ラッパーJayho「音楽に出会えなかったらありふれた人生を生きていただろう」

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ずば抜けて革新的な雰囲気を目撃した時、私たちはそれを感覚的だと言う。

New Block Babyzのラップコンテストで優勝、Animato&DJ Tizのラップコンテストで準優勝し、以前からヒップホップシーンで実力を認められた蔚山(ウルサン)出身のラッパーJayho(ジェイホ)は、何よりも感覚的なラップに優れている。彼は昨年9月に発売したミニアルバム「American Girl」以来のリリースとなる、オフィシャルミックステープ「Side Mirror」を先月発売した。

「歯切れの良い自己表現…ヒップホップに魅了されたきっかけ」

写真=Jayho
―ラップネームがJayhoだ。

Jayho:別にラップネームとして作ったわけではない。アメリカに留学していた時、アトランタで高校に通った。黒人が多かった学校だったけれど、その友達が僕をJayhoと呼んだ。そのときからずっとJayhoとして活動している。

―アメリカで高校に通ったのか?

Jayho:そうだ。現在ニューヨーク州立大学・経済学科を休学している。軍隊のため韓国に来てミックステープを準備することになった。結局、そのミックステープのことでNew Champ(歌手)から連絡が来て、Champ兄さんがソウルに来たら必ず会おうと言ってくれた。その時から音楽をしたい欲が大きくなったと思う。

―留学生活はどうだったか。

Jayho:高校時代は外部でライブをしたり、高校にヒップホップクラブを作ったりするなど、ヒップホップにハマッていた。自由奔放で体を動かすのが好きだったので、親が先に留学を勧めてくれた。アメリカは成績ももちろん重要だけれど、外部での活動やスポーツチームの活動なども、大学入試に重要な要素として作用する。個人的にはヒップホップの本場であるアメリカに行くことも嬉しかった。振り返ってみると人生において本当に大切な時期だった。音楽的にもそうだし、僕の人生にとっても。

―ラップを始めたきっかけや、影響されたアーティストは?

Jayho:初めてヒップホップにハマッたのはLeessang(リッサン)からだ。そのときは叫ぶような音楽、韓国型ロックバラードが流行している時代だったけれど、Leessangのタイトル曲「Rush」「Leessang Blues」など、歯切れの良い自己表現と卑俗語がそのまま登場する歌に新鮮なショックを受けた。自然にムーブメントに興味が沸き、その時からヒップホップにハマッた。

タイミングが良かったのが、実の兄が交換留学生として1年間アメリカに行ってきて、エミネムの自叙伝を持って帰ってきた。それまでは韓国のヒップホップばかり聞いていたけれど、一言で言うと新しい世界と出会ったのだ。初めて歌詞を書いたのが中3の頃だった。何かを書くこと自体が面白かった。最初は日記のように書いたけれど、後からは遂行評価(課題)にラップの歌詞を書いて出したこともある(笑)

当時は音楽を仕事にしたいとは思っていなかったし、趣味にこだわっているだけだと思った。いずれ僕も就職して、職場に通う。このような火を見るより明らかな未来像がChamp兄さんに会ってから完全に変わった。音楽に命をかけなければと決心したと思う。

―最近何をしているのか?

Jayho:アルバム制作に追われている。最近は3月31日に公開されたミックステープの準備で忙しかった。個人的に、またクルーとしても準備していることが多い。5月27日にはシングルが出る予定だ。4曲ほど収録する計画で、今回のミックステープとは違ってもっと聞きやすい音楽が収録される。

「声の質感が生きている音楽を望んでいる」

―最も反応が良かった楽曲は?

Jayho:やはり「Amercian Girl」だ。曲がいいのか、ミュージックビデオの女優さんが綺麗だからかよく分からないけれど、一番反応が良かった楽曲だ。映像を担当した人とコミュニケーションが円滑にいかなかった部分があって、もっと良い映像ができたはずなのにと残念だったところもある。

―まだ知られていないヒップホップクルーLEGIT GOONSについて簡単に説明してほしい。

Jayho:LEGIT GOONSはお酒が好きで、親しい人同士で作ったクルーだ。必ずラップをする人ばかりではない。5月3日にSpeak ShowでLEGIT GOONSがステージに立つが、サイファー(cypher:フリースタイルのラップ)の形で行われるユニークなコンセプトだ。昔、港でスーツを着たギャングのような印象を与えようとしている。メンバーたちと一緒に制作したシングルもリリースする予定で、EPアルバムも計画している。

―音楽を作るとき、最も重点を置く部分は?

Jayho:一番気を使う部分は、楽曲が与える雰囲気だ。ラップをするときも、そのラップが楽曲とよく調和しなければならない。声の質感が生きていなければならないという表現を使いたい。同じ歌詞でラップをしても誰がするかによって雰囲気が違うように声を楽器としてうまく使おうとしている。その吐き出す声に集中する方だ。

―普段どこからインスピレーションを得るか?

