南果歩、夢見る心を忘れない「乙女オバさん」に…自身のルーツを語る #ユン・ヨジョンと共演 #韓国映画 #韓国での過ごし方

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女優・南果歩の自伝エッセイ『乙女オバさん』が2月4日に刊行された。2度の結婚、突然の病、大切な人との別れなど、辛い出来事の裏で彼女が感じていたこと、そして、アメリカでの撮影に挑んだ、四世代に渡る在日韓国人一家を描いた物語ドラマ『パチンコ』(3月25日Apple TV+独占配信)について深く語られている。撮りおろしフォトでは、水着姿も披露。

俳優としての意識から、日頃している美容・健康法、自身のルーツである韓国についてなど話を聞いた。

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この本は「歳だから」という言葉、思い込みは捨てましょうという提言です

――エッセイ拝読させていただき、とても素敵な内容でした。まず『乙女オバさん』というタイトルについてお聞きしたいです。

南:ありがとうございます。タイトルは自分で考えました。どうしても人って年齢にとらわれてしまう部分がありますよね。日本でも韓国でも、韓国なんかは特に先輩・後輩の礼儀を重んじるのは素晴らしいし、良い部分もあると思うのですが年齢へのこだわりが強い。でも欧米では生年月日を聞かれることも無いし、その人を見て判断する。年齢はもちろんナンバーではあるのだけれど、それほど気にすることないと私は思っています。

私は年齢的にはオバさんの年齢ですが、乙女心を持ったオバさんなんです。そんないくつになっても夢見る心を忘れない人の事を“乙女オバさん”と呼ぼうと。もちろん“乙女オジさん”もいます。

逆に“オバさん乙女”もいますよね。10代、20代の若さがあっても「もう歳だから~」ってすぐ言うじゃないですか(笑)。この本は「もう○○歳だから」「年だから」という言葉、思い込みは捨てましょうという提言になっています。

――すごく勇気をもらえる言葉ですよね。本書の中では、私生活にまつわることもたくさん書かれていましたが、抵抗はありませんでしたか?

南:20代の時は、個人的な意見を公の場で言うのが嫌だったんです。演者としての姿だけを見て欲しいという気持ちがあって、素の部分というのは家族や友人にだけ見せれば良いと思っていました。でも、今は自分の意見を言える場所を与えられているということがすごく幸せなことなんだなと思う様になりました。こうしてエッセイを書いたり、番組で自分の話をするということも一つの表現だと捉えられる様になりました。

――自然とそう思える様になったということでしょうか。

南:20代の頃は「自分の表現はこう!」と限定していて視野も狭いですし、自分に厳しかったのだと思います。すごくストイックに生きていたなと。でも周りには「昔から自由で楽しそうだったよ」と言われるので、「あれ、そうだった?」と思うのですが(笑)。

――撮りおろしフォトもどれもとても素敵で、水着姿も美しくてカッコいいです。撮影はいかがでしたか?

南:超楽しかったです! 沖縄で撮影して。水着も無理やり着せられたわけじゃなくて(笑)、自分からやっちゃいましょう! って。コロナ禍になってから筋トレをはじめていました。コロナ禍になり仕事もストップして、人にも会えないし、気持ちのやり場に困っていた時に、心と身体のバランスって大切だなと思い、まず身体を鍛えようと思いました。メンタルのためにはじめたトレーニングですが、今も楽しくて続いています。

――表紙のお写真もすごく印象的で、見ているだけで元気になりますよね。

南:もう、この写真一択でした。ヒールで本気で走りました!(笑)
 

ドラマ『パチンコ』で、韓国女優ユン・ヨジョンと共演

――本の中に「50歳をこえても、なお新人」という言葉があり、とても謙虚な考え方をお持ちなのだなと感じました。お仕事をされる際に心がけている言葉なのでしょうか?

