【映画レビュー】「スティール・コールド・ウインター」デマが引き起こした人格殺人“現実は映画より悲惨…”

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写真=映画社花

愛を育んでいた高校生カップルはなぜ残酷な現実に直面したのか

最近、主要ポータルサイトのエンタメ面に載った記事があった。KBSのファン・スギョンアナウンサーが離婚したという記事だった。しかし、その記事は事実ではなかった。日刊紙の記者がSNSに投稿したコメントを、あるブロガーが情報誌(チラシ)の形で掲載して広まってしまったハプニングだった。

こうした事例は初めてではない。何の問題もなく生きているタレントのピョン・ジョンスが一気に故人となり哀悼を捧げられたこともあった。「死せる孔明生ける仲達を走らす」ならぬ、デマが生ける人を故人にしてしまう人格殺人、自殺の触媒となるのが現実だ。

映画「スティール・コールド・ウインター」はこのようなことを思い出させる。美しい少女とソウルから転校してきた少年の限界を超えた恋物語に見えるが、どこかおかしい。主人公の少女はスケートが上手だ。しかし、少女が滑ったスケートの跡が異常なのだ。

スケートの刃が通り過ぎた氷の上には刃の跡が残っていなければならない。しかし、この少女が通り過ぎた場所には血がにじむ。それだけではない。口蹄疫騒動の時、土中に埋められた豚の鳴き声が聞こえる。「スティール・コールド・ウインター」は実はホラー映画なのだろうか。

ヘウォン(キム・ユネ)は綺麗な容姿をしているが、男子生徒たちは不思議なことに彼女を好きにならない。というよりも彼らにいじめられている。ヘウォンに神気があり、たまに変な音を出すと言って、クラスメートたちはヘウォンを敬遠する。

ソウルから転校してきたユンス(キム・シフ)はヘウォンに好感を抱く。ユンスがクラスの人を避け、一人で学校の屋上にいるヘウォンに近づくのはヘウォンが綺麗なためだろうか。誰も近づかないヘウォンに妙な仲間意識を感じていたのではないだろうか。

実はユンスはソウルで事件を起こしたことがあった。友だちを屋上から飛び降りさせたのだ。ソウルにそのまま住んでいればいじめは避けられないと思い、慶尚道(キョンサンド)に引っ越してきたユンスが自分と境遇が似ているヘウォンに好奇心を持つのは不思議なことではない。

いじめられないように地方に転校したユンスがいじめられっ子のヘウォンと精神的な交流をすることはポスターだけ見ても分かる。しかし、ユンスがヘウォンに疑いを持つのはヘウォンに対する変な噂のためだった。夜、父親と一緒に寝るという噂だ。

ヘウォンとより深く交流したいユンスは彼女のヘウォンが父親と寝るという噂だけは信じたくなかった。自身が愛する女性が他の男性、しかも父親と寝ていることだけは何があっても許せない。

結局、噂に惑わされたユンスはヘウォンの家の前で待ち自身の目でその実態を確認する。ヘウォンがある男と同じ部屋にいる中で電気が消される。果たしてユンスはヘウォンに対する噂を実際に目撃したのだろうか。ヘウォンは噂通り、父親と寝ているのだろうか。

「スティール・コールド・ウインター」は現実と変わらない。夫と仲良く暮らしているアナウンサーが突然離婚の段階に入ったり、未婚の歌手がいもしない子供を持ったと信じさせる力は噂だ。加工されたストーリーであるデマは公人または芸能人のイメージを壊し、プライバシーを蝕む。

もう一度映画に戻ろう。ヘウォンが父親と寝るという噂を広めたのは果たして誰だろうか。ヘウォンの父親への陰謀ではないだろうか。そして噂を広めた人が得る利益は何だろうか。デマの直撃を受けたヘウォンは音もなく絶叫し、ヘウォンの彼氏は疑心暗鬼になる。

偶然投げた石によってカエルが死んでしまうこともあるように、誰かが面白半分で確認されていない事実を広めることが当事者にとってどれほど大きいことなのか気づいていない人が多い。悪質なコメントをつける人々がのさばるのが現実だ。現実は映画より悲惨である。

記者 : パク・ジョンファン