チョン・ジニョン「ファン・ジョンミンが探し続ける父がイ・ミンホの父に…不思議な運命だ」

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色々と長く説明をしなくても、目には心に響くメッセージが盛り込まれている。騒ぎながらしきりにくだらないことを言わなくても、存在そのものだけで重い力が感じられる。憎くても可愛くても家族を全身で包み込む、父というのはそんな人でそんな男だ。

公開28日で観客動員数1000万人を突破し、歴代興行ランキング9位にランクインした映画「国際市場で逢いましょう」(監督:ユン・ジェギュン、制作:JKフィルム、配給:CJエンターテインメント)とそんな「国際市場で逢いましょう」の勢いを一瞬にして阻止したアクションノワール映画「江南(カンナム)1970」(監督:ユ・ハ、制作:モベラピクチャーズ、配給:SHOWBOX)。切々たる父性愛を披露し、観客を虜にした両作品は、両方とも運命のように必然のように俳優チョン・ジニョン(51)がその中心にいる。

「国際市場で逢いましょう」で1950年の興南(フンナム)撤収作戦当時、最後まで家族を守ろうとしたドクス(ファン・ジョンミン)の父ユン・ジンギュ役に扮し、短くも強烈な印象を与えたチョン・ジニョンは、ドクスの心の灯火のような、そんな父であった。ドクスの父と状況は全く異なっているが、「江南ブルース」で演じた父も同じだ。孤児のキム・ジョンデ(イ・ミンホ)を息子として育てた暴力団の元中間ボスで父のカン・ギルス役を務め、カリスマ性と切ない憐憫を披露した。ジョンデが土地に執着するようになる動機を与えた力なき父として観客の視線を集中させた。

このようにチョン・ジニョンは連続して父親役を演じ、観客に深い余韻を与えた。父という名は一緒でも、それぞれ異なる事情や感情で変身を試みたチョン・ジニョンは「貫禄」とは何かを見せてくれる名品とも言える俳優だ。ユ・ハ監督はそんなチョン・ジニョンに「ドクスが切なく探し続ける父を暴力団員にしてしまって悪かった」と申し訳ない気持ちを伝えていた。

「もう年齢が50を超えているので、父親役を多く演じるのは当然ですね。父親役を演じる年齢になったんです。世の中の半分は男で、その男の99%は父になる人でしょう?どこに行っても父の話は欠かせないですから……フフフ。ファン・ジョンミンが探し続ける父がイ・ミンホの父になったので、これはあいにくですね。ハハハ。不思議な運命と思うしかないです(笑)」

両作品ともに父という名の助演であったが、彼が作り上げた父は決して助演ではなかった。主演を超える爆発的な存在感で観客を泣かせ、笑わせることに成功したチョン・ジニョン。彼にシーンスティーラー(Scene Stealer:スターよりも注目される脇役)として自身なりの営業の秘密があるのかと質問した。荒く生えた髭を手で触りながら「僕だけの営業の秘密を、簡単に言う訳にはいかない」というジョークとともに世界で一番優しい笑顔を見せたチョン・ジニョンは、ただならぬ営業の秘密を一つ、二つと教えてくれた。

「韓国の観客は家族の話に多く共感しますね。なので、家族を描く作品が多く作られています。自然に父親役を演じる俳優が必要となりますが、それができる俳優の数は限られています(笑) 出番が多いからって、それが必ずしもいい役だとは言えません。ただ、その役に相応しい役目というのがあるので、それをそのまま表現したらいいんです。50を超えた年齢ではじめた『国際市場で逢いましょう』や『江南ブルース』は個人的にとても幸せな作品です。すごくいいキャラクターでしょう?ただ、何かを頑張ってやること、それ以上のものはありません。ハハハ」

写真=映画「国際市場で逢いましょう」「江南ブルース」スチールカット
一人の息子がいるチョン・ジニョン。今年で高校2年生になった息子は、父をファン・ジョンミンにとられ、またイ・ミンホにとられたことを少なからず寂しく思って当然だが、全く気にしていないという。“国民の父”になっても、依然チョン・ジニョンにはクールだとか。映画の中では息子たちが気軽に近づけない謹厳な父だが、実際は友達のような父であるというチョン・ジニョン。最近になって父の役割について少し深く悩むようになったという。

「昔、息子が小さかった時は友達のような父になりたいと思っていました。職業の特性上、撮影で家に帰れないことが多く、久しぶりに家で休める時は息子と遊び、親しい友達になれたらと思っていました。けど、息子がいつの間にかぐんと大きくなって青少年になると、僕もまた違う父に成長しないとと思うようになりました。友達のような父よりは、息子が僕を通じて何かを学べる、長所の多い大人として見てくれたらと思ったんです。一言で言うと、息子のお手本になりたいんです。最近そのようなことをかなり思うようになりました(笑)」

父という名の重さだ。世の中の多くの父は家族、子供のために献身的に生きているというチョン・ジニョン。ユン・ジンギュもカン・ギルスもみんなそうであった。親という存在は、献身的に生きる人であると静かにつぶやいた。今すぐそうすることはできないように見えても、いざうさぎのように可愛い子供を見ると、自分のすべてをあげても惜しくない気持ちになるという。

「国際市場で逢いましょう」でドクスの実父として登場するチョン・ジニョンと違い、「江南ブルース」では孤児であったギルスが行く所のないジョンデの面倒を見るようになり家族になる内容が描かれている。しかし、なぜギルスがジョンデの面倒を見ることを決めたのかについてははっきり説明されておらず、観客からは「気になる」という声も出ている。ギルス役を演じたチョン・ジニョンも「僕もそれが気になる」と聞き返した。

「撮影をしながら、僕もそのシーンがすごく気になりました。なぜギルスはジョンデを息子として受け入れようと思ったのかという。多分、一目惚れという表現が正しいのではないでしょうか?人と人の間には、理解できないそんな縁が多く存在します。その辺だろうと思って、それ以上不思議に思うのは止めました。昔は僕も演技をしながら動機というものに意味を大きく置いていましたが、年をとって、人生を生きていると世の中には理由が必要ではない時というのがあるんです。特に人間関係はそうですね」

チョン・ジニョンの言葉は間違いなくその通りだ。誰がいつ、どこで、何を、どうやって、なぜ。私たちはこれまで“六何の法則”の呪縛の中で生きようと頑張ってきたが、世の中というのは必ずしも決まった通りに動いていくわけではない。時には理由なしに運命のように近付いてくることもある。チョン・ジニョンが「国際市場で逢いましょう」を選んだのも、「江南ブルース」を選んだのも、国民の父として観客の印象に残ったのも特別な理由はなく、ただ運命のように近づいてきたのだ。

「『江南ブルース』に出ている人物を見ると、みんなか弱い人たちなんです。ジョンデやヨンギ(キム・レウォン)、ギルスはみんな無力な人間です。結局は持っているものがなくて悲しい人たちです。若い世代には難しい話のように聞こえるかもしれないですが、必ずしもそうではないんです。『国際市場で逢いましょう』のように、じっくり振り返ってみるほど分かるような作品です」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : ムン・スジ