南:『パチンコ』(3月25日Apple TV+独占配信)での撮影で改めて感じた部分が大きいです。撮影はバンクーバーのスタジオで、長期滞在して行い、オーディション期間も長かったのですが、「Are You Kaho?」という感じで誰も私のことを知りませんし、一からスタートした新人俳優の気持ちになりました。

――マネージャーさんも同行されずにお一人で長い撮影に挑まれたそうですが、大変なことも多かったのではないでしょうか。

南:昔から海外旅行も一人で行っていたので、そういった意味でのトレーニングは出来ている方でした。もちろんホームシックにはなりましたけれど、日本語が話せる方もいましたし、友達とZOOMでもお話出来るし、私はどこにでも一人で生きていけるな、と思いました。何より、コロナ禍の中、海外で撮影が出来ること、目の前にやるべきことがあることがありがたくて。

――英語での撮影はいかがでしたか?

南:私はあまり英語が得意ではないので、英語をキャッチすることの苦労はありました。スケジュールの変更や、入り時間の変更など毎日英語のメールをチェックして、でも日本人役なのでセリフは日本語ですし、スタッフとのやり取りは英語ということで、頭はパンパンになっていました。今思えば学べたことばかりなのですが、毎日がサバイバルでしたね。

――『パチンコ』での撮影は、どんなことが印象に残っていますか?

南:まず原作の力がすごいので。四世代に渡る在日韓国人一家のお話で、主人公の「ソンジャ」の晩年である、“オールド・ソンジャ”を演じているのが、『ミナリ』でオスカーを受賞したユン・ヨジョンさんで、私はソンジャの息子の恋人役を演じました。スタジオの規模がまずすごくて、大きなスタジオにいつどのシーンの撮影も出来る様にセットが組まれていました。8エピソードの中の5話分に出ているのですが、監督が2人いて、ココナダ監督とジャスティン・チョン監督という2人の個性が違っていて面白かったです。何より、エグゼクティブ・プロデューサーのスー・ヒューさんという女性の情熱に圧倒されました。スーさんが脚本も書いていて、「このお話を多くの人に届けたい」という強い想いにあふれていて、物を作る原点というのはここなんだな、と学ばせていただきました。

――ユン・ヨジョンさんとの共演についてはいかがでしょうか。

南:本当に自然体な方で、魅力にあふれていました。YJさん(ユン・ヨジョン)が持っている人間性が滲み出ているといいましょうか。ユーモアにあふれていて、ちょっと毒づいたことも言うんですけど、笑っちゃうんです。長時間撮影待たされている時に、みんな疲れて会話も無くなってきている中で「あのADは私を何歳だと思っているのよ、こんなにおばあさんなのに……」ってぼやいたりとか(笑)。ちょっとした小言もユーモアがあるので、笑っちゃうんです。雰囲気をすごくよくしてくださる。近くに滞在していたので、「ご飯食べに来なさいよ」と言ってくださって。

――撮影時以外も交流があったのですね。今も連絡をとられていますか?

南:はい、カカオトークでお話しています。日本に来る時は絶対に連絡してねと言っているので、落ち着いたらまたお会い出来ることが楽しみです。
 

日常をどれだけ豊かに過ごすかが、俳優にとって大切

――エッセイの中では、ハリウッド作品、韓国作品への出演は「お声がかかれば」と書かれていました。機会があればどんどん挑戦していきたいというお気持ちでしょうか?

南:言葉の問題があるので、日本語なまりの英語、韓国語でよければという感じですね。今は改めて「○○進出」みたいな謳い文句はいらないと思うんですよね。『ミナリ』にしても、『パラサイト 半地下の家族』にしても、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』にしても、超ドメスティックな作品が世界に広がっているわけですから、私自身にもそういうこだわりは無いんです。「面白い役をやりたい」というのが常です。『パチンコ』も、この物語がとても好きだったというのが大きいです。

――韓国作品をよくご覧になっているそうですが、どんなジャンルや作品がお好きですか?

南:今はドラマを見ることが多いのですが、昔から『ペパーミント・キャンディー』(1999)とか、アン・ソンギさんの昔の作品もよく観ていました。一番、韓国作品を好きになったきっかけをくれたのは『シュリ』(1999)です。とても歴史的な作品だと思います。その他にも、『殺人の追憶』(2003)、『シークレット・サンシャイン』(2007)、『母なる証明』(2009)など好きな作品はたくさんあります。こうして並べると、人間の深部に迫る作品が好みなのかもしれません。

――映画館に観に行かれるんですか?

