新しいところのない「馬医」だからこそ惹かれる

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写真=MBC

恐ろしい勢いの「馬医」…3つの人気要因を分析

“時代劇の巨匠”イ・ビョンフン監督と、“演技の神様”チョ・スンウの組み合わせがその理由だろうか。MBC月火ドラマ「馬医」が恐ろしい勢いを見せている。

遠くは「朝鮮王朝500年」、そして「ホジュン~宮廷医官への道~」「宮廷女官チャングムの誓い」「イ・サン」など数多くの時代劇ヒット作を演出してきたイ・ビョンフン監督が、新ドラマ「馬医」で帰ってきた。しかし、ドラマ序盤の成績は振るわなかった。視聴率が6.9%まで落ち込み、「もうイ・ビョンフン監督の時代も終わるのではないか」という懸念も出てきたほどだった。しかし、それは杞憂に過ぎなかった。成人役者の登場に伴い、その勢いは驚くほどだ。

実は、“馬医”という斬新な題材を取り上げていることを除けば「馬医」は“イ・ビョンフン流”時代劇パターンを維持している。いつからかイ・ビョンフン監督の時代劇は、似たような物語構造を繰り返している。「主人公は人並みならぬ才能を持って生まれるが、周りの妬みと嫉妬、または親世代の悪縁により苦労をする。しかし、それに屈せず立ち向かい、主人公はようやく成功する」といった、ありきたり過ぎるサクセスストーリーなのだ。

そのためか“出生の秘密”を加えたが、これもやはり他のドラマで多く見すぎているため、新しいどころか、かえって月並みに見えた。これはドラマの序盤に視聴者から背けられた原因の一つにもなった。


「馬医」の勢いには、理由があった

しかし、第5話から俳優チョ・スンウが登場しながら、ドラマが流れに乗ったかと思うと、第6話からは視聴率1位を占めている。マスコミではこれを“チョ・スンウの力”とも見ている。もちろん、俳優の演技力が視聴率の上昇に一役買ったのは事実だ。どれだけドラマの作品性が良くても、俳優の演技力が至らなければドラマへの集中を妨げ、視聴者から背けられがちなためだ。しかし「馬医」の視聴率上昇の原因は、ただそれだけではない気がする。

第一に上げたいのは、ペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)を通じての視聴者の満足感だ。出生の秘密はあるにはあるが、ペク・クァンヒョンは賤民(センミン:最下層の階級の身分)の身分である。身分社会で、賤民の能力は宝の持ち腐れだ。しかし彼は、身分社会で自分の持って生まれた能力をもって王の主治医である御医(オイ:王の主治医)にまでなる。親の財産でもなく祖父母の財産で勉強する時代になり、身分上昇がほとんど不可能な状態になってしまったこの時代に、ペク・クァンヒョンの存在は視聴者に対して慰めになったことだろう。

第二に、いつも同じパターンであるにも関わらず“勧善懲悪”のテーマは常に有効だという点だ。“イ・ビョンフン流”時代劇の大きなあらすじは、善良な人は福を授かり、悪人は罰を受けるという勧善懲悪の構造である。おとぎ話で韓国の人々はそれに接しているが、歳月が流れ21世紀になった時代にも、それは依然として教訓を与えてくれる。

第三に、個性派助演俳優たちの活躍だ。“イ・ビョンフン流”時代劇は、一歩間違うと重くなりがちな劇の流れを、個性派助演の演技で愉快に展開させるのが長所である。これまでヒョンシク、イ・ヒド、チ・サンリョル、イ・グァンスなどに続いた個性派助演俳優の活用は、劇を飾るデコレーションの役割を果たし、完成度を高めてきた。

ありきたりで飽きがきそうなものだが、そのありきたりなストーリーがイ・ビョンフン監督ならではのカラーになり、結局はイ・ビョンフン流時代劇の長所になったかも知れない。いつまでイ・ビョンフン監督の時代劇が視聴者から愛されるかは分からないが、今のように愉快な笑いと暖かいメッセージの盛り込まれたドラマを作ってくださるよう、期待したい。

記者 : イ・ヨングァン