「サイコパスダイアリー」ユン・シユン“自分を客観的に見れてこそ発展もあると思う”

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写真=モアエンターテインメント
「『製パン王キム・タック』以外は大ヒット作がないので、成績が良くなくて監督や脚本家に常に申し訳ない気持ちでした。けど、いつも2~3%足りない結果になる状況が、僕には逆に祝福だったと思います」

最近、ソウル江南(カンナム)区論硯洞(ノンヒョンドン)の某カフェで、TVレポートのインタビューに答えたユン・シユンは、謙遜の姿勢で冷静だった。「謙遜している」という言葉も否定するほど謙虚だったが、自身の成果を評価することに関しては一歩も譲らなかった。

最近韓国で放送終了したtvN「サイコパスダイアリー」で、自身を連続殺人犯だと勘違いしている、実はとても優しい性格のユク・ドンシク役を熱演したユン・シユンは、画面の外でもユク・ドンシクのように優しい人だった。

ユン・シユンも「キャラクターとよく似ている」という話をたくさん聞いたという。

「僕が思うシンクロ率は1~2%ですけど、周りの人たちは100%と言っています。『(優しすぎて)カモになる人をどう演じればいいのだろう』と悩みましたが、監督も『演技をしなくていい』と強調していました。飲み会で僕を見て『シユンくん、そのままでいればいい』と仰ってたんです。僕って人の目にカッコよくは映っていないんだというのも分かりました(笑)」

自身がサイコパスだと勘違いしているユク・ドンシクという人物は、実は一般の人々の物語を描いたキャラクターだったという。

「ドンシクというキャラクターを通じて、僕らが賢かったりイケてないが故に様々な経験をするところをお見せしたかったんです。自身がサイコパスだという、とんでもない勘違いを通じて、本質的に自尊心を回復し、勇気を得る過程もです。カモとサイコパスは、象徴的な意味を持っているだけなんです」

スリラーとコメディが共存する「サイコパスダイアリー」の撮影現場は、実は簡単ではなかったという。特にパク・ソンフンとの最後の決戦が大変だったとか。

「最後に大変なシーンが多くて徹夜しました。この作品ではたくさんの人々が死にますけど、一人死ぬことになれば徹夜もあると思えばいいです。最後のソンフン兄さんは本当に手こずりました。何日もずっと戦っても死ななくて(笑)」

それでもユン・シユンは「時間が過ぎると辛い記憶はなくなるので、逆にもう一回やろう」と決めたという。

「苦労するのは大丈夫です。当時は大変で小さなことで神経を尖らせたりしますが、ドラマが終わると辛かった記憶なんかは全部消えています。ただ『もっと頑張れば良かった』『もうワンテイクすれば良かった』と思うだけです。『結局終わったら何も覚えていないので、(やる時に)一回でも多くやろう』というのが、経験から得た教訓です」

ユン・シユンは厳しかった撮影の中で、自身よりは同僚のチョン・インソンを心配していた。

「僕よりはインソンさんが心配でした。実際見ると、本当に痩せていて小柄なんです(笑)天気がとても寒くて大変なのに、SBS『路地食堂』の撮影までして来るんです。僕にKBS 2TV『1泊2日』の時はどのように(撮影を並行)したか質問したりもしました」

ユン・シユンの努力があったにもかかわらず、「サイコパスダイアリー」は視聴率1~2%台の沼から抜け出せず、最終話が3%を記録して放送終了した。どう考えても残念な数値だが「サイコパスダイアリー」チームはお互いを心配していたという。

「撮影現場の雰囲気はとてもよかったです。イ・ジョンジェ監督が申し訳ないと言っていました。逆に僕たち(俳優たち)のほうが申し訳ないですよね。視聴率を掴む力は、人気ではなく演技への信頼だと思います。まだ僕はそれが足りなかったと思います。次イ・ジョンジェ監督と再会することができたら、さらに俳優としての信頼感を培った後がいいなと思います」

「サイコパスダイアリー」が勢いに乗れなかったのは、視聴者の期待ほど早く展開されないストーリーのせいでもあった。しかし、ユン・シユンはすべてが自身の演技に責任があると言った。

