【PEOPLE】チャン・ドンゴンを構成する5つのキーワード 2

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チャン・ドンゴン

「二言言っただけなのに、退屈だってさ」―SBS「紳士の品格」から
最もハンサムな男、最も成功した男、そして最も礼儀正しい男。でも、面白いかな?


ポップジョン(法頂)

ベストセラーの「無所有」を書いた僧侶。
チャン・ドンゴンは高校3年生のときに「無所有」を読み、“まわりにいい影響”を与える生き方が出来たらいいなと思った。幼いころから「常に礼儀正しくしなければならないという強迫観念があった」というから、彼の礼儀正しいイメージはすでにそのころから完成されていたと言えよう。さらに彼の父親は、週末にいつも息子とテレビで映画を一緒に見た。チャン・ドンゴンは“日記に書く自分”を格好よく描写したときもあった。ハンサムで礼儀正しい俳優の人生はこのときから準備されていたのかもしれない。だが、当時のチャン・ドンゴンは俳優になるつもりはなかった。しかし、大学入試の勉強をしていたとき、塾の学費を稼ごうと背中だけが映るCMのモデルをして出演料が25万ウォン(約1万8千円)から50万ウォン(約3万6千円)に値上がりしたことがあり「タレントになったら有名じゃなくても、CM一本で200万ウォン(14万3千円)はもらえる」という話を聞いてMBCの専属俳優採用試験に応募した。


キム・チャヌ

MBCドラマ「われらの天国」で共演した俳優。
チャン・ドンゴンは、タレント試験に合格してからエキストラとしてのキャリアのみで、演技のキャリアがまったくないまま「われらの天国」で主演を務めることになった。ぎごちない演技は避けられなかった。当時演出を担当していたチェ・ユンソクプロデューサーは主演俳優の交代まで考えた。だが、お腹が空いて肉まんを盗み食いするシーンでリアルな演技をするために2日間何も食べずに演技に挑むチャン・ドンゴンの姿を見て思いとどまった。そしてスターが誕生した。


シム・ウナ

MBCドラマ「ファイナル・ジャンプ」のヒロイン。
チャン・ドンゴンのような顔をした男がバスケをして、シム・ウナのような顔をした女性と恋愛をするこのドラマで、彼はトップスターになった。チャン・ドンゴンを含めた「ファイナル・ジャンプ」の出演者たちが、当時爆発的な人気を得ていたヨンセ(廷世)大学のバスケ部と親善試合をするほどだった。だが、突然訪れた人気は彼のハンサムな顔とともに演技力への指摘を招き、MBCドラマ「一枝梅」で時代劇に挑戦したことで“限界がそのまま表面化した”経験を味わう。だからこそ、「ファイナル・ジャンプ」を最後に演技を中断し、韓国芸術総合学校へ入学したことこそ、彼のファイナル・ジャンプ(最後の勝負)だったのかもしれない。その後演技の世界へ復帰したチャン・ドンゴンは、MBCドラマ「ドクターズ」で、自らの医術に対し野望をみなぎらせている医者を演じ、その演技力を認められる。祖父の葬儀ではオイオイと泣いている自分の悲しみを分析するほど演技に没頭し、演技のためなら果敢な選択も恐れなかった。ハンサムで礼儀正しい主人公が、自らの選択によりユニークになり始めたのだ。


パク・チュンフン

映画「NOWHERE ノーウェアー」で共演した俳優。
当時チャン・ドンゴンは、いくつかの映画で失敗したことで、映画を選択することにおいて自分の考えが正しいと考えたことはなく、アン・ソンギとパク・チュンフンが出演すると言う話を聞いて、「学べることがたくさんありそう」だと思いこの作品を選択した。その後チャン・ドンゴンは映画「友へ チング」を演出したクァク・キョンテク監督のシナリオも読まずに「タイフーン/TYPHOON」への出演を決めるなど、信頼できる人との仕事を好むようになる。彼がMBC「黄金漁場」よりKBS「パクチュンフンのホリデーショー」に初ゲストとして出演した理由でもあると推測される。チャン・ドンゴンは「NOWHERE ノーウェアー」と言う冒険的な選択をした後、MBCドラマ「イヴのすべて」で再び魅力的な財閥2世としての姿を人々にアピールした。自分が人々に向かってアピールすべきイメージと、俳優として切り開いて行くべき実力を同時に手に入れていた時代。


