【PEOPLE】カン・ジファンを構成する5つのキーワード

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カン・ジファン

軍隊から除隊した。会社に就職して、一年が過ぎた。数年を無名の俳優として過ごし、大したヒット作もなかった。デビューから長い時間を経て新人賞を受賞した。なのに、あれ?いつの間にかみんなが知っている「カン・ジファン」になっていた。


ジャッキー・チェン

カン・ジファンの好きな俳優。
カン・ジファンは映画好きな父親に連れられ、毎週日曜日に映画を見に行った。自然と俳優業への夢を抱いた。ジャッキー・チェンのように観客を楽しませてくれる俳優が好きだった。時にはシルヴェスター・スタローンの映画「オーバー・ザ・トップ」の主人公のようにトラック運転手を夢見たりした。カン・ジファンは活発だった小学生時代と違い、中学生の頃からは内気な性格に変わり、声に出して夢を語ることはなかった。しかし心の中では常に俳優になりたかったという。


ナ・ハンイル

俳優兼「海東剣道協会」の会長。
除隊して会社勤めをしていたカン・ジファンは「長年の夢に自分の若さを投資してみる価値がありそう」と考え、俳優になる準備を始めた。俳優の仕事に役立つ時が来るかもしれないとナ・ハンイル会長から剣道を習い、海東剣道2段の腕前を持っている。また、映画「言えない秘密」でジェイ・チョウがピアノを弾くシーンを見てピアノを習った。演劇学校では毎月、モノローグ、即興演技、状況劇などの課題で受講生の成績をつけるため「何も準備していないと緊張するが、切り札一つさえあれば堂々としていられる」という事を学んだ。


イ・ギョンヒ

ドラマの脚本家。
本名がチョ・テギュであるカン・ジファンに今の名前をつけてくれた。チョ・テギュだった頃、彼は俳優になる方法が分からずミュージカルに挑戦したが、歌もダンスも準備が出来ていないためオーディションに落ち続けた。しかし諦めることを知らない彼は、ミュージカル「ロッキーホラーショー」の練習室に押しかけて掃除などをしながら3ヶ月間粘り、演出家の目に留まるために彼の前で服を脱いだまま公演の一部を演じたりした。こうした熱意が認められ、彼はコーラスに入った後、ミュージカル「グリース」では主演を務めた。「失敗を繰り返す。それが僕の成功の秘訣」という言葉が当時の座右の銘だったと言う。


シン・ドンイル

映画「訪問者」の監督。
カン・ジファンは、MBC「ノンストップ4」やKBS「花よりも美しく」「夏の香り」などに脇役で出演していたが、注目されることはなかった。「花よりも美しく」ではコ・ドゥシムの死んだ息子として写真で出演、これを見た母親が「うちの息子が出た」と喜ぶ姿に、一人で泣きながら「絶対に有名になってやる」と決心する。しかし仕事はあまり入らず、主演レベルで出演したKBS「知ることになるさ」が早期打ち切りになってからは小さな役さえ来なくなった。そんな時期に出演したのが「訪問者」。シン・ドンイル監督はまっすぐなイメージの俳優を探している時、カン・ジファンを見て彼が適役だと思った。カン・ジファンは清々しいほど正直な表情で自分のキャラクターを演じ、対照的に世俗的な役を演じた俳優との違いを見せつけた。そして「訪問者」の撮影が終わる頃、MBC「がんばれ!クムスン」の制作サイドからオーディションの声がかかった。


ハン・ヘジン

「がんばれ!クムスン」で共演した女優。
カン・ジファンはオーディションの席で、制作サイドが「訪問者」について言及し、インディーズ映画を“つつく”と、カッとなってインディーズ映画について熱弁をふるった。当然落ちると思ったが、意外にも主人公のク・ジェヒとしてキャスティングされた。いきなり毎日ドラマ(月~金に放送されるドラマ)の主人公になった彼は、初出演した15話では唇が震え、ひきつけを起こすほど緊張したという。不安を打ち負かすには練習あるのみだった。ハン・ヘジンは常に台本を手放さない彼の姿に驚いたという。彼の車の中には「僕はク・ドクター!」と書かれた紙が張られていた。今のように完全な姿ではなかったが、平凡で日常的なトーンの中で少々軽薄ながらも相手に対する思いやりを見せてくれたク・ジェヒのキャラクターは当時の男性主人公のイメージからは外れたものだった。ついに無名俳優から脱出した瞬間である。


