キム・スヒョン脚本家のドラマにはない“4つのもの”…さらに確固たるものになった彼女の世界

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総合編成チャンネルまで復興させた脚本家キム・スヒョンのスタイルは?

JTBC「限りない愛」の視聴率が1割に迫る勢いを見せている。MBC「せがれたち」の視聴率を上回ったことはもちろん、SBS「わが愛しの蝶々夫人」まで追い抜こうとしている。

地上波よりはケーブルに近い総合編成チャンネルでこのような結果が出たことは、衝撃的だと言わざるを得ない。総合編成チャンネル史上最も高い視聴率という結果は、ドラマを執筆すれば1億ウォン(約850万円)の原稿料をもらうというキム・スヒョン脚本家の力量をもう一度確認された。また、その成果は“やはりキム・スヒョン”という賛辞まで呼び起こした。だが、それと同時に、彼女の成功を芳しくないと思う人々も存在する。“キム・スヒョン”という大物脚本家への反感もあり得るだろうし、彼女のはっきりしたスタイルに好感を持てない人もいると思う。

実際にキム・スヒョンのドラマは、明確なスタイルと個性がある。もちろん、キム・スヒョンが全てを上手く書く必要はない。そして、キム・スヒョンのドラマが全てのものを備える必要もない。だが、確かにキム・スヒョンのドラマには、一貫した法則と構成が存在する。ここでは、キム・スヒョンのドラマにないものを通じて、彼女のスタイルを分析してみることにする。

キム・スヒョンドラマにはない!その一、貧乏な主人公

写真=SBS「千日の約束」 (C)SBS
もちろん、キム・スヒョンのドラマにも貧しい主人公は登場する。例えば、「青春の罠」のユニ(シム・ウナ)や「千日の約束」のイ・ソヨン(スエ)がそうだ。だが、彼女らは貧乏ではあるが、金銭面で苦労したり貧乏性だったりはしない。彼女らはどれだけ貧乏でも能力や才能がある。結局キム・スヒョンドラマに登場するキャラクターは、すべて中流階級以上だ。

「母さんに角が生えた」のヨンミ(イ・ユリ)や、特集ドラマ「結婚用品」のスンジュ(イ・ヒョンス)、「火花」のキム・ジヒョン(イ・ヨンエ)、「完全なる愛」のハ・ヨンエ(キム・ヒエ)のように、財力の違いで苦労をしても彼女らは男の力に頼らず、いくらでも生きていける主体的な女性だ。「完全なる愛」のハ・ヨンエさえ、夫の実家が反対する結婚をしたことで貧しくて苦労する設定だが、最初のシーンは彼らが30坪台のマンションに引越しすることである。

キム・スヒョンのドラマは、彼らがそのような資金をどうやって確保し、能力を備えるためどんな努力をしたのかはあまり語らない。ほとんど彼らがある程度財力や社会的地位を確保した状態から話を始める。そのため、ヒロインは最後のプライドを守ることができ、お金の前で葛藤はしても、結局は自由になれる。男の財力が必須要素であるとみなされるラブコメディの法則は、キム・スヒョンの作品からは見られない。

キム・スヒョンドラマにはない!その二、夢を与える男性主人公

写真=SBS「青春の罠」 (C)SBS
そのため、キム・スヒョンドラマでは、女性が男性より絶対的に優位に立っている。彼女のドラマには魅力的で現代的な感覚を誇る男性よりは、男性よりもっと主体的に生きていく女性の行動が目立つ。時には男性は女性より気が小さくて心が狭い人物に描かれる。キム・スヒョンドラマのキャラクターの特徴の一つは、皆おしゃべりだということだが、これは男性主人公も同じだ。

だが、些細なことを根掘り葉掘り問い詰める男性主人公は、しばしば魅力的ではない。女性の立場と境遇、さらに魅力がより強調される一方で、男性主人公は極めて現実的な立場にとどまる。そのため、彼らはほとんどの女性たちが願う理想像を見せない。

その中で最も夢を与える努力をした人物を挙げるならば、「青春の罠」のヨングク(チョン・グァンリョル)だ。だが、彼がユニの心を掴むため口に出す言葉は、素敵というよりは古く聞こえることが問題だった。現代的でファンタジーを与える人物を活用することは、キム・スヒョンドラマには似合わない。ヨングクさえただユニの復讐のための道具に活用された面が大きく強調され、ドラマの緊張感を高めることに貢献した点に満足するしかなかった。

キム・スヒョンドラマにはない!その三、若者の恋愛

写真=JTBC「限りない愛」
このような理由でキム・スヒョンは若者の恋愛を描くことに慣れていない。若いカップルは多数登場するが、キム・スヒョンドラマに登場する若者は、この頃の若い世代を代弁するために存在するというよりは、ただ年をとった人の若い時代を描写したと見るべきだ。

