「追跡者」が韓国ドラマ市場に警鐘を鳴らした

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写真=SBS放送画面キャプチャー
“ダビデとゴリアテの戦い”とは勝てるはずのない相手に勝ったときに使う言葉である。SBS月火ドラマ「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)は、ダビデそのものだった。

ドラマ「追跡者」がスタートした当時はこれほど人気を集めるとは誰も予想しなかった。不動の1位を誇るMBC月火ドラマ「光と影」、コン・ユとイ・ミンジョン、そしてmiss A スジが出演するKBS 2TV月火ドラマ「ビッグ~愛は奇跡~」と競争しなければならなかった。

多くのトップスターが出演するドラマとは違って「追跡者」にはトップスターは一人もいなかった。さらに脚本家も初めて単独執筆に挑戦したパク・ギョンスだった。しかしドラマ「追跡者」は期待以上の高視聴率を記録して最終回を迎えた。

視聴率競争でドラマ「光と影」を抜いたとは言えないが、「追跡者」はトップスター不在でも、優れた脚本と俳優たちの好演だけで成功した作品である。

脚本の力で好評を得たドラマは「追跡者」だけではない。「サイン」(2011)から5月24日に最終回を迎えた「赤道の男」に至るまで、たくさんある。「追跡者」の場合、2012年下半期のドラマ市場の出発を告げる意味を持っており、視聴率1位を維持していた「光と影」はもちろんのこと、競争作「ビッグ~愛は奇跡~」にも勝てないという意見は少なくなかった。

「追跡者」がスタートして1週目は予想通りだった。しかし延長を決めてから面白さを失ってしまった「光と影」や「ビッグ~愛は奇跡~」とは異なり、「追跡者」は面白いストーリーだけで最高の話題作となった。もし同じ時期に放送スタートしていたら、ドラマ「追跡者」の視聴率1位も予想されたはずである。

ドラマ「追跡者」の成功は、ますます巨大化しつつある韓国ドラマ市場に警鐘を鳴らした事例だと言える。2000年代半ばから韓国ドラマ市場は大きくなり、韓流スターのようなトップスターが出演しないと、ドラマの制作が難しくなるほどだった。その結果、ドラマの制作会社はトップスターのキャスティングに集中しすぎてしまい、他の制作条件は守れないことが起きてきた。

しかしドラマの成功条件である俳優の演技力と完成度の高い脚本だけを売りにしたドラマ「追跡者」は、もう一つの成功条件である“俳優の知名度”を超える力を見せてくれた。

実際、あるドラマ制作の関係者は「トップスターの出演にだけ集中してきたドラマ市場は『追跡者』をきっかけに変わると予想される。海外ドラマの場合、トップスターにだけフォーカスを当てた作品はあまりない。HBOのヒット作『バンド・オブ・ブラザース』やABCの『LOST)ロスト)』は、俳優の知名度よりは制作者の能力と優れた脚本で人気を集めたと言える。これから韓国ドラマもトップスターの出演から制作システムと脚本中心にシフトする」と予想した。

このような傾向は2012年上半期のSBSドラマの成功事例だけを見ても分かる。他のテレビ局は外注制作会社にすべてを任せているが、SBSは投資と編成を積極的に進めた。その結果、「追跡者」「ファントム」「紳士の品格」は面白いとの好評の声を得ている。

勝てないと予想された戦いで堂々と勝利を収めたドラマ「追跡者」は韓国ドラマ市場に警鐘を鳴らした一つのターニングポイントとなった。

記者 : キム・ギョンミン