キム・ハヌル

MBC「90日、愛する時間」と映画「7級公務員」で共演した女優。
カン・ジファンはこの作品で、すい臓癌と宣告され余命わずかとなった男性を演じた。役作りのためにわざと酒を浴びるように飲んで顔をやつれさせたという。しかしこの作品の素晴らしいところは、不治の病にかかった患者の演技などではない。彼は、昔仕方なく別れた恋人に、死ぬ前の90日間を共に過ごして欲しいと言う男を、無理にかっこよく見せず、日々の生活に疲れ過去の恋を懐かしむという姿で表現した。特に、愛を前にして右往左往しながら涙と鼻水だらけの不憫な姿を演出し、“愛すべき”男よりは“愛するしかない”男を演じたのが印象的だった。周りにいくらでもいそうな男のように、時にはみすぼらしくとも、結局は真心のこもった姿に女心が動いてしまうカン・ジファンスタイルの“未熟な男のロマンス”の始まりだ。カン・ジファンは「90日、愛する時間」が終わった後も役から抜け出せず、5ヶ月ほど酒を飲み続けたという。


ハン・ジミン

KBS「京城スキャンダル」で共演した女優。
「京城スキャンダル」とKBS「快刀 ホン・ギルドン」はカン・ジファンの“時代劇2部作”と呼べる作品で、激動の時代の中、世間には無関心であった若者が一人の女性と出会い時代と恋を知るようになるというキャラクターを演じた。彼は「京城スキャンダル」で演じる役を「(恋する)女性を守るために自分がもっと立派な人にならないといけない」と分析していた。精神的に未熟であった男性が恋を通して世の中を眺め、そこから独立運動に飛び込んで行く過程を、「京城スキャンダル」はメロドラマと時代劇、喜劇と悲劇の入り交ざったユニークな作品の形で仕上げた。軽薄でコミカルなキャラクターでありながらも、悲劇に転じる瞬間を的確に掴んだ彼の演技は、この作品全体の雰囲気を代表するものだった。また自腹でデザイナーのチョン・ウクチュンに依頼し、日本占領期の“モダンボーイ”イメージを作り出したスーツを制作してもらい、視聴者に彼の新たなビジュアルを刻み付けた。


ソン・ユリ

「快刀 ホン・ギルドン」で共演した女優で、カン・ジファンがファンであったFIN.K.Lの元メンバー。
「快刀ホン・ギルドン」では「京城スキャンダル」での演技と比べより成熟されたものを見せてくれた。彼はこの作品のコミカルな場面でも真剣なメロドラマのトーンを失わず、シリアスになっていく物語の後半に向かって、少々お調子者だが熱い青年の姿を逃すことなく表現してくれた。“喜怒哀楽を全て見せてくれる俳優”という言葉が好きな彼は、自分の理想にもう一歩近づいたのだ。しかし「京城スキャンダル」と「快刀ホン・ギルドン」はヒットには至らず、「僕の演技を見て視聴者が楽しんでくれないといけないのに、そうした反応がないと主演を務めた立場からは責任を全う出来なかったという気がする」として、自分のスター性を悩むきっかけとなってしまう。特にストーリー性の面で評価の高かった「快刀ホン・ギルドン」や「京城スキャンダル」が失敗した時には、「ミニシリーズ(毎週連続で2日間に2話ずつ放送されるドラマ)などはほとんど徹夜で撮影するので反応がないとなると本当にガックリする」と人気に対する不満を漏らしたこともある。