クァク・キョンテク

チャン・ドンゴンを韓国映画のど真ん中へと導いてくれた人物。
「友へ チング」は、当時の韓国映画では史上最高の興行成績を上げており、チャン・ドンゴンの悪役演技は二枚目俳優が演技力を示す最もすばらしい模範例となっている。ハンサム過ぎて「ハン・ソッキュやパク・シニャンの顔なら良かったのに」と言っていた俳優が、とうとう演技力まで認められた。現実離れした顔と礼儀正しくいい人のイメージが強かった彼は、「友へ チング」により現実を生きる悪い男となった。それだけ、作品全体を強烈に率いていけるパワーを手に入れたのだ。チャン・ドンゴンはクァク・キョンテク監督に、自分が演じたキャラクターが幼いころを振り返るシーンなどで彼を理解できる余地を持たせてほしいと頼んでいる。このキャラクターはその後のチャン・ドンゴンを表すキャラクターとなった。そして「友へ チング」で頂点に昇った瞬間、出演料を引き下げてまでキム・ギドク監督の「コースト・ガード」を選んだ。ハンサムなのに演技はダイナミック、選択は面白い。すべてを手に入れた人生を完成させた。


ウォンビン

もう一つの現実離れした生命体。
二人が映画「ブラザーフッド」に出演するということは、土埃を被っても素敵な、銃弾さえ避けてしまいそうな二人の顔が二時間も戦場を駆け巡るという意味だった。コッミナム(花男:「イケメン」という意味)好きも、戦争映画好きも、韓国の南北分断の歴史に興味がある人も、「ブラザーフッド」を見ない訳にはいかなかった。同映画は観客動員数1千万人を突破し、チャン・ドンゴンは破壊的ともいえるパワーを持ったトップスターになった。もとは善良なのだが、何かのきっかけで狂気に囚われ、結局は行き場を失う悲劇的な人物。だが、顔はチャン・ドンゴン。「友へ チング」の悪役キャラクターによりチャン・ドンゴンの従来のイメージが180度変わったとしたら、「ブラザーフッド」は彼を土埃の舞う戦場へと押し込んだ。常に礼儀正しいハンサムなイメージをベースにして、意外な姿を見せてくれる。一つ一つの選択が興味深く、その選択は絶対に多数の人々を納得させた。


チャン・ジン

「グッドモーニング・プレジデント」の監督。
「ブラザーフッド」の後、「タイフーン/TYPHOON」と「PROMISE 無極」が立て続けに制作費に比べ思わしくない成績となった状態で、“大統領チャン・ドンゴン”の姿を見せてくれた「グッドモーニング・プレジデント」は彼のイメージをもう一度一新するきっかけとなった。数年間戦場を駆け巡る強い男性を演じた彼が、スーツを着た大統領になったのも興味深いものがあったが、意外と間の抜けたところがある大統領というキャラクターは、完璧な彼の姿をひねったものだった。しかしチャン・ドンゴンの弾けた姿と言うのはおならをするくらいで、彼がコントロールできない感情も好きな女性の前で表情を隠すことができないくらいのものだった。結局彼は、映画の中で確かな信念を持ってすばらしい演説をする大統領へと戻ってしまう。ハンサムで、演技力の面でもいい評価を受け、興行も1位なら、寄付も絶えずする。おまけに名筆、球場に出れば最高120キロというスピードのボールを投げることもできる。コン・ヒョンジンをはじめとする同業界の友達たちは絶えず彼の優しさを証言する。あまりにも羨ましいのだが、生活の匂いなど微塵もしない人生。そしてチャン・ドンゴンは映画の中にあってさえも他人とは混ざりにくい、絶対的なところに属する男性となった。「グッドモーニング・プレジデント」は自分の基本的なイメージの上に意外な選択を足してきたチャン・ドンゴンの魅力がもう一度成功した作品だった。しかし、それさえもチャン・ドンゴンの予想可能な選択のように見え始めたのも事実である。

