映画「ウンギョ」パク・ヘイルの“挑戦”とイ・ジョギョの“抑制”

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映画「ウンギョ」のパク・ヘイル「イ・ジョギョは、もっともデリケートでセンシティブなキャラクターだった」

映画「ウンギョ」がエロティックかどうかという議論は、映画の中では小さな疑問にしか過ぎないように思える。映画の中で全身老人にならざるを得ない、また17歳の少女にならざるを得ない、そしてその二人の間で優勝劣敗を感じる青年にならざるを得ない俳優の面々を見ていると、そのように感じてしまう。

「撮影しながら、俳優たちが感情を徐々に込め、互いの関係が一つ一つ積み上げられたとき、それぞれの役にはまるようになっていました。目に見えない感情の流れというか、普通にいつもと同じ場所にいるけど、その中で何かがうごめいている感じがしました」

400ページ位の小説で感じられる感情をそのまま映画に移すことは、もっぱら俳優の役目であるはず。パク・ヘイルも“イ・ジョギョ”という老詩人に深くのめり込んでいた。ウンギョが久しぶりに訪れたとき、彼女から「会いたかった」と言われ、パク・ヘイルは複雑な気持ちとともに胸にじんとくるものを感じたと、当時の気持ちについて述べた。


「ウンギョ」の老詩人、もどかしい所があると思ったら……

映画の記者試写会やVIP試写会の後の周りからの反応について聞いたら、知人はみんな口を揃えて彼にお疲れ様と、ねぎらいの言葉をかけたという。映画「初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~」で共演したチョン・ドヨンは、「苦労はしただろうけど、ボロも見える」と率直な意見を言ったそうである。また、パク・ヘイルの出演映画を全部見ているというある友人からは、「おまえに高齢者の気持ちが分かるかよ」とも言われたという。

「容赦なしです(笑) そう言われてカッとなると負け!それを受け入れられれば成長しているということ(笑) でも、そういうのが自分には良いエネルギーを与えてくれます。また、映画を見た関係者からのアドバイスも自分には役に立ちます」

周りからの反応が大きかっただけに、今回のキャラクターはパク・ヘイルにとって大きな挑戦になるはずであった。それは、物理的な歳の差のためだけではない。老詩人が持つ文学的な感受性、自身の弟子に感じる複雑な心理を表現しなければならず、特に17歳の少女に恋心を抱く感情を的確に表現しなければならなかったためである。

「監督からオファーを受けたとき、この方は自分を信頼してくれていると直感的に感じました。そのような信頼があって、私も脚本を見たときの驚きを除けば、やりがいのある挑戦だと思いました。その後は他のことは考えませんでした。」

その後も悩みはあったが、違う種類のものであったという。幅広い演技をするのはいいが、表現できないこともあると思った。それだけ難しい挑戦であった。映画「ウンギョ」で、イ・ジョギョは自身の感情を表さない人物である。弟子に怒りを感じたり、ウンギョにやるせない気持ちを感じるのを見ていると物事に超越した人でもないのに、決定的な瞬間にその感情を行動に移さない。

「意図していたところもありました。毎回作品に出演するたびに、カラーを決めるのが非常に難しいです。自己抑制をしようというのは、撮影初期の段階で色々と試みる過程から考えました。感情を少し優先させるとすぐに老人ぽくなりました。監督と相談をしながら、『最大限抑制をする中で、感情は見えるようにしよう』と決めました。でも、頭では分かっていても、表現するのは容易ではありませんでした。映画から出た成果だといえば、抑制という面で新しい経験をしたことです。これから新しい作品で演じるときに活用できるシーンもあると思います」


パク・ヘイルに対する他人の視線、そしてパク・ヘイルの視線

映画「ウンギョ」は、パク・ヘイルにとっては挑戦であり、自己抑制への新しい場を開いた作品であった。インタビューしながらも、まだイ・ジョギョとパク・ヘイルの中間点にいるように見えるほど、キャラクターに深くはまりこんでいた。そのとき放出できなかった感情が、人間パク・ヘイルの心に残骸として残されていたのであった。

演技へのそのような姿勢や態度のためであろうか。俳優パク・ヘイルと人間パク・ヘイルに対しては褒め言葉ばかりである。これまでのインタビューでパク・ヘイルの話が何度か出たことがある。パク・ヘイルをよく知っている友人たちは、彼について口を揃えて褒めていた。

いくつか引用すると、ある俳優は「一緒に演技していると、満ち溢れるエネルギーに元気をもらう」、また他の俳優は「撮影もそうだが、個人的に会ったときも他愛ない話をしながら悩みを打ち明けることのできる人だ」とも言う。

「ありがたいことです。俳優ごとにそれぞれ特性があるじゃないですか。私は人との付き合いを楽しむほうです。演技は結局、周りの人と一緒に呼吸することであり、やり取りすることです。記者さんもそうだと思いますが、通じ合う、気の合う友だちがいると思います。そのような人と会って話をしていると、現場も活気を帯びてくるし、その場を楽しめるエネルギーが出てくると思います。相手の俳優からもらう場合もありますし。そういうのが映画で役に立ちます。もちろん、演出家が雰囲気を盛り上げなければいけませんが、その方々は現場を全部管理しなければいけないので忙しいです。俳優自らがコントロールすると、監督やスタッフの皆さんもエネルギーをもらって雰囲気がさらに良くなります。これは私も先輩から習いました」

意思の疎通を重視するだけに、パク・ヘイル自らも他人からの視線や考えについて超然としながらも、周りに気を使って影響を受ける面もあるように見えた。彼が見ている世界はどんな姿なのだろうか。彼と共演した俳優たちと記者の疑問であった。

「特殊メイクチームがいかに完璧に扮装してくれても、与えられた環境の中で自分が感情を入れることができなければ難しかったと思います。完成したものに失望しないための私なりの基準は、率直になることでした。なるべくそうするように努力しました。それは監督も同じです。撮影が終わって公開を待っている今も、誰に対しても率直になることが重要だと思います。時代的にも、嘘の付けない世の中じゃないですか。嘘はすぐバレる時代です。生きていると色々な誤解がたくさん生まれ、思ってることを全部言えない状況が起きても、率直な気持ちを伝えたいと思っています」

結局、他人の視線というのは、俳優が背負う運命ではないだろうか。

「今は映画が公開されて、褒め言葉であれ、叱咤であれ、観客の気持ちを早く知りたい」というパク・ヘイルは、すでにイ・ジョギョ以降の人生を生きていた。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル