Vol.1 ― チョン・イル 「『太陽を抱く月』の出演を提案され、悩みまくった」

OSEN |

チョン・イルは、ヤンミョンの最期に対する人々の感想を気にしていた。自ら“デビュー以来最高のシーン”に挙げるほど、今回の「太陽を抱く月」のヤンミョンの死のシーンに対しては深い思い入れがあるらしい。一生懸命悩んで演技しただけに、愛着や思い残すことも大きいのだろう。

MBC「太陽を抱く月」に出会って、チョン・イルは初めて俳優としての真価を認められることとなる。これまでイケメン俳優、青春スターと言われてきた彼は、今や“真の俳優”になった。女心をつかむ優れたビジュアルはただのおまけに過ぎない。

“国民的ドラマ”の「太陽を抱く月」が終了した3月のある日、彼に会った。まだ彼はウン(ソン・ジェリム)に支えられフォン(キム・スヒョン)の手を持って血を流しながら絶命した康寧殿(カンニョンジョン)の中庭、その場所にいるように見えた。放送終了後の余韻がまだ残っているかのようなチョン・イルは、まるで異界の人間のようだった。疲れているようにも見え、また心なしか集中力が散漫しているようにも見え、ドラマを終えた身軽さと言うよりも、何かを考え続けているようだった。

「亡くなるシーンでナレーションが流れたんですが、やっぱり気に入らなくて、監督にもう一度やりたいって話したんです。放送に出たのはもう一度収録し直した方でした」

「えらい」と思ったのは、単純に記者が彼より年上だからか。数年を記者として、時には視聴者の立場から彼の演技の歩みを見守ってきたから、そんな感情が沸いたのだろうか。「この俳優は、本当に悩んで努力しているんだな」と。

ヤンミョンが死に至る最期のシーンは、明らかに自他ともに認める高度な演技力が発揮された瞬間だった。「太陽を抱く月」の最終回が放送された後、インターネットには「チョン・イルを見直した」という賛辞が殺到したのが何よりの証拠だ。

チョン・イルは、そのシーンで怪我をした指を無意識にいじりながら、落ち着いた丁寧な口調で話を続けた。

「僕は(死のシーンを)撮影してからもすぐ見たし、仮編集版も見たから本放送の前に何度も見ていました。どういう風に撮られているか知っているから、いざ放送で見るときはなんともなかったんですけど、一緒に見ていた家族たちが泣いてましたね」

15日、彼は家族と一緒に最終回を見てから、翌日の3~4時まで眠れなかったという。何がそんなに心に染みたのだろうか。一人でいろいろと考え、考え、また考えたという。

「最初作品を始めるときからヤンミョンが死を遂げるのは知っていました。最もインパクトのあるシーンだと思ってましたし、それで準備も徹底したつもりですが……思い残しはあります。自分にとっても長く記憶に残る演技だと思います。ファンから『チョン・イルと言えば、これからはこのシーンが思い浮かびそう』と言われましたが、有難かったです」

ヤンミョンが死を選択した結末が、個人的には気に入っているかと聞いた。彼は、「愛する弟とヨヌを守るための行動ですから……結局ヤンミョンが死なないと何も解決しないとは思っていました。つらいけど正しい選択だったと思います。決して強くはない人なのに、そのような犠牲を選択するのは簡単ではなかったと思います」

周りの反応も気になった。昔からのファンや知人は“チョン・イルのヤンミョン”をどう見たのだろうか。

「この作品で『チョン・イルの真剣な姿が伝わった』と皆さんが言ってくれます。特に、最期の死ぬシーンで泣かされたと言う方たちがいました。僕ももちろんつらかったです」

ヤンミョンを演じる表情から、まるで“影”を見ているようだった、と話すと、「ああ…そうですか。実はヤンミョンは、うつ病の患者も同然だったと思います。人には言えなかったでしょうが」という答えが返ってきた。

チョン・イルは、「太陽を抱く月」の出演を前に悩みに悩んだ。(記者とはtvN「美男ラーメン店」の収録を終えた直後インタビューを行ったが、そのとき「太陽を抱く月」の出演を提案され、悩んでいた)

「そのとき僕、出演を悩んでいたじゃないですか。本当に悩みまくっていましたが、結果としては出演して正解だったと思います。提案されてからは一人で4日くらい地方に行って、部屋をひとつ借りてひきこもっていました。『太陽を抱く月』の脚本を持ち込んだんですけど、読み返して本当にいっぱい考えました。そして決心したんです。やってみようと」

出演を決断するにあたって、時間はあまり与えられなかった。そのため、短い期間で深く悩んだ。すでに子役の撮影が始まった段階で、ヤンミョン役のために準備する時間が十分でなかったからだ。どうせやることにしたならと思い、役柄の分析と演技の練習に徹底した。そのようにして完成した“チョン・イルのヤンミョン”だった。

その結果、演出を担当したキム・ドフン監督から絶賛された。キム氏は、最後の撮影が終わって自身のTwitterアカウントを通じて、チョン・イルの成長を目の当たりにした充足感を述べた。

「あ、そのツイート見ました。本当に感謝しています。キム・ドフン監督とは相性がよかったと思います。もともとディレクション(指示、打ち合わせ)が細かい監督が好きなんです。撮影するシーンについて、自分が思ったものと監督が思うものは大きく違わなかったです。いっぱい会話してコミュニケーションは密に取ってきたと思います」

記者 : ユン・ガイ