Jayho:インスピレーションはぼーっとしている時、無意識のうちに得ると思う。いわゆる“余剰を感じる時”だ。

―音楽を続けられる原動力は?

Jayho:創作が与える面白さが良い。簡単に言えば楽しいからやる。作ったときの気持ちよさもある。楽曲を作って周りからフィードバックを受ける、この過程に本当に感謝している。僕を引っ張っる力と言っておきたい。

―最も記憶に残るコンサートは?

Jayho:ソウルで活動する前に蔚山(ウルサン)でバスキング(路上公演)をしたことがある。3年前、コンテンツを作るために始めた。他のジャンルとのセッションを自分で交渉して自主的に行った初めての公演だ。もうひとつはChamp兄さんのためにステージに立ったオーシャンワールドでのライブである。水着を着ていて、そこの人たちは本当に遊ぶ準備ができていた。その時本当に楽しみながらライブをしたと思う。

―蔚山出身だ。蔚山のヒップホップシーンはどうか?

Jayho:まともなレーベルがない。レーベルがあったとしても、実力の差が激しい。革新的な変化がないので音楽的な発展もあまりない。やはり蔚山出身の人たちと一緒に成長したいけど、もっと多くの努力が必要だと思う。

「ラッパーに最も重要なのは、アイデンティティを見つけること」

―今後の方向性が気になる。

Jayho:グルーヴのある音楽が好きだ。やや古くなるかもしれないが、その中から洗練さを見つけたい。まだ事務所に所属したいという欲はないし、制約なしで創造的に活動したい。後で作品活動そのものが認められて資本と無理なく結託すること。それが一番大きな目標だろう。

―実体験で歌詞を構成するのか?

Jayho:僕にできる言語的表現、アイデンティティを混ぜて地道にラップを作りたい。自分の考えだけでも十分ヒップホップや、大衆的な歌が作れる。ラッパーたちに差はあるが、あえて100%僕の話でなくても自分のアイデンティティが明らかになれば、それで満足する。

―現在ロールモデルはいるか?

Jayho:JAY-Z(ジェイ・Z)。お金も沢山儲けているし、ワイフもなんとビヨンセだ(笑)

―他のラッパーたちと差別化する戦略のようなものはあるか?

Jayho:音楽の中の、埋まっているような声の感じを重視する。僕だけが吐き出せる感じ、そのものを強調する方だ。(この感じが最もよく表現された曲は、最近発売されたミックステープの3番トラックだそうだ) 最近ラップのスタイルそのものが定型化されているが、これからはさらに自分だけの個性が重要になると思う。ラップを教育する学校や学院もこの問題に一役買っているわけだ。まとめると、僕の長所は僕だけが持つラップスタイルがあるということだ。

―ヒップホップの世界に入ってから難しい点はなかったのか。例えば、親の反対とか…

Jayho:嫌がっている。普通に大学を卒業して職に就いて生きてほしいと思っていると思う。息子が自分の好きなことばかりしようとするから非常に心配している。保障された未来がなくて心配しているが、だからこそもっと成功したい。

―音楽的に経験した最大の困難は?

Jayho:今はそれほど悪くない。以前は作業するとき、ビートメーカーがいなくてかなり難しかった。歌詞があっても実際にその歌詞を表現してくれるビートがなかった。その問題で海外のプロデューサーにも数多く連絡した。今は一緒に作業できるビートメーカーたちがいることが一番良い。ミキシングもそうだし、作業していけるインフラが多くなってコスト的な問題も解決された。曲の作業だけに邁進することができてよかった。

―活動について知人たちの反応は?

Jayho:反応はちょうど二つに分かれる。「いつ大人になるの」あるいは「自分の道を見つけてカッコいい」

―新人たちが成長するためには基本的に何が必要か?

Jayho:さっきも述べたように、ラッパーになる上で最も重要なものはアイデンティティだ。ラップが上手な人はさらに増えている。実力が平準化するほど本人のアイデンティティを確立することが一層重要になる。人が真似できるとしても、その雰囲気だけは代替不可能なユニークなスタイルが必要だ。同じ歌詞も誰が歌うか、どういう風に歌うかによって感動が変わるように本人のものを見つけてほしい。

例えば、こんなものがあるのではないか? あるビートがあって、そのビートが自分に合うかどうか、また誰と合うのか。このような簡単な質問がラッパーのアイデンティティを見せてくれると思う。自らどんなラップが合うか悩まなければならない。ただラップをするよりは自分だけのスタイルを見つけて、その道に進んで行ってほしい。

ラップの学院や学校に通うことももちろんいい。しかし、その中で自分のアイデンティティを失うならば、あまり意味がない。ラップのオーディションも進め方については否定的だ。もっと愛されるための手段として活用されれば、良い機会になると思う。

―今年1年で叶えたい目標は?

Jayho:計画したアルバムを計画した日に出したい。それからそれに見合う対価をもらいたい。多くの方に僕の音楽を聞いて頂ければ、実はそれが一番大きな対価ではないだろうか。

記者 : シン・ヒョンジョン