Vol.1 ― 倖田來未、SUPER JUNIOR、Da-iCEなど多くのライブを手がける、演出家MASAOが明かすMONSTA Xの魅力とは…?

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倖田來未、w-inds.、SUPER JUNIOR、Da-iCEなど多くのライブ演出を手掛けるMASAO。大学時代にダンスの魅力に嵌り、バックダンサーとして活躍した後、演出家の道にたどり着いた。

U-KISS、防弾少年団、MONSTA Xなど数々のK-POPグループも手がけてきた彼に、K-POPグループの魅力、演出の魅力を聞いた。

Vol.2 ― 防弾少年団も手がけてきた演出家MASAO…彼が思う成功するための条件とは?

――最近ではMONSTA Xを手がけていますが、MONSTA Xを手がけるようになったきっかけは何ですか?

MASAO:きっかけは他の現場で一緒に仕事をさせて頂いていた監督から声をかけてもらったのが最初です。それまでは韓国で演出してやっていたようなんですが、今回のタイミングで日本で作ったものをやりたいという要望があって、昔一緒に仕事をしていた僕を推薦してくれて、一緒にやることになりました。

――「MONSTA X, JAPAN 1st LIVE TOUR 2018 “PIECE”」の演出で見せたかったテーマは何ですか?

MASAO:今回はアルバムを引っさげてのツアーで「PIECE」というタイトルでした。また、楽曲を作るにあたっての想いをレーベルの方からも聞いていました。そこで「PIECE」をパズルに例えました。メンバー1人1人が“ピース”を持っているけど、全部揃えてみると一つ欠けていて。そこにMONBEBE(MONSTA Xのファン)のピースが入ることで初めてMONSTA Xが成立するというストーリーの軸を作り、それに当てはめて作りました。

――MONSTA Xは2015年にデビューして以降、K-POPグループの中でも高い人気を集めていますが、どんなところに魅力があると思いますか?

MASAO:まずは音楽がすごくカッコいいですよね。他のK-POPの楽曲とは異なり、HIP HOP色が強い上に、そのトラックもキャッチーでカッコいいという部分がダントツだと思いました。HIP HOP色がすごく強くて、将来的にアメリカなどの海外市場も視野に入れて活動しているように感じました。
 

MONSTA Xの魅力は?「ギャップを強く感じました」

――MONSTA Xのステージはどんな魅力を感じますか?

MASAO:ギャップを強く感じました。音楽性もあって歌も上手いし、ラップもすごく上手かったんです。そのくせして、面白いというか(笑)。そんなギャップがすごくあって、それも彼らの魅力の1つかなと思いました。

――MONSTA Xのメンバーの印象はどうでしたか?

MASAO:最初は人見知りだったのか、思っていたより喋らなかったのですが(笑)。ライブを1回やってからはちょこちょこと話すようになって、徐々に仲良くなりましたね。たぶん最初は、言葉も違うし探り探りだったんじゃないかなと。でもトイレとかで1対1で会うと、結構話しかけてくれるんです(笑)。

――何か打ち解けるきっかけはありましたか?

MASAO:ステージでリハーサルをする時、メンバーに客席に座ってもらって、演出を説明してそのまま実際にこういう風にやるんだよと見せたりすると、「わあ~」と言って盛り上がってくれるので、そういう実際のやりとりのコミュニケーションで繋がっていきました。

――彼らの演出を手がけてみて、どうでしたか?

MASAO:みんな習得が早かったですね。「オッケー、オッケー」と言うので、本当に分かってくれたかな? と思っていたんですが、全部理解してましたし、さらにプラスアルファで自分たちでも「もっとこうしようか」とか「ここのタイミングで顔を上げよう」と、話してくれて、ちゃんと乗っかってくれているなと感じました。演出って、僕が考えても相手がやってくれなかったら成立しないんですよね。でも、彼らは僕の演出に乗っかってくれている上に、自分たちでも楽しんでいるので、すごく良かったです。
 

演出家としての役割「ステージのテーマや内容に寄り添っていく…」

――ステージを作る上でMASAOさんの演出家としての役割は何ですか? 監督の役割との違いはどんなところでしょうか?

MASAO:演出家がいない場合は、舞台監督に直接「こういうことがやりたい」という要望が入り、舞台セットを舞台監督のチームで考えて作っていきます。そこに演出家が入る場合はステージの内容のことも踏まえて演出家から「こういうセットにしたい」という要望を監督に伝えて、形にしてもらうことが多いです。なので、よりステージのテーマや内容に寄り添った演出になっていきます。演出家がメインになって考えて、その後にそれを舞台監督に形にしてもらう感じです。この仕組は韓国も日本、そしてお芝居でも一緒ですね。

――K-POPグループの場合、韓国で決まった演出がある程度あると思うんですが、その中で日本側の演出をしていくことは難しくないですか?