南:昔はよく単館上映などやっていて、見に行っていましたね。

――いつか共演してみたい韓国の俳優さんはいますか?

南:やっぱり、ソン・ガンホさん大好きなので、いつかお会いしてみたいなと思います。

――韓国作品や、韓国の俳優さんのお芝居から影響を受けたり、刺激をもらうことはありますか?

南:色々なことに影響を受けていると思います。素晴らしい韓国の俳優さんってたくさんいて、また観たいと思わせる魅力がありますよね。自分の演技に直接関わってくるかというと、それはその時々により違いますが、私の仕事は作品に限らず「目に映るもの全てが色々な所で役に立つ」ものだと思います。とある役を演じる時に「あの時、この職業の人はこういう感じだったよな」とか、頭の中でデータになって蓄積されているものを使います。

――日頃から様々なことにアンテナを張りめぐらせているんですね。

南:映画やドラマ、舞台からの影響と、日常生活からの影響ってどちらが多いかといったら、自分の中で整理しているわけではないから比重は分からないですね。そこを整理整頓しすぎるとつまらないかなとも思っています。「良かった記憶」も「好まないものの記憶」も、お芝居には何でも使えるので。

そんな、お芝居という仕事の中で、一点だけ「演技出来ない」部分ってあると思うんですよ。それは目の奥底。お芝居や表情で目の力や見せ方を変えることは出来ても、目の奥底にはその人が経験してきた事や、考えてきた事が蓄積されているので、日常生活ってあなどれない。日常をどれだけ豊かに過ごしているかが、俳優にとって大切なのだと思います。YJさんの目の奥底もとても輝いていましたし、優しくて素敵でした。


韓国での過ごし方は?「オッパが教えてくれるローカルなお店へ」

――南さんが韓国行く時はどのように過ごされるんですか?

南:私はルーツが韓国なので、先祖のお墓参りに、毎年慶尚北道を訪れています。釜山か大邱経由で入って。慶尚北道は水がすごく綺麗でりんごが美味しくて、日本でいったら長野みたいな場所かな。そこに母のいとこが住んでいて、親戚のおばさんが作るお料理が最高なんです。着いた途端にずらーっとお料理が机に並んで、本当に韓国ドラマの様な感じです。

――韓国ドラマで見るたくさんのおかずですね。

南:お店ももちろんいいですけど、やっぱり地元の人の手料理が一番いいですよね。韓国に行くとそういったキムチやおかずも持たせてくれて。実は私はキムチがそんなに好きではなくて、食事もそんなに量をたくさん食べる方ではないのですが、韓国に行くとキムチでも何でもたくさん食べられちゃうので不思議です。

――南さんが韓国でお気に入りの場所はありますか?

南:い~っぱいあります! 釜山は食べ物も美味しくて大好きで、本当に地元の人しか行かないお店によく行きます。豚足のお店、天然うなぎのお店、アワビ粥だけのお店とか。私のオッパ的な存在の方にいつも連れていってもらっています。

――ご自宅でも韓国料理は作りますか?

南:作ります。わかめのスープ、ナムル、トック、チヂミ、ビビンパ、サムゲタン……。定番が多いです。野菜がたっぷり食べられるのが良いですよね。

――美容関係ではいかがでしょうか? 韓国で必ず買うものはありますか?

南:韓国に行ったらやっぱりパックをたくさん買いますね。顔のものはもちろん、手のパックとか。あと、高麗人参を飲んでいます。南大門の市場の高麗人参専門のお店で購入していたのですが、今はコロナ禍で買いにいけないので他のもので代用しているのですが、威力が全然違うんですよ。どろどろの黒いやつを茶さじいっぱいお湯にといて飲むのですが、舞台の前にそれを飲むと、自然と体温が上がって声がよく出るので助けられています。

――いつか南さんの釜山ガイドを知りたいです!

南:いいですね、私のコースは最高ですよ!(笑)

――楽しみにしています。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました。

取材:中村梢 / 撮影:朝岡英輔

■書籍情報
南果歩 最新エッセイ『乙女オバさん』
南果歩/著
定価:1,430円

■関連サイト
南果歩オフィシャルサイト:http://www.kaho-minami.com/

記者 : Kstyle編集部