「全国のど自慢」リュ・ヒョンギョン“人妻の役でも不細工に見えても大丈夫”

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ボンナムの妻、ミエ役のリュ・ヒョンギョン…「かわいそうだけど魅力的な人物」

「お金は私が稼ぐから兄さんは一生歌を歌って」(映画「全国のど自慢」でのミエの台詞)

こうしたミエ(リュ・ヒョンギョン)の壮言大語は現実の壁を乗り越えられなかった。純粋に愛していた頃、一人で生計を立ててでも愛する男性が夢を叶えることができるようサポートすると誓ったミエ。歳月が過ぎた今は夫のボンナム(キム・イングォン)に「どうかしっかりしてお金を稼いで来て」と言う。恋が冷めたわけではない。ただ、ミエの肩に重い現実がのしかかっているのだ。

「全国のど自慢」で美容師を演じるミエは、現在を生きる母親や女性たちを慰める人物だ。昼間は美容師のアシスタント、夜は代行運転の運転手として働きながらも歌手の夢を諦めないボンナムとなんとかして一緒に生きていこうとする。そのため「全国のど自慢」という楽しいステージとはかけ離れた人物でもある。女優リュ・ヒョンギョンは「ミエがあまりにもかわいそうでしたが、それが逆に魅力的に感じられました」と打ち明けた。

「シナリオを読みながらすぐ『やってみたい』と思いました。『これは私がしなきゃ』と思いました。まず始めに訛りの演技が面白そうでした。私も慶尚道(キョンサンド)馬山(マサン)出身なんです。そして他の人々と異なる寂しさを表現するところが魅力的でした。現実には難しいですが、ミエには恋しかないですね。お母さんたちの慰めになってほしい。うちの母が一番気に入ってくれたらいいなという気持ちで演技しました」


人妻の演技、老けて見えたらどうする?

リュ・ヒョンギョンは撮影が始まる前、「私の中からミエを見つけ出します」と宣言した。演出を担当したイ・ジョンピル監督と毎日のように話し合い、台詞を変えてキャラクターを完成させた。所属事務所の代表まで「全国のど自慢」への出演に反対したが、完成した作品を見てみんな驚いたという。

リュ・ヒョンギョンは「(監督が)シナリオとは違う方法でたくさん撮影をしました。それぞれのキャラクターをより魅力的にするためにはどうすべきかとずっと悩みました。監督と一緒に仕事をしながら本当に幸せでした」と微笑んだ。

そのようにして誕生したシーンが「全国のど自慢」に出演後、ミエがボンナムを迎えに行く部分だ。もともとシナリオにはなかったシーンだ。片手に花束を持ったボンナムは酒に酔ってよろよろと歩く。しゃがんで座りボンナムを待っていたミエは彼に小言も言わず「ご飯は食べたの?」と聞く。

これにボンナムは「お酒飲んだ」と答える。リュ・ヒョンギョンは「フルショットで顔がよく見えないけれど、すべての感情が溶け込んでいる感じでいいと思います。監督と私、(キム)イングォン兄さんの息がうまく合わなかったらできなかった部分」と満足げな表情を見せた。

「最初はみんな『31歳だから若い役をしなきゃ。もう人妻を演じて老けて見えたらどうする』と心配しました。編集スタッフからも食堂で鉄板を洗うシーンを見て『あまりにも綺麗には見えない。不細工に見えるから使わない方がいいのではないか』と言われました。美しく見えないことへの抵抗感はないけれど、顔にほくろをつけ、もんぺを着るなど、キャラクターそのものを無理やり作ろうとしたら、逆に全体的な映画のバランスは崩れたと思います。典型的な部分から離れようとしました」


「制作者イ・ギョンギュ、本当に映画を愛する職人」

「全国のど自慢」について話す時欠かせない人物がまさにコメディアンのイ・ギョンギュだ。1992年映画「復讐血戦」のシナリオを書き、演出したイ・ギョンギュは「覆面ダルホ~演歌の花道~」(2007)に続き、6年ぶりに「全国のど自慢」を制作した。制作発表会、メディア試写会などのイベントにはもちろん、キム・イングォン、リュ・ヒョンギョン、ユ・ヨンソクなどの俳優らと一緒にバラエティ番組にも出演し、映画のプロモーションに励んでいる。

リュ・ヒョンギョンは芸能界の先輩ではなく、制作会社の代表イ・ギョンギュに対し「本当に良い制作者」と親指を立ててみせた。プレッシャーを与えるどころか、邪魔になるのではないかと心配し、撮影現場に来ても遠くから見守るだけだったという。リュ・ヒョンギョンは「飲み会で俳優たちに『この映画が終わってもっと成功してほしい』とも言ってくれました。たくさん関わるのではないかと心配しましたが、監督と俳優が現場で気楽に楽しめる雰囲気を作ってくれました。映画への誠意と愛情がとても大きい方だと思います。職人のようです」と伝えた。

もう一人の大切な縁は映画で夫婦を演じた俳優キム・イングォンだ。10年前、短編映画で共演したキム・イングォンはリュ・ヒョンギョンに「僕があなたの顔だったらもうスターになっているはずだ」と語ったという。リュ・ヒョンギョンは「『この映画で何かを得ていかなければならない』という野心を持っていなければならないですが、もともとそういう性格ではないのです。(キム・イングォン)兄さんがこんな私に『僕だったらもうスターになっているはずだ』と言いました。実際、今に最善を尽くすだけでこれを土台に何かをゲットしなければとは考えません」と微笑んだ。


映画「神機箭」から5年…「何も恐れず演技した」

リュ・ヒョンギョンの“女優人生”は、映画「神機箭(シンギジョン)」を境に分かれる。それ以前も地道に活動していたが、リュ・ヒョンギョンは「神機箭」に出演してから演技の面白さが分かり、「一生演技しなければ」と誓った。「いつも人々に『デビューから5年しか経っていない女優』と話します。以前撮った作品が嫌なわけではなく、それを境に25歳の時『神機箭』に出会い、人生が大きく変わりました。演技への考えもたくさん変わりましたし、欲も出てきました」と話した。

「怖いと思ったら何もできません。計算して考える中で怖い感情がわくと、結果もおかしくなりました。『神機箭』以降は何も恐れず演技していると思います。今を充実させて生きていかなければと思います。たくさんの人を相手にしますが、誰もが私を愛することはできないでしょう。少なくとも私自身が恥ずかしくない場合は、恥ずかしくない良い人生だと思います。映画は皆で一緒にする共同作業ですので。マイペースをうまく維持することが一番重要です」

純粋だった過去から熱心に生きる現在まで。「全国のど自慢」にはミエの人生も入っているけれど、リュ・ヒョンギョンの人生も入っている。「時代劇以外で初めて前髪をなくした映画」と述べ、老けて見えるのではないかと心配したが、慶尚道(キョンサンド)訛りはリアルで、若い頃の下手な標準語は可愛かった。

「撮影しながら祖母のことをたくさん思いました。『全国のど自慢』を母や父が気に入ってくれたらと思います」

記者 : イ・ジョンミン、イ・オンヒョク、写真 : イ・ジョンミン