MASAO:それはわりといつもですね(笑)。例えばですが、新曲はコンサートの一番最後にやるとか、曲順がだいたい決まっていたり。僕が演出する際は、セットリストも僕が作っているので、その度に意見がぶつかることがあります。「これを最後にするの?」という曲が最後にあったり、「この曲はこの辺が良いんじゃない」と思っても決まりがあることもあって。そういう時は、理想のステージを作るために、ギリギリまで攻めて相手を説得します。ただ、「どうしても」という時もあるので、双方考えた上でいい形を作っていくこともありますね。

――演出をする中で、K-POPならではの独特の世界観や難しさはありますか?

MASAO:僕としては、言葉がどこまで伝わっているのかは気になります。その中でも、重きを置くポイントが日本と韓国で違ったりします。例えば、僕はリハーサルも作り込みたい方で、「そこもうちょっとやったほうが良いんじゃない?」と思うこともありますが、「いや、大丈夫」と言われてしまう時もあって。他にもメイクや準備で時間がとれないとか……現場ではいろいろなことが起こりますよね(笑)。韓国は韓国のスタイルがあるので、そこを踏まえてどうやって埋めていこうかなと、毎回考えています。
 

これまでに実際に起きた大きなハプニングは…?

――現場にいるといろいろなことが起きると思いますが、実際に何か大きなハプニングとかはありましたか?

MASAO:日本だと2週間ぐらいはリハーサルで時間をとって、周到に準備をするんです。でも韓国の方には「ここやっといてね」と伝えても、実際に会ってみたら「やってません」と言われてしまうこともあります(笑)。それで最後「MASAOさん、そこお願いします」と言われることがあるので、「いや、もっと早く言ってよ」と(笑)。

――そういう時は毎回どうしているんですか?

MASAO:その場で全部作っています。「やってない」と言われた瞬間、その場で速攻に紙で書いていきます。これは実はどのK-POPアーティストでもよくありますね。振り付けを韓国やると言われていたのに、後日会ってみたら「やってない」と言われて、振り付けを作ったり……。最近は「お、きた(笑)」と思います。

――今までで、最大に困ったことは何でしたか?

MASAO:コンサートの前日に1人来なかったことがありました(笑)。現場で「1人いません」っていう……そういう事もありました(笑)。

――ハプニングへの耐性がどんどん強くなっている印象を受けます。

MASAO:そうですね、そうそう動じないです。本番当日に来ないなんてことがなければ、大体は何とかできると思います。そこは何とかするしかないので(笑)。その辺りの違いはあるのかなと思います。
 

ダンサーから一転、演出家へ…心の中に抱えた「ダンサー」としての葛藤

――MASAOさん自身がダンサーから演出家として活動するようになったきっかけを教えてください。

MASAO:倖田來未さんのステージをやり始めたんですが、最初は振り付けとバックダンサーで入ったんです。ちょっと時間が空いて、次に呼ばれた時に全体を見る役に入って欲しいと言われました。既に振付師がいたんですが、外から見てくれる人が欲しいという話でした。そうしているうちに、ライブが決まる度に僕に「どういうのやろうか」と聞かれるようになりました。これを2~3年続けていたんです。一応ダンスコーディネーターみたいな、ダンス関係をまとめるポジションにいたのですが、他の現場ではなかなか無い職業だから、これを形にしていったら面白いなと思いました。そしてある日、ライブの話をしている時に「MASAOさんってダンスコーディネーターとかじゃないよね?」という話になったんです。そしたら、事務所の人から「いや、これ演出家なんじゃない?」と言われて、僕も「じゃあ、演出家って謳ってみようかな」と。そんな感じでふわっとしたスタートがきっかけでこの仕事をするようになりました。実はそれまでは気づかすに演出家の仕事をやっていたんですよね。

――「ダンサー」から一転、外から見る立場へ変わったわけですが、「ダンサー」としての葛藤などはありませんでしたか?

MASAO:めちゃくちゃありました。葛藤しかなかったです。むしろ見ているだけというのが、気持ち悪かったです。なんで自分が見てなきゃいけないんだとか、コンサートが終わって会場出る時の歓声とか、「きゃー」って何だよと思ったりしました(笑)。裏方にまわった俺には誰も気づかないので、モヤモヤした何年かを過ごしましたね。

――その葛藤が変化して、演出家として覚悟を決めたタイミングがあったのでしょうか?

MASAO:ある時、僕がこれは面白いだろう! と思った演出が当たって、この仕事が面白いかもと気持ちが切り替わった途端に、それまでのフラストレーションは無くなって、この仕事を続けたいなと思うようになりました。それまでは葛藤があって、具合が悪くなるくらいでした(笑)。現場に行きたくなくなるくらいでしたね。普段はレッスンとか、クラブでショーとかをやっていたので、その時は大丈夫なのですが、演出の現場に行くと裏方の感じがすごくストレスでした。一度ライトを浴びたことがある人って、裏方に行きづらいんです。でも、今考えるとあの環境があったから、今ここにいるんだなと思います。

――今でもステージに立ちたいと思いますか?

MASAO:実は全く思わなくなりました。今も年に1度だけクラブのショーに誘われるんですが、緊張して疲れちゃうので、本当に嫌で(笑)。この仕事をやっていて、脳が作る方の脳になってしまったんですよね。ステージに出る自分をどう表現したら良いのか、わからなくなります。

(協力:MASTER LIGHTS @masterlights_official

記者 : Kstyle編集部