「俳優として、僕が立体的に描くことができなかったところを責めるべきだと思います。ドンシクが覚醒する前に、細やかだけど面白い部分を作るべきでした。結局は、俳優が責任をとる位置にいると思います」

ユン・シユンは撮影をする機会があっただけでも感謝するとし、「僕を主人公として使ってくれるのが光栄だ」と強調した。

「今も撮影現場に行く時にドキドキするし、嬉しいです。何かをここまで好きになったことがないと思いますが、毎回ときめきます。『今回の作品が終わると、僕にまたこんな機会があるだろうか? また僕を主人公として使ってくれるだろうか?』と思ったりして、常に光栄に思えて感謝しています。少なくとも、僕と一緒に働く人々の誇りになれる俳優になりたいです」

デビュー以降、主演だけを演じてきた12年目の俳優としては、少し珍しい言葉だ。「本当に謙遜している」と言うと、ユン・シユンは「違う」と否定した。

「本当に、謙遜しているわけではありません。自分を客観的に見れてこそ発展もあると思います。俳優という職業は、なかなか『No』と言われることがありません。上手いからではなく、注目を浴びる職業なので、みんな『Yes』と言ってくれるのです。それを聞いて本当に自分のことを常に『Yes』だと思うと、そこから個人としての人生が崩れると思います」

ユン・シユンは、2009年にMBC「明日に向かってハイキック」でデビューして大きな人気を博し、KBS 2TV「製パン王キム・タック」「最高の一発」「緑豆の花」、TV朝鮮「不滅の恋人」などで着実にフィルモグラフィーを積み重ねてきた。

しかし、ユン・シユンは常に自身の成績は足りなかったと頭を下げた。そしてそれは同時に祝福でもあったと話し、注目を集めた。

「『製パン王キム・タック』以外は大ヒット作がないので、成績が良くなくて監督や脚本家に常に申し訳ない気持ちでした。それをファンの方々の応援が埋めてくれたのですが、シャンパンを開けるわけにはいかなかったです。作品がヒットして大金をもらう人たちを羨ましく思ったりもしましたが、いつも2~3%足りない結果になる状況が、僕には逆に祝福だったと思います。本当に大ヒットが続いたら、僕も生意気になっていたかもしれません」

「自分に厳しすぎるのでは」という指摘に、ユン・シユンは「冷静に判断しないと」と言って謙遜を忘れなかった。

「冷静に判断すると、僕はヒット作のおかげで今もとても優遇されながら働けています。なので、自分自身にもっと厳しくしないといけないんです。実は『製パン王キム・タック』もチョン・グァンリョル先輩、チョン・インファ先輩のような方々が率いてくださったのに、タイトルが“キム・タック”なので、まるで僕がよくやったかのように感じられます」

ユン・シユンはどうしてここまで自身を冷徹に見つめるようになったのだろうか。ユン・シユンはその理由を演技を初めて学んだ「明日に向かってハイキック」の共演者たちのおかげだと答えた。

「僕が新人の時、とてもお手本にしたいと思ったのがシン・セギョンさん、チェ・ダニエルさんでした。例えば、今撮影場に行くと新人たちにコーヒーを買ってあげたりします。『緊張しないで』とアドバイスもします。それは、チェ・ダニエルさんがやっていたことです。当時それが本当に素敵に思えました。また、セギョンさんが来ると現場の雰囲気が明るくなってリラックスできるようになりました。睡眠不足だった人たちも元気が出て、僕のような相手役の俳優も心強く働くことができました」

「初めての師匠が本当に素晴らしかったので、今も憧れています。どこかで師匠たちが僕に関する話を聞いた時に、僕もそんな人だと評価されていたら嬉しいです。初心を忘れて生意気になったりせずに。今も10年以上経ったからといって生意気にスケジュール調整の話を持ち出したりせず、一度もスケジュールで不満を言ったことがないイ・スンジェ先生のことを思い出し、初心を忘れないようにしています」

記者 : ソン・ミンジュ