カン・ジェギュ

「ブラザーフッド」に続いて「マイウェイ 12,000キロの真実」を演出した監督。
「マイウェイ 12,000キロの真実」は第二次世界大戦を背景にチャン・ドンゴンとオダギリジョーが主演となった点で「ブラザーフッド」と比べられた。しかし、「ブラザーフッド」のチャン・ドンゴンが戦争の中でアイデンティティを失い、段々と戦争の狂気に取り付かれていくのに対し、カン・ジェギュ監督は「マイウェイ 12,000キロの真実」でチャン・ドンゴンを「“まわりを変化させる人物”として描きたかった」と語った。戦争により凶暴になっていく性格はいっそ新たなキャラクターを作って分離してしまい、チャン・ドンゴン自らも「あまりにも正義感が強くて現実には居そうでない人物だが、やってみる価値のある人物」と語るほど。彼は戦争の中でも人格的な高潔さを守るキャラクターとして残った。最も礼儀正しい俳優が、最も正しいキャラクターを演じた。退屈な選択、退屈な結果。


コ・ソヨン

1990年代のトップスターでチャン・ドンゴンの妻。
チャン・ドンゴンと初めて会ったときは、「これと言って異性と言う感じを受けなかったが、ある瞬間素敵な男性になっていた」と言う。コ・ソヨンだからこそ言えるセリフではないだろうか。チャン・ドンゴンは“コ・ソヨンと結婚した男”だし、それだけ、より宙に浮かんでいるスターのように見える。ファンたちが集まってとにかくスターを待ち伏せするQTV「7番街の奇跡」が、その初のターゲットとしてチャン・ドンゴンを選んだのもそうした理由からだろう。今のチャン・ドンゴンは20年間トップスターとして君臨しているし、バラエティ番組では見ることがほとんど不可能。映画の中でさえ平凡なキャラクターを演じるのが難しくなった。そしてまた、「7番街の奇跡」にビデオレターを送ってくれるマナーを忘れないのがチャン・ドンゴンでもある。彼はみんなのスターだし、今もみんなのために活動しているが、それと同時にみんなとは最も遠くに位置しているのかもしれない。だが、チャン・ドンゴンは子供が生まれてから、「気持ちが平穏で洗われるような感じ」になっており、「感情の起伏が激しい役は難しいかもしれない」としている。コ・ソヨンとの結婚で、彼のイメージはより現実離れしたスターとなったが、チャン・ドンゴンさえも避けることのできない育児問題は、彼が経験しなかった現実へと近づかせてくれた。そしてチャン・ドンゴンはSBS「紳士の品格」に出演した。


キム・ウンスク

「紳士の品格」の作家。
チャン・ドンゴンに少々抜けているプレイボーイの建築家を演じさせた。チャン・ドンゴンは「紳士の品格」で、スタイルのいい女性に直ぐ目を奪われ、友達とワイワイやりながら、キム・ハヌルにわざと意地悪をしたりする。典型的なラブコメの男性主人公と言えるのだが、その主人公がチャン・ドンゴンだというだけで、そのキャラクターは“ありがち”から抜け出せる可能性を見出した。問題はチャン・ドンゴンが何処まで進めるのかということだ。チャン・ドンゴンが少々軽い中年の建築家を演じるとき、彼は何処まで俗っぽく、どこまで軽薄になれるのだろうか。男性主人公のスタイルを台無しにしてしまったり、女性主人公と子供のようにケンカをさせたりするキム・ウンスク脚本家のドラマで、チャン・ドンゴンはもう少し“スネオ”になってもいいのかも知れない。今のチャン・ドンゴンに必要なのは、「やはりチャン・ドンゴンは素敵だな」という言葉よりも、いけしゃあしゃあと現実的に暮らし、予測もつかない姿を見せる面白い男なのかもしれない。彼の次の作品が、やはりプレイボーイを演じる「危険な関係」であることを考えれば、彼はもう一度新しい選択をしたのかもしれない。だからこそ、今のチャン・ドンゴンに最も必要な言葉はこれではないだろうか。チャン・ドンゴン、まだまだイケてるね!

記者 : カン・ミョンソック、翻訳 : イム・ソヨン