「応答せよ1997」これこそ真の“タイムスリップドラマ”

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最もリアルな“タイムスリップドラマ”……あの時、あの時代への思い出

昔の恋を思い出す、忘れられない初恋のような恋愛ドラマは山ほどある。しかし「応答せよ1997」には他のドラマとは違う懐かしさがある。たかが約10年前に遡っただけなのに懐かしくなる、このドラマの正体は何だろうか。

敢えてH.O.T.やSECHSKIES(ジェクスキス)に触れなくても、誰もが心のどこかにしまっておいた懐かしい初恋、純粋で不器用だった、それでいて更に忘れられない初恋のストーリーが展開されている。その初恋に、“オッパ(兄の意。女性が親しい年上の男性やスターを呼ぶ呼称)”たちへの少女の思いも込められているのである。

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過去を振り返って当時の“ファンの気持ち”も思い出す

「人は手に届く夢に満足する必要がある。遠くのものに欲張っても自分が辛くなって悔しくなるだけだ。むなしい情熱は切ないだけ。だから世界で最も馬鹿なことは片思いかもしれない。でも、この馬鹿な片思いはやってみる価値がある。それはその熱い思いが時には奇跡を作り、たまには叶えられることもあるためである。たとえ叶えられなくても、その夢の近くにいて幸せになるチャンスを与えられるからだ」(テウン)

視聴者が「応答せよ1997」にはまる理由は、単に恋愛ストーリーだからではない。それは1990年代後半の“私たちの世代のストーリー”だからである。ドラマの主な視聴者の年齢層が20代後半から30代前半であることを考えると、筆者を含む私たちの世代にとって最高のアイドルだったH.O.T.とSECHSKIESのファン同士の神経戦のエピソードは、当時のことをリアルに描いていた。

SECHSKIESが解散した日、彼らのファンがリポーターのチョ・ヨングさんの車を所属事務所社長の車と間違って壊してしまった事件を含め、「DREAM CONCERT」でファン同士で喧嘩をしたことなど、振り返ってみればあの時はどうしてあんなことでむきになって喧嘩したんだろう、と笑ってしまう。また、アイドルグループのファンだったら一度は書いてみるという二次創作のエピソードで視聴者を笑わせ、青少年の頃に時代を戻してくれる。

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当時の状況も反映……1997年の韓国経済危機をリアルに描く

「応答せよ1997」は、当時の2大アイドル、H.O.T.とSECHSKIESのファンのことだけを語るのではない。当時の経済危機の登場背景を言及し、視聴者に現在の韓国の経済状況と比較するようにしている。これは、当時より現在の経済状況がより深刻であることをほのめかしているようだ。


90年代後半のヒット曲でさらに懐かしく

ドラマのBGMも視聴者の注目を集める理由のひとつである。リアの「涙」、イ・ジフンの「どうして天は」、TURBO(ターボ)の「回想」まで当時のヒット曲が続々と登場している。これから作家陣がどんな名曲を聞かせてくれるかも楽しみである。

このように懐かしい過去をうまく再現している「応答せよ1997」、その最大の魅力は過去と現在、現在と過去のシーンを交差する形式である。現在どうしてこういうことが起こっているのか、その理由を過去のエピソードで説明することで、面白く感動的に、そしてどんでん返しまで演出しており、見ていて感心するばかりである。


歌手出身の役者、見事な演技を披露……釜山(プサン)訛りも違和感なし

演出だけではない。歌手出身の役者の演技も見事である。主役のソ・イングク、Apink チョン・ウンジ、そしてウン・ジウォン、INFINITE ホヤなど歌手出身のキャストは、“演技力論争”もなかったほど自然な演技を見せている。普段、アイドル出身の役者に批判の声を上げていた視聴者も、彼らの演技を見て自然と昔の自分を振り返ってみるのである。

また、ドラマの舞台が釜山であるため、全キャストは釜山訛りを使う。こういう場合、自然な訛りなのかどうかについて指摘も出がちだが、「応答せよ1997」の全キャストはその地域の人のように自然な釜山訛りで話す。特にチョン・ウンジの訛りは現地の人々から絶賛されるほどだ。アイドル出身の役者に対する偏見を無くし、演技力論争もない「応答せよ1997」は、私たち世代の思い出を美しくする、懐かしくなるドラマと言えよう。

2005年、旋風的な人気を集めていたドラマ「私の名前はキム・サムスン」で主人公のサムスンは「思い出は思い出であるだけ。何の力もないわ」と言ったが、ヒジンはそんな彼女に「思い出は消せないよ」と言い返した。このように思い出は消すことができず、思えば思うほどさらに懐かしいものになっていく。「応答せよ1997」の放送期間中、視聴者は“思い出の旅”に出かけるだろう。約10年後、「応答せよ2012」が制作されたらどうだろうか。今を振り返って微笑むその日を想像してみる。

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記者 : ユ・スヨン