【ドラマレビュー】「チョンウチ」“コメディ名優”チャ・テヒョンをうまく活かせていない

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「チョンウチ」理由ある不振

KBS最高の期待作として挙げられた「チョンウチ」が予想外の不振に陥っている。視聴率14.9%(AGBニールセン・メディアリサーチの全国基準、以下同様)でスタートを切り、大ヒットの兆しが見えていた序盤とは違って、現在の視聴率はむしろ低くなり、12~13%台にとどまっている。裏番組が強いわけでもない。MBCの「会いたい」、SBSの「大風水」の視聴率も10%台前後を推移しているからである。つまり視聴率低迷の原因は作品にあるとのことだ。「チョンウチ」はなぜ期待に及ばない成績になったのだろうか。

写真=KBS

似合わない服を着ているチャ・テヒョン

「チョンウチ」はどう見てもチャ・テヒョンの、チャ・テヒョンによる、チャ・テヒョンのためのドラマである。そのため、看板のチャ・テヒョンをどう活かせるかがこのドラマの勝敗を決めるカギとなる。しかしこれまで放送された「チョンウチ」を見ていると、チャ・テヒョンをうまく活かせているとは思えない。いや、もっと冷静に言うと、「チョンウチ」のチャ・テヒョンは似合わない服を無理やり着ているように不自然に見える。

チャ・テヒョンは誰もが認める韓国最高のコメディ俳優である。彼の出演作の多くがコメディ映画であり、彼を代表する作品もコメディ色が非常に強い。例えば「猟奇的な彼女」「覆面ダルホ~演歌の花道~」「過速スキャンダル」「ハロー!?ゴースト」「風と共に去りぬ」などのコメディ映画は結構良い成績を上げたが、「僕の、世界の中心は、君だ。」「バカ」「奇跡のジョッキー」など他のジャンルの映画の成績は芳しくなかった。つまり観客がチャ・テヒョンに求めているのは思いっきり笑えるコメディなわけだ。

しかし「チョンウチ」は現在このような視聴者のニーズを十分に満たしていない。「チョンウチ」のチャ・テヒョンは愛と友情の間で成長する“孤独なヒーロー”である。これは視聴者が知っている“愉快な”俳優チャ・テヒョンのイメージとは全く合わない。俳優チャ・テヒョンとチョンウチキャラクターの違いがあまりにも大きいため、それを演じるチャ・テヒョンでさえ全体的に抑え気味の演技だけを貫いており、それがまた視聴者がドラマに夢中になりきれない理由になっている。

もちろんチャ・テヒョンは素晴らしい俳優だ。独特な自身だけの色を持っており、演技力も抜群である。役作りだけではなく、劇を引っ張っていく力もスキルも十分持っている。しかし「チョンウチ」の制作陣がチャ・テヒョンを主人公に選んだのはミスだったと思う。いくら素晴らしい役者であっても表現しにくいキャラクターはあるはずだ。初恋の相手を忘れないロマンチストや不正な社会に怒りを感じるヒーローはチャ・テヒョンにあまり似合わない。

それにもかかわらずチャ・テヒョンをキャスティングしたかったのであれば、制作陣は全体的な設定を彼に合わせて再構成すべきだった。チャ・テヒョンのような良い役者をせっかくキャスティングしておいて、彼の短所を目立たせるようなストーリーでは、視聴者が離れるのも当たり前のことである。チャ・テヒョンの強みが何なのかをきちんと把握して、スマートにそれを活用していれば、結果は今のものより遥かに良かっただろう。色々と残念なことである。

分かりにくい世界観

複雑で分かりにくい世界観も問題だ。「チョンウチ」はファンタジーと現実世界が融合した二重的な世界観に基づいている。問題はこれがうまく融合してないため、さらに紛らわしくなっていることだ。現実の権力争いに道士たちが巻き込まれるストーリー自体がそれほど自然でない上、現実とファンタジーがかぶることでドラマの本当のステージも分からなくなっている。このような世界観は視聴者に受け入れられにくい。

途中から視聴しにくいところも問題である。世界観がこのように複雑になっていると、最初からドラマを見ていない視聴者はついていけない。世界観はなるべくシンプルに設定して、その代わりにキャラクターを立体的に作り、ストーリーを豊かにしていくのが、よりスマートなアプローチだろう。ファンタジードラマにまだ慣れていない視聴者にとって「チョンウチ」は想像以上に不親切なドラマである。

演出を担当しているカン・イルス監督は、制作発表会で「従来のファンタジードラマの成績はあまりよくなかった。実はこのジャンルは定着しにくい環境に置かれているのが現実である」とし、「持続的なチャレンジの一環としてこの作品を企画した。結果にこだわらず最善を尽くしたい」と話していた。その彼にこちらから聞いてみたい。肩の力を少し抜いて、よりシンプルで分かりやすいプロットを描いてみることはできないかと。なぜ韓国のファンタジーの世界観は複雑すぎて何が何だか分からなくなるのだろう。不思議なことだ。


視聴者を満足させなかったCG

技術的な問題ではあるが、目の肥えた視聴者を満足させることのできなかったCGも弱点の一つである。空を飛びあらゆる不思議な術を駆使する道士たちをリアルに描くためにはレベルの高いCGが欠かせないが、「チョンウチ」の特殊効果は多少不自然で安っぽい。これでは作品の魅力も半減されるしかない。

CG論争についてチャ・テヒョンは「『チョンウチ』に『トランスフォーマー』や『ロード・オブ・ザ・リング』のレベルを期待するのは無理」と話したが、それは卑怯な言い訳に過ぎない。作品は視聴者の目線を意識すべきであり、視聴者が作品のレベルに合わせて目線を調整するわけがないからである。結局どの作品もどんな状況であっても視聴者が満足できる方向を目指すべきである。

もちろん生放送並みの撮影日程や撮影当日にその日の台本をもらうことが日常茶飯事である韓国ドラマ業界で、「チョンウチ」ほどのCGレベルも奇跡のようなことかもしれない。大変だろうが、作品のクオリティ向上に向け、もう少し頑張ってほしい。せっかくファンタジージャンルを選択したなら、技術的な面でも一歩前進してほしい

「チョンウチ」最後の名誉回復はできるだろうか

「チョンウチ」は全24話のうち、あと3分の1のみを残している。ファンタジードラマが誕生しにくい劣悪な環境の中で、「チョンウチ」が同時間帯1位をキープしていること励みになることである。しかしこれで満足してはいけない。前述した弱点をひとつずつ補って、視聴者確保に向けた取り組みを行わないと、真の“成功“とは言えないだろう。

来週からはMBCの上半期における期待作のひとつ、ドラマ「7級公務員」が始まる。果たして「チョンウチ」は新しいドラマに立ち向かい、水木ドラマ首位をキープできるだろうか。全てが「チョンウチ」のこれからの選択にかかっている。

記者 : キム・ソンギュ