ソ・ジソプ

映画「映画は映画だ」で共演した俳優。
カン・ジファンはソ・ジソプと初めて会った時に「『ワオ、ソ・シソプだ』と言わないといけないかなと思った」と語ったほど彼のことをスターだと考えていた。しかし、芸能界のスターであるスターを演じたのはカン・ジファンであり、監督を務めたチャン・フンが「いろんな事件を経て成長するような感じをとても上手く表現した」と言うほどにスターを上手に演じた。傍若無人なスターを演じるため、監督にはあらかじめ「明日から勝手気ままに振舞いますので」と了解を得た上で、絶えず何かを食べている癖など、スターの動作などを全て彼が設定した。軽薄な性格はそのまま残し、ソ・ジソプが演じたガンペに刺激されて映画により集中していく過程を、表情の変化で見せる姿は、彼だけの演技スタイルを確立したと言ってもいいほど。カン・ジファンは「映画は映画だ」に出演したことで様々な新人賞を総なめにした。しかし彼が本当に得たものは“スター”と思っていたソ・ジソプと“気の置けない”友達になれるほど現場を楽しみ、人気に対する負担から解放されたことかもしれない。


シン・テラ

映画「7級公務員」の監督。
「快刀ホン・ギルドン」を見て「二枚目がバカをやるとそれだけですごいコメディになる」と思ってカン・ジファンをキャスティングした。カン・ジファンは手を握ったり開いたりするキャラクター独特の行動など、全ての場面で様々な演技や小道具を準備しては監督を喜ばせた。「快刀ホン・ギルドン」でもホン・ギルドンを演じるために武器の棒を直接選んでいるし、ニューヨークでサングラスを買ってきたり、全国のお寺を巡っている両親のつてでミニ木魚を手に入れて来たりしている。「台本を読むと僕だけの窓が開ける。キャラクターの分析には自信がある」と豪語するほどキャラクター分析には自信を覗かせる由縁である。「7級公務員」では、自身が演じた役を、全ての業務に対し未熟な国家情報部のエージェントと解釈し、新人の国家情報部のエージェントが深刻な状況に投入されるというミスマッチな状況からの笑いを誘った。またバラエティ番組にはあまり出演しない彼は、代わりに街へPRに乗り出し、映画は大ヒットした。


チソン

CMで共演し、カン・ジファンと仲良くなった俳優。
カン・ジファンはチソンが主演を務めたSBS「ラストダンスは私と一緒に」に出演したことがある。カン・ジファンは友達とは楽に話しながらお酒を楽しむが、「知らない人が多い場所は居心地が悪い」と言うほど内気な性格だ。シン・テラ監督は彼のことを、「見知らぬ人と上手く話せない思春期の少年みたいだ。飲み会でもしない限り打ち解けにくい」と話している。その代わりカン・ジファンは長年のファンを大事にすることで有名だ。「僕のことをよく知ってくれて好いてくれる人を大事にしたい」と言い、忙しい中でもサインを求める人がファンクラブの名前を出すと必ずサインに応じるほど。無名時代から様々な作品を通して成長してきたカン・ジファンにとって、ファンの存在は財産といえるだろう。


T-ARA ウンジョン

SBS「コーヒーハウス」の共演者。
この作品でカン・ジファンが演じたイ・ジンスは気難しく神経質な人気作家であり、ウンジョン演じるカン・スンヨンにあらゆる雑用をさせては“プロ”への道の険しさを実感させる。デビュー当時は、実際に配役の上でも未熟だった青年が今は社会デビューした誰かを教える立場になったのだ。いたずらと強迫性障害、躁うつ症の傾向があるようなイ・ジンスは、カン・ソンヨンの言葉通り、まるで「イカれてる」ようだ。しかしカン・ジファンはイ・ジンスの様々な姿を、変わり者ではあるが有能なプロ作家というキャラクターとしてまとめている。過去のカン・ジファンが、未熟だった青年が徐々に仕事と世間に目覚めて行く過程を見せていたのならば、イ・ジンスを通しては、既に完成された自我を持っているキャラクターの中で状況による色々な姿を演じ分けている。彼は常に役の中で自身のアイデンティティを維持しながらその幅を広げていった。イ・ジンスはそんなカン・ジファンの次のステップになるだろう。はじめからプロだったわけではなかった。しかし、カン・ジファンは絶えず大きくなっている。例えそれが演技であれ、人気だとしても。

記者 : カン・ミョンソック