もちろん、若い世代を理解しようとする努力をしないわけではない。だが、ドラマの中の若者の口調やスタイルが本当に若者らしいと見ることは難しい。例えば、3年間結婚しないでほしいという親の言葉を受け、「逃げよう」と言う男に、女が「息子を口説いて結婚した嫁のレッテルでも貼るということですか?」と言ったりする。話だけ聞いてみれば、恋愛の達人か、結婚に1、2回は失敗した経験でもある人に思える。だが、この台詞を言ったのは18歳の女性で、恋愛や結婚について真剣に考えるはずのない人物だ。

それだけキム・スヒョンの作品に出てくる若者たちの考え方は、若くない。「限りない愛」の中で若く見えるカップルはソンギ(ハ・ソクジン)&ヨンヒョン(オ・ユナ)だが、このカップルも性的に解放的かつ露骨的であるだけで、台詞や行動は若者を装った中年のように見える。もちろん、若いからといって特別なデートをするわけではない。彼らもご飯を食べてお茶を飲んで映画を見るほどのデートはする。だが、台詞や考え方、行動のパターンを見れば、キム・スヒョンドラマに登場するカップルは解放的に見えるが、凝り固まった考えを変えない様子を見せる。

キム・スヒョンドラマにはない!その四、親不孝者

それは、キム・スヒョンドラマが徹底して大人の立場から描かれるためだ。キム・スヒョンドラマの主人公は、たまに大人に反抗したり、不当さを主張することもあるが、結局一定の線を越えることはない。それだけ親子関係、老人と若者の関係の境を確かにしているわけだ。

キム・スヒョンドラマで一番重要なことの一つは“大人を大人らしく”待遇することだ。いくら行儀が悪くても祖父や母の言葉にはそこまで対抗できない。彼らはいつも常識や正道を守る。母と娘の喧嘩にはもっとドラマチックな面があるが、結局目立つのは娘ではなく、母の立場だ。

写真=SBS「私の男の女」 (C)SBS
キム・スヒョンドラマでは、ほとんど全ての親が“子供のために行動する”という前提がある。結局結婚問題などで子供と縁を切っても、結局復縁してかばうのがキム・スヒョンドラマに登場する親だ。そのため、キム・スヒョンドラマにはいつも大家族が登場する。ホームドラマにはいつも祖父と一緒に暮らす主人公が登場し、核家族が主人公だとしても彼らは親と普通よりずっと緊密で密接な関係を結びながら暮らす。そして、その親たちはその気になればいつでも足を運べる距離に住んでいる。

「私の男の女」でホン・ジュンピョ(キム・サンジュン)の親は彼の不倫を知って怒り、自身の息子ではないように行動する。だが、これさえ息子への愛と関心がなければ不可能な設定になる。最後まで子供を正しい道に導こうとする親が、キム・スヒョンドラマの中で一番重要な題材の一つだ。

さらに子供も、親の言葉なら何でも聞こうとする親孝行者である可能性が高い。彼らが葛藤するのは、ほとんど結婚という一大事を控えた時点だ。気に入らない相手を連れてきたとき、キム・スヒョンドラマの親はたびたび「あんなに優しかった子が初めて…」と言い出す。親を敬わなければならないという基本的な前提があるため、彼らの反抗がより衝撃的に見える。

それでキム・スヒョンドラマで相対的に若い人たちは“最近の若者らしくない”行動をするしかないし、それは完全に大人の立場から見た“若者の愛はこんなものにならなければならない”というメッセージのように聞こえる時もある。

キム・スヒョンドラマは、キム・スヒョンというブランドほどその色を明確にしている。そのようなはっきりした特徴のせいで色々言われ、問題もたくさんあったが、明らかな事実はその特徴がまだ受けられているし、これからも受けられる可能性が高いということだ。そしてそれはキム・スヒョンという脚本家を空前絶後の地位にのし上げ、大物脚本家という栄光を与えた。

とにかく、確固たるものになった彼女の地位と同様に、彼女のドラマもより一層確かなものになっている。“ドラマは多数が楽しむべきだ”という点で彼女は成功しており、総合編成チャンネルまで復興させる底力を見せた。まだ彼女に向けた賛辞が続き、彼女のドラマを楽しむ人が多い状況なら、キム・スヒョン脚本家の「私のドラマが気まずいなら見なければいい」という言葉が正しいかもしれない。今もチャンネルが彼女を中心に回っているためだ。

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記者 : ウ・ドンギュン、写真 : イ・ジョンミン