたくさんして誠意を尽くせる方法に従います。
―それは本能に対する確信であると思うのですが、ミュージックビデオに出る斬新なアイデアも即興的に考えたものなのですか? 北青獅子(プクチョンサジャ、韓国伝統の仮面踊りの一つ)まで登場するとは夢にも思わなかったです(笑)
GD:僕たちは音楽制作をする時、すでに複合的にミュージックビデオのアイデアまで浮かぶタイプです。「FANTASTIC BABY」の場合も、最初の1小節を作った段階ですでに電気が発生するイメージが頭の中に浮かびました。そのイメージに合わせて歌詞を書いたりもするし、ステージや衣装を考えたり、メンバーたちの声を構成したりもして、それから、再び作曲を続けるというような感じで作曲します。そのため、TEDDY兄さんと僕が作った後に二人のアイデアをまとめるのが最も大事な作業になります。以前は曲を先にもらって、メロディーに合わせて歌詞を書くことが多かったです。しかし、もうそのようには行かないと思いました。一度に曲と歌詞が一緒に浮かんだら、一つにぴったり合うエネルギーが生じると思います。
―そんなふうにインスピレーションを一気に使ってしまえば、その分埋めるものも多く必要となるはずですが。
GD:ただ、世の中を見ます。バラエティ番組から海外ドラマ、ニュースまですべてを見ようとします。世の中にどんなことが繰り広げられていて、今時の若者はどんな服を着て、どんなふうに暮らしているのか、みたいな。そんなもののすべてからインスピレーションを受けます。それから、事務所がたくさんサポートしてくれる環境にあるので、最近、多くの巨匠に出会えたことも凄く役立ちました。クインシー・ジョーンズからDEEPFLOW、ボーイズ・ノイズ、Underdogs、ウィル・アイ・アムまで昔から好きで憧れた方々を近くで見て話ができて、短い時間でしたがそこから学べたことがありました。そして、その方々みたいになろうとか同じ考えをしながら生きようというような心構えが僕を少し器の大きな人間に成長させてくれたと思います。
―ある意味で、すでにその人々のように世界を相手に音楽をやり始めたという点からすれば、意志が現実化しているとも言えますね。
GD:面白いと思えるかもしれませんが、今のような反応が僕たちにとっては当然なことだと思います。これまでTEDDY兄さんと一緒に僕たちがいつも聞いて成長してきた音楽、すなわちアメリカの音楽を、僕たちの音楽と比べ続けてきました。そうしながら、そのステージを目標にし、計画してきたものを徐々に実行に移した結果が今であると思います。準備をしたからBIGBANGとYGの音楽にプライドを持つことができ、そのため、海外の反応はもちろん嬉しいけれども、感激したりはしないです。
―音楽業界の領域から徐々に抜け出しながら、音楽的な趣向や目標も変わると思いますが、ミュージシャンとしてGDが望むことはどんなものですか?
GD:他の人からすれば贅沢な話かもしれませんが、ヒットメーカーというような名称は僕にとって意味がありません。今のアルバムの成果は次のアルバムが出たら練習になってしまうからです。順位や人気は重要ではないです。それより、僕が望むのはサヌルリム(山びこ)の曲のように、数十年後に聞いてもいい曲を今作ることです。それで、その曲がBIGBANGの次に登場する素晴らしいミュージシャンにインスピレーションを与えて、韓国音楽にも寄与できればいいなと思います。そんな人物になるのが僕のビジョンであり目標でもあります。
―個人的な成就よりは、ある時代や世界を夢見ているんですか?
GD:僕にはビジネス的な感覚がないからヤン・ヒョンソク代表のようにエンターテインメント事業はできないと思います。代わりに、最近チェリン(2NE1 CL)ともよく話し合っているのは、文化や空間に関するアイデアです。芸能人ではなくても幼くかっこいい子達が自由に集まり、お互いに刺激を与えながら成長できる場所があったらいいなと思います。そして、僕がそんなスペースを作って一種のクルーみたいにその子達をサポートできればいいなとも思っています。僕が好きな歌手を横目で見ながらここまで来たように、僕も可愛くかっこいい子達の役に立ちたくて、色々準備中です。
―そんな夢を実現しながら、BIGBANGの活動やクォン・ジヨンとしてのソロまでこなすためにはかなり忙しいと思いますが。
GD:時間が足りないけれども、制作はできる限り頑張ろうとしています。年をとっても今のようなクオリティを持つ曲を書けるとは言い切れないから。僕のモットーは今の若くて幼い感じを常に維持することですが、そのためには僕が持つ独特の感じを守るべきだと思うんです。BIGBANGの中でだけでなく、僕が作った曲や僕の行動の中心にある一番大きい単語が“不良”です。それが抜けたら、僕のカラーは成立しません。ファッションや歌詞、歌を歌うスタイルまですべてがどことなく“不良”の感じを漂わせていたら、僕ならではのかっこよさが出るんです。音楽じゃなく態度的にロックスターになりたいんです。ソロアルバムでもメランコリーというコンセプトにしてはいますが、それとは別にそんな空気が感じられると思います。いつもと同じく。
―今になって考えてみたら、BIGBANGを始めたばかりのクォン・ジヨンはどんな人物でしたか。今のGDが見たら、“文化スペース”に連れてきてサポートしてあげたいと思える子ですか?(笑)
GD:僕に人を見る目があったらそうすると思うけれど、よく分かりません。その時の僕は今と同じ僕ではあるけど、雰囲気がかなり違っています。今は非常にたくさんのものを知っている状況で、その感情を探して解釈できるほど計算的です。さらに、そんな計算まで飛ばして当たる時もあるけれど、そんな時はまるで導師になったような気分がしたりもします(笑)
―歌詞のように“雲をかき切って近づいた”GDだから(笑)
GD:色々なことを知っていて、僕が知り過ぎということをみんなが知っているのも分かっています(笑) そのため、ありふれたもの、計算的なものを避けていくから、本物を出すしかない状態なんです。
―そしたら、色々なことを知る前、すなわち、6年前のGDはどんな人だったと思うんですか?
GD:昔の僕はあまりにも知らなさ過ぎて、痛みも喜びも受け入れたものすべてありのまま見せたと思います。今ほどたくさん考えていない代わりに、純粋だったと思います。しかし、今はより多くのことを考えて、より多くの人々が共感できるコードの入れ方を知っていると思います。それが、24歳、僕の年の最も大きなメリットであると思います。
―そしたら、24歳のGDにとって今のBIGBANGはどんなグループですか?
GD:まったく変わっていません。常に言ってきたように、メンバーたちは僕にとって武器だし、家族だし、鎧です。いつもそんな感じだけれど、最近見た映画に例えるとこう言えるでしょうね。「アベンジャーズ」であると。
記者 : ユン・ヒソン、カン・ミョンソク、写真:チェ・ギウォン、編集:チャン・ギョンジン、翻訳:ナ・ウンジョン