「ラブフィクション」火星人の男と金星人の女のラブ周波数はなぜすれ違ってしまうのか

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女優コン・ヒョジンのワキ毛で認知度が上昇した映画「ラブフィクション」(監督:チョン・ケス、製作:サムゴリピクチャーズ)は、実は深いストーリーを秘めている。恋愛と愛に対する男女の二人三脚。一見ラブコメディや恋愛ドラマの典型的な公式を辿っているように見えるが、「ラブフィクション」はありきったラブコメディだと片付けるにはもったいない、かなり深みのあるメッセージと細かくレベルの高いコメディも描いている。

シニフィアンとシニフィエを論じるまでもなく、同じ言葉を使っていても意味している内容は全く異なっているような男女を描いているからこそこの映画は恋愛心理の教科書とも言える「男は火星人、女は金星人」の拡張版であり、「愛がなんで変わるの」という名台詞を残した映画「春の日は過ぎゆく」と似たような匂いがする。

恋焦がれる愛に、有効期間なんかあるものかと言い返すかもしれないが、心臓の鼓動の速度を思い通りに調節することはできないという問題がある。それゆえ、男女が別れを告げる時に最も多く用いられる「ごめん、私も私の気持ちが良く分からないの」は、卑怯な言い訳ではなく、最も率直で深い意味を持つ独白であるかもしれない。

ジュウォル(ハ・ジョンウ)とヒジン(コン・ヒョジン)はドイツのベルリンで灰皿をきっかけに出会った。作品の執筆に苦しんでいた三流小説家のジュウォルは、帰国後自身の魂を慰めてくれそうな女神を求めるようになり、キューピッドの矢はヒジンに向かう。外国映画の輸入会社に勤めるヒジンも、ジュウォルのユーモア溢れるラブレターや花束、プレゼントが嫌いではなく、彼を家に入れる仲にまで急進展する。

しかし、思ってもいなかったバツイチに自由奔放な性格、もりもりのワキ毛とは。ジュウォルは求愛を止めるに十分な理由が発生したにも関わらず、ヒジンへの攻勢を続ける。ジュウォルが“風車に突進するドン・キホーテ”になってしまったのは、ヒジンに出会ってから原稿をすらすらと書けるようになり、人生の活力を見つけたためだ。ベジタリアンと三枚肉マニアの食事の対立も、恋に落ちはじめた恋人同士を別れさせることはできない。

問題は、女性の心を掴むために「愛してる」と話す男性と、「愛してる」をいう言葉を聞いてから「愛そうか、やめようか」を悩み始める女性のすれ違ったラブ周波数だ。すぐ熱くなっては、嘘のように冷めてしまう男性の恋愛パターンと徐々に熱くなっていく女性の気持ちはすれ違うばかり。さらにジュウォルはヒジンが学生時代に有名だった“アラスカのワキ毛女”だった事実を知り、彼女の一挙手一投足に文句をつけるようになる。

ヒジンを初めて抱いた日、「お前のワキ毛に正式に誤りたい」と彼女を配慮したジュウォルの気持ちが変わった理由は、あっけなくもヒジンの元彼氏たちだった。多かった元彼氏たちへの嫉妬そして彼らのように簡単に捨てられるかもしれないという過剰な防御意識。このシーンでは、みっともない男性の様々な姿がリアルに描かれており、観客の爆笑を誘った。

公園で無表情のまま「さよなら」と言うジュウォルと、これ以上我慢できないという表情で振り返っては「あんたの愛って本当に軽いものなんだね」と冷笑するヒジンは、誰でもグッと来るような印象深いシーンだった。ヒジンがバツイチであるということを知ったジュウォルが「結婚していたことがあるんですね?鞭も先に打たれたほうが良いと言うし、結婚も1回はやってみないとね」とわざと強がり、ヒジンがお酒を乗せたお膳を片付けて「先に準備していますね。シャワーは浴びなくていいですよ」と話す同床異夢の二人を描いたシーンでも、歯痒さを感じた観客が多かっただろう。

独身時代の恋愛経験を反省しながらシナリオを書き上げたという監督は、「世の中で最もとんでもない願いは、誰かに愛してくださいと頼むことだ」というジュウォルの台詞を通じて愛の難しさを逆説している。

一旦惚れると相手の歯列矯正器さえも可愛く見えるが、いざ安定軌道に乗ると「歯が見えないように食べて」と文句をつけるのが洞窟を好む火星人の男の特徴だ。世界の平和のために人類が作り出した最も非合理的な制度が結婚であるというジョークもあり、判断力が鈍って結婚し、忍耐力が足りなくて離婚をするという意味深い台詞もある。

「ラブフィクション」が一部のマニアだけを満足させる“アート”ではなく、一般の観客に愛されるような作品に仕上がったのは、やはりハ・ジョンウとコン・ヒョジンの“生”の演技のおかげだ。ハ・ジョンウは“熱演”をしなくても十分観客が登場人物の感情についていける選択と集中を見せてくれた。まるで熱いコーヒーに入れられた角砂糖のように、作品にすっと溶け込んでいた。コン・ヒョジンも、どこからが演技でどこからがリアルなのかが分からないほど作品と一つになっていた。二人とも素晴らしい“溶解力”で映画に活力を与えた。

「ラブフィクション」は、本当の愛の前では「初」や「二番目」のような序数詞をつけてはならないこと、細かいこだわりを乗り越えてからやっと偉大な愛に至ることができるということをリアルな台詞と絶妙な状況で描いた。軽く笑えるような“時間つぶし用”以上の、アンダーラインを引きたくなるような映画だ。15歳以上から観覧可能な映画「ラブフィクション」は韓国で29日から公開される。

記者 : キム・ボムソク