ク・ヘソンからの福袋…映画「桃の木」ガイド

OhmyStar |


女優・監督・作家のク・ヘソンが語る“ク・ヘソンの映画”

言葉の通り、福袋だ。演出とシナリオはもちろん、音楽に至るまで、ク・ヘソン独自の感性や考え方を感じられる。映画「桃の木」には、一層成熟したク・ヘソンの現在と覚醒が込められている。ク・ヘソンもまた「福袋であってほしい」と映画への大きな愛情を見せた。

今までドラマ「花より男子~Boys Over Flowers~」「薯童謠(ソドンヨ)」「お願い、キャプテン」などで、女優としての面を見てきた人にとっては、作家として、演出者として活動している彼女の姿に違和感を覚えたかも知れない。しかし「妖術」「あなた」「記憶の欠片」まで、こつこつと着実に活動を続けた彼女は、自身の情熱を余すところなく作品で証明して見せた。


「桃の木」は人生に対する根本的な質問から始まった作品

「2009年が過ぎ、2010年にシナリオを書きました。悩みが多かった時期です。『なぜ生きるのか』と考えていた頃、当時私が尊敬していた映画会社のチョン・スンへ代表が亡くなられ、生と死に対して改めて考えるようになりました。今までそういったことについて、あまりにも無関心だったと思ったのです。

私という存在について悩んでいるうちに、それを盛り込んだキャラクターを作りたくなりました。『シザーハンズ』という映画がありますよね。愛らしく、切ない存在だけど、抱きしめると傷つく。そういったキャラクターのように我々はみんな、愛を与えながら傷も与えて生きていると思います。このようなキャラクターを研究するうちに、今の結合双生児を描くことを決めました。生と死に近づくことのできるキャラクターだと考えたからです」

演出者として、そして女優、美術作家としても「桃の木」は自然な人生の流れだった。大きな変化のきっかけがあったというより、人生に対する一貫した関心だったわけだ。ただ、過去のク・ヘソンが自分自身にもっと集中して生きていたとすれば、今は周りを見渡し始めたというのが変化だと言える。

「実際、私たちは誰もが誰かのために生きているじゃないですか」とク・ヘソンは言ったこの言葉の意味は、つまり人は愛なしでは生きられない存在だということだろう。ク・ヘソンにとってはその対象が家族であり、今回の映画に家族への気持ちを内密に盛り込もうとしたそうだ。

「もし私に家族がいなかったら、今のように映画を作り、アートをしながら生きていなかったと思います。私がこのように一生懸命に生きるのは、家族のためでした。本当に愛する家族なので、もっと優しくしようと毎日のように決心します。しかし『今日は腹を立てないようにしよう』と思いながらも怒ってしまいます(笑)」

家族に対する率直な話が交わされた。家族はもしかすると、愛憎の存在ではないだろうか。“いなかったら”と思いながらも、いなかったら空虚になるしかないのが、人の人生だからだ。



一緒に演技に参加した俳優たち、作品の率直さを垣間見た

だからなのか、結合双生児として登場するチョ・スンウとリュ・ドクファンが、映画の最後で、お互いから離れ、完全な姿で登場したときは、ク・ヘソンも胸が詰まったという。もちろん、人物に特殊メイクを施し撮影したが、特集メイクを外してから撮影したときは、本当に切ない気持ちになったそうだ。

「家族は負担かも知れないけど、離すことのできない存在です。その家族の不在を考えると、結局本人も否定することになるじゃないですか」

映画の撮影中、俳優たちからもそのような感情を十分に感じていたそうだ。長い付き合いのナム・サンミ(パク・スンア役)と友情出演したソ・ヒョンジン(双子の母役)は別として、チョ・スンウやリュ・ドクファンは作品性を見て快く出演を決めたケースだ。撮影当時、不仲があったということが、最近バラエティ番組を通じて明かされたりもしたが、ク・ヘソンはこれに対し「何回か意見の食い違いがあっただけです」と、拡大解釈を警戒した。

「私も今回の映画でたくさんのことを学びました。女優出身なので、俳優の気持ちをよく分かっているというのは傲慢だということを知りました。ただ、私のスタイルと相手のスタイルがあっただけです。人に対してはまだよく分かりません。だから恋愛ができないのかな?(笑) 自分自身のこともよく分からないから、映画の中でも、答えがでないまま進行されていると思います。

ある関係に対して、これだとはっきり定義することはできないじゃないですか。結局私の存在は、他人によって存在するのではないでしょうか。他人が私を定義し、私に対する価値を考えるように、私もまた、自らを定義しません。もちろん、芸能人として仕事をしながら、それなりに強くなっていく過程のような気もします」

写真=ク・ヘソンフィルム 映画「桃の木」のシーン
「チョ・スンウさんやリュ・ドクファンさんは、韓国映画らしくない作品を求めていたので、私の提案に応じてくれました」と説明したク・ヘソンは、改めて出演俳優に対する感謝の気持ちを伝えた。予算もまた厳しかったが、俳優のほうでたくさん配慮してくれたという。ク・ヘソンが監督としてできたことは、俳優の時間をなるべく取らないよう、撮影を速く進行することだったそうだ。

またク・ヘソンは、長年の親友で、今回の映画に特別出演したソ・ヒョンジンとイ・ジュニョクにも感謝の気持ちを伝えた。ソ・ヒョンジンはク・ヘソンの長編映画デビュー作「妖術」にも出演したことがある。当時出演料をご飯で解決したほど親しい仲だったク・ヘソンは、「今回は5回撮影したので、5年間ご飯をごちそうすることにした」と笑って見せた。

映画「桃の木」は、色々な意味で俳優たちの愛情が溶け込んでいる作品だった。結合双生児をテーマに、人生に対する新しい考察を提示する今回の作品を通じて、ク・ヘソンの新しい面も確認してみよう。よく熟した桃のように、ク・ヘソン監督の深い思慮の結果を感じることができるはずだ。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン